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たった400字で説得できる文章術

2018.12.17 更新 ツイート

文章が下手だと思われる6つの典型例樋口裕一

 
(iStock/darkbird77)

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下手な文章の典型その1:一文が長すぎる

 すでに説明したことではあるが、一文が長いと、文章としてできそこないということになってしまう。これこそ、下手な文の典型だ。文が長いと、「私が思うに、……と思う」などというように、主語と述語の係り結びがおかしくなったりする。自分で「文章がうまい」という自覚を持つまでは、一文を六〇字以内で収めるつもりで書くこと。 
中には、「どうしても一文が長くなって、短くできない」という人がいる。そんな人は、きっと、「私は、……することによって、……して、そのために、こうなって、……結局、こうする」というような言い方をしたいのだろう。

 が、それをやめて、まず主語と述語をひとことで言ってしまう練習をする。「私はこうする」と第一の文で言ってしまうわけだ。そして、言い足りなかった分を継ぎ足していけばよい。一度に何もかも言おうとするから、一文が長くなる。何回かに分けて言うつもりで書けば、わかりやすくなるはずだ。

 なお、これについては、すでに説明したので、例については省略する。

その2:文末や接続詞に同じ表現を繰り返す

 先ほどの例文で、「と思う」の連続を示したが、そのほか、文末を、すべての文で、「のだ」にしたり、「のである」にしたりするのも、下手な文の典型だ。「のだ」や「のである」を取っても意味が通じるのなら取ってみるとよい。

 この本を書いている私の文を見てほしいが、「のだ」も「のである」もほとんどない。「だ」「である」もあまり使っていない。そのような文末を使わなくても文章が書けることがわかってもらえるだろう。

 そのほか、同じ接続詞(「だから」「ゆえに」「したがって」「だが」「しかし」「また」など)を使い続けるのも好ましくない。
 これを改善するのは、それほど大変ではない。もちろん、本格的にレベルの高い文体にするには、文体だけでなく、内容を考えることが大事だ。内容のレベルアップをめざせば、必ず文体も高度になる。が、それでは時間がかかる。

 とりあえず、少しだけうまく見せるには、まず、接続詞と文末に注意を払うことだ。

「だから」「けれども」では、口語的すぎる。そこで、「したがって」「ゆえに」「それゆえ」などのパターンを身につける。逆接の場合も、「だが」「しかし」だけでなく、「ところが」「しかるに」「にもかかわらず」などの表現を覚える。

 文末も、「だ」「である」だけでなく、「ほかならない」「違いない」「相違ない」「言えるだろう」「ということになる」といった表現を覚えるとよい。

 ただし、同じ単語を使うことについては、私は、決して悪くはないと考えている。時に、「最初に、〈感情〉という言葉を使ったら、次に同じ意味で使うときには、〈気持ち〉〈心〉〈思い〉というように改めるべきだ」と指導する人がいるが、私はそんな必要はないと考えている。

 確かに小説を書くのなら、そのような配慮も時には必要だろう。だが、今書こうとしているのは、小説ではなく、人を説得する文章だ。だったら、同じ意味であれば、同じ言葉を使うのが原則だ。別の言葉を使うと、意味が混乱してしまう。

 

その3:基本用語を使えていない


 文体が幼稚、という場合、ほとんど、基本的な言葉をきちんと使えないということだ。先ほどの例で示したように、「長所短所」と言えばいいところを、「よいところや悪いところ」と言ってしまう。

 もちろんむりやり硬い漢語や難しい外来語を使う必要はない。だが、中学までに習った基本的な用語は使いこなせるようにしておいたほうがよい。

 では、どうしたら使えるようになるか。簡単なことだ。本や新聞を読めばよい。

 本や新聞を読まないと、どうしても基本用語が身につかない。読んでいないで、使いこなせるはずがない。楽しい本やおもしろい新聞の記事を読んでほしい。

 それでも、身についた気がしないという人は、新聞の投書欄(朝日新聞でいうと、「声」の欄)を毎日読んで、そのうち、もし気に入ったものがあれば、書き写してみる。そうすれば、ひと月くらいできちんとした文章が書けるようになるはずだ。

