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言ってはいけない、宇宙論と「ムー」の世界

2018.03.28 更新 ツイート

対談その2

物理学の研究世界が多世界に分裂している!?小谷太郎/三上丈晴

NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえば、あの雑誌、月刊「ムー」である。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊「ムー」編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける対談の第2回。話題の映画の話から、世界が分裂していくムー的世界に……。(構成・川口友万)

月刊「ムー」は毎月9日発売です!!

→対談第1回を読む

インターステラーとNASAの秘密

三上 映画「インターステラー」はご覧になられました?

小谷 ええ。ノーベル物理学賞のキップ・ソーンが考証しているだけあって、ブラックホールの周りで光がどう曲がるか、しっかり表現されていましたよ。

三上 その先は本棚の裏だったというのは……。

小谷 その先はキップ・ソーンとは関係ないかと……。私としては不満なところもあって、最初、娘が「人類は月へ行った」と主張して、学校でみんなにウソだウソだって言われるんですね。だからこれは陰謀論と闘う話なのかと思うじゃないですか。ところがしばらく見ていると、NASAが山の中に秘密の基地を作っていて、秘密のロケットがあって、主人公が飛び立つわけですよ! これって陰謀論ですよね。

三上 あれはまさにムーの世界ですからね。ムーの言ってきたことが正しかったと証明された未来ですからね。

小谷 僕はだまされた気分になりましたね。

「インターステラー」の展開にやや不満があると語る小谷太郎氏。

 

三上 映画ですからね。小谷先生がNASAにいらした時、そういう秘密の施設があったりはしなかったんですか?

小谷 私みたいな一介の外国人研究者が見て回るには広大な施設なんですが、立ち入り禁止の場所はあります。たとえば国際宇宙ステーションの中にコンピュータがありますが、そのIPアドレスは絶対秘密ですよね。

三上 それはそうでしょう! ハッキングされたらねえ。

小谷 研究というのは論文を書いて批判を受けないと前に進まないので、完全に秘密の研究というのは難しいですよね。秘密組織の秘密機関が秘密技術を持っているというのは、すごく難しいと思います。

三上 日本の某重工さんには、一部の研究者と役員しか入れない秘密の研究室があると聞いたことがありますけども。レンズに関する何かをやっているらしい。常温核融合をやっているという噂も。

小谷 常温核融合は重水素に電極を入れて電気分解すると、インプット以上の熱が発生したというものですね。話題としては盛り上がったんですが、100件の追試があると、1件ぐらいは測定のゆらぎで高い数字が出るんですよ。残り99件は失敗して、だまっている。高い数字が出たところは興奮して論文を書くんで、あっちこっちから高い数字の論文が出るんですよ。それでそういう盛り上がりになったんだと思いますね。ブームは過ぎてしまったんですが、いったん信じてしまった人はどんな証拠を突き付けても、常温核融合はあると言う。

三上 そういう人たちは他に論文を出せないですよね?

小谷 だからそういう人たちだけで学会を作るんです。常温核融合は成功しましたという発表ばかりがあるんです。

三上 世界が分岐したわけですね、常温核融合が成功した世界としない世界に。

科学界の裏側を語る小谷太郎氏(写真手前)とムー的な展開に喜ぶ三上丈晴氏(写真奥)。

 

小谷 多世界解釈ではそうなりますね。100件が100件とも実験が成功したという世界があるかもしれませんよ。

三上 ほ~ら、ムーの世界になってきた。

 

波動関数は観測者の知識を表す?

三上 多世界解釈はムーでは定番で、何回も取り上げています。

(編集部注:多世界解釈……粒子の波動関数が右の検出器に2分の1、左の検出器に2分の1流れ込んだ状態で、粒子の位置を測定すると、右の検出器で検出できた瞬間、波動はぴゅっと縮んで右に集中する。このように波動関数が観測の瞬間に収束するのはどういう仕組みによるのか? いまだ答えの出ないこの難問に、「検出された瞬間に、右で検出した世界と、左で検出した世界に分裂しているのだ」という説を唱えるのが多世界解釈)

小谷 みなさん、多世界解釈が大好きなんですけど、最近の風潮では「波動関数の収束は知識の収束」という見方が多勢になっているんです。多世界解釈は否定はできないんですけどね。

三上 知識の収束?

小谷 量子力学の大前提に、観測を行うと系の波動関数が収束するというのがあります。教科書にも書いてあるんですが、では、なぜ収束するのか? は教科書に書いていない。長い間、結論が出ていないんです。だからこれまで観測問題は量子力学のメインストリームからは「ちょっと変わった研究」という扱いをされてきた。
 ところが最近、量子コンピュータの分野が盛んで、必然的に波動関数の収束も扱わなければならず、メインストリームになってきています。コンセンサスが得られつつあって、それが波動関数は観測者の知識を表すというもの。波動関数がその系で収束するというのは、波動関数がその系において観測者の知識が変化したとするんです。

三上 おもいっきりムーですね、それ。

小谷 そうですか?

三上 シュレディンガーの猫にあてはめれば、箱の中の猫の存在は観測者の脳が決定するという。

小谷 箱を開けた時、「猫が生きているという状態」と「猫が生きていることを知っている状態」は区別することができないですよね? 今までは物体が変化していることを記述するのが波動方程式だと思われてきたんですが、そうではなくて、物体についての観測者の知識を記述する式だというわけなんですね。

三上 誰もいない森の中で木が倒れた音はするのか、という哲学命題があります。シュレーディンガーの猫とも通じますが、観測する人間がいなければ観測される対象も存在しないという。客観的な存在はないという考え方です。でも観察という行為が実は知識ということ?

小谷 2人の観測者がいれば、知識の状態に違いがありますよね。その場合、1つの量子の状態が2つの波動関数で表されるんです。

三上 爆弾検査問題という思考実験があって、あれなんかは観測者不在でも波動の収束は起きる(=爆弾が爆発する)ということかなあと思いますけど。

小谷 これまでの観測結果を知っていて、これからの観測結果を予測するというのは量子力学であり、物理学です。これまでの知識は波動関数として表現できるんですよ。そして確率で次の観測結果も予想できる。観測するとその結果として新しい情報が知識に加わるんです。そうすると新しい情報も含む新しい波動関数に変えなきゃいけない。それが波動関数の収束なんですよ。

 

(対談第3回につづく・3月31日公開予定です)

元NASA研究員の小谷太郎氏が物理学の未解決問題をやさしく解説した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』好評発売中!

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言ってはいけない、宇宙論と「ムー」の世界

NASAでの勤務経験もあるX線天文学者の小谷太郎氏が上梓した『言ってはいけない宇宙論 物理学7大タブー』が発売即重版になる大反響。世界のタブーに挑むといえば、あの雑誌、月刊ムーである。物理学のタブーから世界のタブーまで、小谷太郎氏と月刊ムー編集長三上丈晴氏が秘められた禁断の扉を開ける。(構成・川口友万)

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小谷太郎

博士(理学)。専門は宇宙物理学と観測装置開発。1967年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。理化学研究所、NASAゴダード宇宙飛行センター、東京工業大学、早稲田大学などの研究員を経て国際基督教大学ほかで教鞭を執るかたわら、科学のおもしろさを一般に広く伝える著作活動を展開している。最新刊『宇宙はどこまでわかっているのか』ほか、『言ってはいけない宇宙論』『理系あるある』『図解 見れば見るほど面白い「くらべる」雑学』、訳書『ゾンビ 対 数学』など著書多数。

三上丈晴 月刊「ムー」編集長

1968年、青森県生まれ。学研「ムー」の5代目編集長。筑波大学を卒業後、学習研究社(現・学研)に入社。「歴史群像」編集部を経て、入社1年目より「ムー」編集部に所属。

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