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広く弱くつながって生きる

2018.07.06 公開 ツイート

第二回 

これからの「つながり」の在り方 阿部珠恵/佐々木俊尚

佐々木俊尚さんと阿部珠恵さんが、『新しい「人間関係」入門 ~結婚も仕事も、もっとゆるくていい?~』と題したトークイベントで、これからの新しい「人間関係」を切り口とした結婚や仕事、共同体の在り方について語りました。

構成:新井大貴(箕輪編集室)

自由になりすぎると安定を求める

佐々木 前に、『結婚してもシェアハウス!〜普通の婚活は、もうやめた〜』の中で、結婚はなんで必要ないのかということを書いていたでしょ。

阿部 はい。

佐々木 シェアハウスでカバーできるものとできないものがあると。それについて詳しく聞かせてほしいな。

阿部 私が個人的に結婚に求めるものは、大きくは二つかなと思っていて。一つは、常にパートナーというか、辛いなと思って帰ったときに話せる相手とか、自分の身に何かあったときに救急車を呼んでくれる相手がいること。もう一つは、私は子供が欲しいと思っているので、シングルマザーよりも誰か特定のパートナーがいて一緒に育ててくれること。そのほうが合理的かなと思っているので。そして、前者は完全にシェアハウスでクリアしているという。

佐々木 悩みを抱えて帰ったら、飲みながら話してくれる相手もいるし、何かあったら救急車も呼んでもらえるしと。

阿部 そうなんですよね。

佐々木 そうすると、子供が欲しいというだけしか、もはや結婚の意味はないと言い切っちゃっていいの?

阿部 言い切っていいんじゃないかなあと思っているんですけど(笑)。そういうことを書いたら、すごいツイッターやヤフコメで炎上したんですよ(笑)。

佐々木 炎上してたよね(笑)。あれは主にどういう批判が多かったんですか?

阿部 本当にネットは怖い世界なんで、「うるせえ! このブス!」みたいな(笑)。

佐々木 ああ、そういうのもあったんだ。

阿部 なんか身も蓋もないなっていう(笑)。

佐々木 なるほど。やっぱり結婚とかいうものに対して過剰な期待感を抱いている人というのは、結構多いんじゃないかな。

阿部 うーん、多いんじゃないかなと思いましたね。あとは、結婚はしないといけないものと思っているから、子供を産む以外にする意味がないと言い切っちゃうことに対しての反発。それ以外にももっと結婚には意味があるよ、ということなのかなあ。

佐々木 これってある種、時代的なバックラッシュというか。例えば、働き方の多様性が高まって、なんでも選択自由ですとなればなるほど公務員志望者が増えるという。

阿部 ああ、それすごく分かるんですよね。

佐々木 自由すぎるとやっぱりみんな不安になるので、安定を求めるようになるんですね。それと同様に、ちょっと話はずれるかもしれないけど、妻に家にいてほしいですかと聞くと「はい」と答える人が意外に多いというね。

阿部 ああ、多そう。

佐々木 お前のその収入で言うなよという反応が必ずツイッター上で出てくるんだけど、でもこれもね、一種気持ちはわからないでもなくて。要するに、みんな不安なわけですよ。非正規雇用だったり、会社がどうなるかわからないし。不安であればあるほど、家にいたときに自分をよしよしと慰めてくれるお母さん的存在が欲しいという。だから男の場合は結婚に対して圧倒的にお母さんを求めている人が多いんじゃないかな。

阿部 ああ、安心できる存在みたいな。

佐々木 そういう感じはするんだ。だから子供が欲しい、経済的なセーフティネットが欲しいという理由で結婚を求める女性と、お母さんが欲しいから結婚したいという男性の間でうまく噛み合わなくて、ますます未婚が増えるという。そういう行き違いってあるんじゃないかなと思うんだよね。

つながりの在り方が見直されている

阿部 今回佐々木さんの新書『広く弱くつながって生きる』を、読ませていただいたんですけど、すごい挑戦的だなと思っていて。広く弱くつながって生きるって、できないと思う人から結構反発が多かったんじゃないかなと思うんですよね。

佐々木 あのね、2014年に同じような内容の本を別の出版社から出したことがあって。それは『自分でつくるセーフティネット: 生存戦略としてのIT入門』というタイトルだった。そのときはすごい反発強かったんですよ。ところが、あれから4年経ってみるとものすごく反発は少なくなっていて。だんだん時代の空気がそっちに移動してきていて、マッチしてきているのかなという感覚を個人的には持ったけどね。

阿部 ああ、何なんですかね。何が4年間で変わったんでしょうね。

佐々木 たぶん強いつながりって、要するに会社のつながりとかそういうことですよね。会社とか家族とか、そういう強いつながりに頼って生きることがますます不可能になってきているという実感があって。そうすると、もはやそこには頼れない。じゃあ、どうしたらいいんだということで、その弱いつながりみたいなのが、よりリアルに感じられるようになってきているってことじゃないかな。あと、最近よく個のブランディングとかって言うじゃないですか。

阿部 ああ、言いますね。

佐々木 自己啓発本とかに「みんな自分を高めよう」とか、「夢を実現させよう」、「失敗を恐れるな」とか書いてあるじゃないですか。でも、なんかそれってものすごく非現実的じゃないかなと思う。

阿部 結構辛いですよね。常にそれを求められて生きるというのは。

佐々木 ね。だってそんなふうになれる人って一万人に一人ぐらいじゃないですか。僕も含めて、だいたいの人はそんな才能ないですし。皆さんそうだと思うんだけど、まあ、普通に生きているわけですよ。普通に生きて、普通に地味に暮らしていて、平凡な人生を送るというのは実は僕は素晴らしいことだなと思っていて。
 なんか今の時代って、ワーッと頑張って成功するか、そうでなきゃ、もう地に墜ちるかどっちかしかない。その選択肢は、あまりにも不毛だよねという。だったらその中間地点ぐらいの、地味に楽しく、みたいなね。たまちゃんが酒飲んでクダまいているのを見ながらダラダラ暮らすみたいな、そういう人生があってもいいんじゃないかなと。
 そういうときに必要なのは結局すごいスキルとか、すごい専門性とか、そんなもんじゃなくて、平凡だけど仲良くするという話だと思う。だから、そんなすごいスーパーマンじゃなきゃできないということを本に書いているわけじゃないんです。

阿部 なるほど。タイトルだけ見ると「けっこう難しいなあ」とも感じたんですが、そういう方たちが実際に読んで共感しているということですね。

(つづく)

 

書籍紹介

佐々木俊尚『広く弱くつながって生きる』

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

阿部珠恵,茂原奈央美『結婚してもシェアハウス! 〜普通の婚活は、もうやめた〜』

現在、男女10人(夫婦2組含む)シェアハウスで暮らしている、アラサー独女のアベタマエ。シェアハウス生活を満喫しすぎて「もう結婚しなくてもいいのでは?」という持論をブログで展開したところ、Yahoo!ニュースのコメント欄で炎上。なので、ネットで結婚相手を募集してみました。条件は「結婚した後も、シェアハウスに一緒に住んでくれる人。そして子どもが産まれても、シェアハウスで一緒に育ててくれる人」。炎上した記事のおかげで(個性的な)ムコ殿候補がざっくざく。書類審査→グループディスカッション→1dayインターンシップを経て、ついに候補者から一人に絞る。そこからシェアハウス6畳一間の同棲生活がスタート。果たして、ネットで募集して数回しか会ったことのない男性と、結婚できるのか?!?! 幸せになりたいアラサー独女の、七転八倒の婚活記録。

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阿部珠恵

1985年、山口県下関市生まれ。東京都立大学人文学部社会学科卒業。 都心で働く楽しさを感じる一方で、地方出身者が都会で暮らす大変さを痛感し、会社の同期とシェアハウスを開始する。世の中の「暮らし方の常識」に疑問を抱き、都会でより楽しく生きるためのコミュニティの在り方を模索し始める。現在、家族が何組も住めて、一緒に子育てもできる、新しい形のシェアハウスを作るべく奮闘中。 著書に『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』(2012年、辰巳出版)。

佐々木俊尚 作家・ジャーナリスト

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

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