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ゴルフは名言でうまくなる

2019.06.02 更新

第92回

「グリーン周りから、決まってウェッジを使う気取り屋がいる。そんな人物を私は信用しない」――ダイ・リース岡上貞夫

プロもアプローチにパターを使う

最近、国内ツアーをテレビ観戦していると、プロがパターでアプローチをするシーンがいくつかあったのだが、それがあまりうまく寄っていなかった。

最初は、東建ホームメイトカップのブレンダン・ジョーンズ。最終日にスタートダッシュしてトップに立ったジョーンズは、バックナインに入ってから後続組の選手に追い上げられていた。

それでも最終72ホール目、パーで上がれば優勝できるだろうという状況で、グリーンオーバーしてしまう。

そこからのアプローチは、上り坂のそれほど深くはないラフから、フェアウェイのように刈り込んだエリアとカラーを経て、ダウンヒルライのグリーンに打っていくシチュエーションだった。

ここでジョーンズはパターを選択したのだ。なんとしても寄せてパーを取りたい状況での選択だが、ラフと上り坂での減速度合いが読みにくそうで、解説者は「ウェッジのほうが簡単そうですけどね」と言っていた。

結果は、やはりラフと上り坂で大きく減速してショート。下りのワンピンほどの距離を残してしまった。

幸い、このパットが入って1打差で逃げ切れたが、危ないところだった。

もうひとつは、ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップの笠(りゅう)りつ子プロ。最終日は渋野日向子プロとペ・ソンウ選手の一騎打ちとなり、笠プロは3、4位争いをしていた。

最終72ホール目のPar5、笠プロの3打目はグリーンに乗ったかに思えたが、傾斜に流されて少し左に外れてしまった。

このアプローチは、まばらな感じのラフが50cmほどで、その後はカラーが50cm、ゆるい上り坂のグリーンで2ピンほどの距離という状況だ。

ここでうまく寄せてバーディなら単独4位という場面で、笠プロはやはりパターを選択した。

ジョーンズの場合よりは距離感が出しやすいように見えたが、結果は2mほどショート。このバーディパットが入らず、4位タイとなってしまった。

タイの選手がアマチュアだったので賞金は減らなかったのかもしれないが、もしプロなら百万円単位で違っていただろう。

一見、失敗しているようだが……

「グリーン周りから、決まってウェッジを使う気取り屋がいる。パターで転がすのは沽券に関わると思っているのだろうか。そんな人物を私は信用しない」

第二次世界大戦中に活躍したウェールズのゴルファー、ダイ・リースのこの名言のとおり、パターでのアプローチはもっとも安全で寄せやすいはずだ。しかし、これらの例では必ずしもうまくいかなかった。

プロの技術があっても、ラフを転がるときの減速度合いや、砲台のように盛り上がったグリーンへの強い上り傾斜は、距離感の調節が難しいことがわかる。

ピッタリ寄せたいならウェッジを選択して、ラフやきつい傾斜を飛び越え、カラーかグリーンにバウンドさせたほうが、その後の転がりは計算しやすいだろう。

それをしなかった理由は、ジョーンズの場合は最悪でもボギーにしたかったからではないかと思う。プレーオフのチャンスが残るからだ。

同じく笠プロの場合は、バーディもほしいがボギーは絶対に避けたいと思ったのだろう。ボギーにしてしまうと、すでに3人いる5位タイグループに仲間入りしてしまうからだ。その賞金の落差はあまりにも大きい。

結果論ではあるが、2人がパターでのアプローチを選択したのは、その意味では正しかったといえるだろう。

パターでのアプローチはやはり安全で、少なくとも最悪の事態を招くことは避けられるので、アベレージゴルファーもパターが使える状況では使ったほうがいい。

ところで、アプローチで使うパターを「テキサス・ウェッジ」と呼んだりする。

テキサスのゴルフ場は雨が少なく、フェアウェイもグリーンも固くなってしまうので、ウェッジでのアプローチはバウンドが大きく、スピンも利かない。それで、距離感をつかみやすいパターが多用されたのだ。

また、本場スコットランドのリンクスのゴルフ場も、海からの強風が吹きっさらしで、やはりグラウンドが固くなることから、アプローチでパターを使うことが多い。

このように、フェアウェイやグリーンが固くなっている場合には、グリーンエッジから10~20ヤードも離れているようなフェアウェイからでも、パターでアプローチしているシーンがプロの試合でも見られるのだ。

それで、表題のような名言が伝えられているのだろう。

ウェッジかパターか。状況を見極めよう

日本のゴルフ場は手入れがよく、よほど日照りが続かない限りはフェアウェイやグリーンがそれほど固くなってしまうことは少ない。河川敷のコースでときどきあるぐらいだろう。

普通程度に水分を含み、それなりに軟らかさがある場合には、10ヤードものフェアウェイをパターで転がすときの減速度合いを読むことはかなり難しい。

せいぜい1、2ヤードの刈り込まれたフェアウェイであれば、あまり大きな失敗にはならないだろうが、それ以上の場合は強すぎたり弱すぎたりでグリーンに乗らないこともありうる。

また、ボールがラフにある場合には、長い芝の抵抗を読むことは困難なので、基本的にパターは選択しないほうがいいだろう(冬場でラフの芝が枯れている場合には使える状況もある)。

そうすると、日本ではアプローチでパターを使えるシチュエーションはけっこう限られてくる。

まず、グリーンを取り巻くカラーの部分では、なんの問題もなく使えるだろう。

花道のフェァウェイで、グリーンエッジまで2ヤード以内という状況でもおおむね使えるが、グリーンエッジからピンが近い場合や、傾斜がきつくデリケートなタッチが要求される場合には、ウェッジのほうが距離感を出しやすい場合もある。

逆に、ピンまである程度の距離があるほうが強くヒットできるので、フェアウェイ部分での減速をそれほど考えなくてもよく、パターは効果的だろう。

このような状況判断を十分にしたうえでアプローチにパターを選択したのなら、成功する確率はかなり高くなるはずだ。

パターでのアプローチは、少なくともそこから3打でホールアウトできる確率が非常に高い。あわよくば2打でホールアウトできる可能性も高いが、少し失敗しても「3打ではいける」という心の余裕がその可能性を高めているともいえるだろう。

ゴルフは打数を競うゲームである以上、沽券(こけん)に関わるなどと思って闇雲にウェッジでアプローチするのは合理的でないと思うが、いかがだろうか。

今回のまとめ

1. パターでのアプローチはもっとも安全で、少なくともそこから3打でホールアウトできる確率が高いが、状況をよく判断することが必要

2. カラー部分、花道のグリーンエッジまで2ヤード以内からのアプローチはパターを使えるケースが多く、結果もよいはずだ

3. 「ラフにかかっている」「グリーンエッジまで離れている」「グリーンに達してからデリケートなタッチが要求される」という状況ならば、ウェッジのほうが寄りやすい場合もある

 

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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