 投書はプロの文章ではないので、それほど難しくない。誰でも手の届く文章だ。しかも、ある一定の水準を超えている。超えていないものについては、新聞社のほうで手を入れているはずだ。だから、信頼できる。書き写すうち、しっかりした文体が身についてくる。
 もちろん、投書欄でなくてもよい。気に入った本を書き写すのがよい。ただし、それが大江健三郎や三島由紀夫などの大作家のものであると、むしろ文学的になりすぎる。そうでない本を探してみるとよい。もちろん、本書も、書き写す対象になりうるだろう。

その4:句読点の打ち方が曖昧

 多くの人が迷うのが、読点、つまり「(テン)」だ。どこで、テンを打つかわからない。ふと文章を書こうとして、テンを打つべきか、打ってはいけないのか、いちいち迷ってしまう。そんな人が多いのではなかろうか。

 日本語では、英語のように明確なテンの打ち方の規則はない。だから、悩んでいる人も、ほとんどの場合、神経質になりすぎているだけの場合が多い。が、中には、テンの打ち方の上手でない人がいる。

 テンの打ち方には、次のような基準があるとされている。

a 重文のとき、節のあと(「……だが」「……ので」「……のとき」などのあと)。
例「夢中になってテレビを見ていたために、子供の帰りに気がつかなかった。」

b 続けて書くと、ひとつの言葉と誤解されるときには、できるだけつける。
例「私の好きな作曲家はベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、ワーグナーだ。」

c 主語が長いときには、主語のあとにつける。
例「東北地方の小さな田舎町の出身だった彼は、東京の景色に驚くばかりだった。」

その5:むやみに凝った表現を使う

 本が好きな人が文章を書くとき、むやみに難しい表現が出てくることがある。まるで、外国語を翻訳しているようなこなれない文体で、何を言いたいのかよくわからない。そんな文体も悪い例のひとつだ。

 この種の文章には、「……性」「……的」といった抽象的な熟語や、「……において」などの言い回しが続出することが多い。また、「蓋(けだ)し」「なかんずく」「鑑(かんが)みるに」といった漢語的な表現が出てきたりする。また、挿入句が入って一文が長くなり、主語・述語がわかりにくくなることも多い。

 もちろん、そのような文体でも、論理が明快であればそれでよいのだが、文体に引きずられて内容がわかりにくかったのでは、意味がない。独り善がりにならず、読んでいる人にしっかりと説明する必要がある。

その6:弁解ばかりしている

 弁解が多くて、いったい何を言いたいのかはっきりしない文章も、よくない文章の典型だ。「私はそのようなことを言える立場ではないが……」「私のような者が言うのもおこがましいが」などと繰り返し、「と言われている」「と思われる」「と考えるほうが妥当と思われるのであるが、いかがだろうか」などといった煮え切らない表現を多用する。

 日常生活の上では、謙虚なのは、時には美徳だが、文章の上では決して美徳ではない。それは、優柔不断で、自分の意見を持っていないとみなされる。

 それに、実際の出来事は、イエスともノーとも言いがたいし、それについて断定的なことを言うのは、難しい。曖昧にしておいて、「逃げ」を用意しておきたい気持ちはわからないでもない。

 しかし、文章を書くことは、態度を決めることを意味する。前に説明したとおり、書くという行為は、基本的に「ほかの人はこう言うが、私はそれに反対だ。私はこう考える」ということだ。言い換えれば、何かを言うために壇上に上がって、みんなの前で自分の意見を堂々と言おうとしているところなのだ。その場で、「私はわかりません」と言ったのでは、考えることの放棄とみなされる。重大なルール違反であり、してはならないことだ。

 自分の意見を書くからには、「と思われる」「ではなかろうか」などと婉曲表現を使うのではなく、堂々と断定する必要がある。文章を書くからには、自分の意見を言うに決まっている。だから、わざわざ、「考える」「思う」などと繰り返す必要はない。

「こうであるべきだ」「こうするべきだ」「こうすることで、解決する」「この現象の背景には、このような原因がある」などと書かなければいけない。その上で、自分の意見に責任を持たなければならない。


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樋口裕一

1951年、大分県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士後期課程満期退学。フランス文学、アフリカ文学の翻訳家として活動するかたわら、受験小論文指導の第一人者として活躍。現在、多摩大学名誉教授、東進ハイスクール講師。通信添削による作文・小論文の専門塾「白藍塾」塾長。MJ日本語教育学院学院長。250万部の大ベストセラーとなった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)のほか、『65歳 何もしない勇気』(幻冬舎)、『笑えるクラシック』(幻冬舎新書)など著書多数。

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