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前進する日もしない日も

2019.05.24 更新

スマホでASMR益田ミリ

無性に食べたくなるもののひとつにフレークがある。甘いコーンフレークの冷たい牛乳がけ。

あの食べ物の音の楽しさはなんなのだろうか。

シャクシャクシャクシャクシャク。

自分の耳にダイレクトに響くゆかいな音。どこから聞こえているのか、と考えるために今、実は食べながらパソコンにむかっているのであった。

シャクシャクシャクシャクシャク。

鼓膜のあたり? 世界の外側と内側のぎりぎりの場所からその音は聞こえてくる。この音を楽しいと感じるのは、一体、なんの楽しさなのか? 

 

食べる音といえば、YouTubeにアップされているASMR。人が食事をしているときの音、要するに咀嚼音を聴くだけの動画である。そういうものがあると知ったときは「えっ、なんのために??」と不思議だったが、実際に観てみたところハマッてしまった時期があった。ヒマさえあればスマホで咀嚼音。

咀嚼音にもいろいろあり、氷をバリバリ噛む音から、アロエのようなやわらかいものを噛む音までバラエティに飛んでいる。わたしがもっとも反応したのは女性たちが食べるフライドチキン音だった。衣はサクサク、中はジューシー、なのが画面越しに伝わってくるのがなんとも楽しい。やめられない。彼女らは10本くらい平気で食べるので、それをひたすら拝聴するわけである。

サクサクサクサクサク。

ジュワッジュワッ。

ソファに寝転びながらぼんやりと聴くそれらの音は、自分の中のなんらかの欲求を満たしてくれた。なんらかのというか、たぶん食欲である。揚げ物をこんなにたくさん食べたらアカン! と自分を制して暮らしている身としては、「わたしのために食べてくれている……」というありがたい感覚になるのである。

どーゆー感謝や! 

と自分にツッコミつつ、おいしそうな音やなぁと見続けていた。が、すでにわたしの中のブームは収まっている。

はて、コーンフレーク牛乳がけのASMRもあるのだろうか? 

久しぶりに検索してみた。あった。結構、シャクシャクやっていた。人のシャクシャクは、自分のシャクシャクより当たり前だが遠かった。

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前進する日もしない日も

仕事の打ち合わせ中、まったく違うことを考えてしまう。ひとり旅に出ても、相変わらず誰とも触れ合わない。無地の傘が欲しいのに、チェックの傘を買ってくる。〈やれやれ〉な大人に仕上がってきたけれど、人生について考えない日はない。そんな日々のアレコレ。

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益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に漫画「すーちゃん」シリーズ、『週末、森で』『きみの隣りで』『世界は終わらない』『今日の人生』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『泣き虫チエ子さん』などがある。またエッセイ『女という生きもの』『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』や、絵本『月火水木金銀土日 銀曜日はなにしよう?』(共著)など、ジャンルを超えて活躍する。最新刊は小説『一度だけ』。

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