1. Home
  2. 生き方
  3. 広く弱くつながって生きる
  4. 明日クビになっても生きていけるように

広く弱くつながって生きる

2018.06.07 公開 ポスト

明日クビになっても生きていけるように
佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)

リーマンショックと東日本大震災を経験して、人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さん。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、小さいけれど沢山の仕事が舞い込んできたそうです。そして、困難があっても「きっと誰かが助けてくれる」という安心感も手に入りました。SNSで大きく反響を呼んだ、新刊『広く弱くつながって生きる』には、誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法が書かれています。

(写真:iStock.com/tuaindeed)

不安と不安定はまったくの別物

 浅く広く生きるには、どこかに帰属しないことも重要でしょう。会社に属していないと不安を感じるかも知れませんが、会社という大きな箱の中にいなくても、細いセーフティネットのような網がたくさんあれば、とりあえず居場所はあります。堅牢な要塞だけではなく、網の不安定さを大事にする。そういう気持ちの切り替えが重要です。

 大企業であっても明日がわからない現在、その会社以外に関係性がなければ不安に決まっています。だからこそ、不安定ではあるけれどたくさんの関係性があるから大丈夫という安心感を築く。不安と不安定はまったくの別物です。

 いまの時代、10年後に何の仕事をしているかはわかりません。いまの仕事はAIにとって代わられるかも知れませんし、求められる仕事は時代によってどんどん変化します。たとえば、20年前はウェブデザイナーも、電子書籍の編集者もいませんでしたが、いまでは普通の仕事になっています。

 先にも述べましたが、私も2008年の出版不況の時、出版社が倒産する様子を見て、自分はフリーで大丈夫だろうかと不安になったものです。その一方、10社程度は取引がありましたので、1社くらいなくなっても何とかなるという安心感もありました。わかりやすく言えば、そういう状態を作っておくということです。

就いた仕事を神聖視してはいけない

 不本意な就職をした人は少なくないはずですが、その仕事が自分の人生のすべてではありません。あまり仕事を神聖視せず、もう少しゆるく考えてもいいと思います。

 私の若い友人で、熊本で「サイハテ」という小さな共同体を仲間と運営しているチコ君は「自分の一生の仕事を見つけるのに就活一発勝負はおかしい。100種類ぐらい仕事を何年も経験しているうちに、だんだん自分の向き・不向きは見えてくる」と語っていました。こういう感覚が大事だと思います。

 アメリカなどはわりあい転職フリーな社会ですから、軍人が30歳ぐらいで退官してから大学に行き、研究者になったりする例もよくあります。20代前半のわずか数年間ですべて決めるというのは、どこか間違っているような気がします。

 現在は副業禁止規定もなくなりつつありますし、週末に何か活動をしようと思えば、いくらでも受け皿は用意されています。生業以外に何かをするハードルはかなり低くなっていますので、何らかの活動をしているうちに、自分に向いた仕事や、追求したい何かが見えてくることもあるでしょう。

 何が仕事になるかなどまったくわかりません。本を読む時間もないぐらい働いていた人が、ふとした時に一冊の本を読んだことで何かに出会い、まったく違う道が開けたということもしょっちゅうあります。

わらしべ長者的収入は誰にでも手にできる

 会社員の場合、週5日間、一日の3分の1を拘束されるのが仕事という感覚でしょう。しかし、それが楽しければ仕事と考えないかも知れませんし、残りの3分の2にも仕事になり得る何かが眠っているはずです。

 たとえば、ある時自主映画を制作しているプロデューサーのAさんが「作品をどう宣伝すべきか相談に乗ってほしい」と連絡をくれました。DVDを観るとおもしろい作品でしたのでそう伝えると、今度は監督と一緒に訪ねてきたため相談に乗りました。

 その1年後、Aさんが、「佐々木さん、アウトドアやりますよね」と、また連絡をくれました。どうやら私のフェイスブックを見たらしく、カヤックに誘ってくれました。私はまったくの初心者でしたが参加したところ、Aさんはもともと広告マンだったため、広告業界の人が4人ほどきていました。その人たちともすっかり仲良くなりました。

 さらに1年後、その時一緒にカヤックをした一人が「ある食品会社の動画に出演してほしい」と連絡をくれました。それで15万円の収入です。

 わらしべ長者のような話ですが、こういうことは誰にでも起こり得ます。どこでスタートした人間関係が、最終的な収入になるかなどわかりません。Aさんの相談に乗った時点ではお金になっていませんし、広告業界の人たちとカヤックで遊んだ時も「仕事こないかな」などと考えてもいません。結果的にお金になっただけの話です。

 時間=仕事でもなければ、仕事=お金でもありません。あらゆる行動を「ためになるかも知れない何か」くらいに考えておくと、気持ちの余裕にもつながるはずです。

{ この記事をシェアする }

広く弱くつながって生きる

バックナンバー

佐々木俊尚 作家・ジャーナリスト

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP