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質素であることは、自由であること

2017.09.11 更新 ツイート

幸せになれる理由、なれない理由~世界でいちばん質素な大統領夫人が教えてくれたこと~ 有川真由美

「貧乏な人とは、少ししか物をもっていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」
ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領は2012年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連の「持続可能な開発会議(Rio+20)」のスピーチで「世界で最も貧しい大統領」として世界的に有名になりました。
そんなムヒカ前大統領の生活を長年支え、共に「持たない暮らし」を実践する妻ルシア・トポランスキーさんに有川真由美さんが取材しました。
テーマは「幸せに生きるために必要なもの」。
その取材をまとめた『質素であることは、自由であること』(幻冬舎より発売中)より
幸せになれる理由、なれない理由について紹介します。

 

ゆたかになっても幸せにはなれない

「生きる意味をもちなさい。それは、それぞれが自分で見つけるもの」というルシアさんの言葉によって、幸せになれる理由、幸せになれない理由の謎が解けたようだった。

 

「生きる意味ってなんだろう?」

私たちは、人生のどこかで、そんな根拠のない問いをもつことがある。

私は、20代のころ、朝早くから深夜まで仕事をし、帰宅して寝るだけの生活を送っていたとき、「生きるために仕事をしているのか。仕事をするために生きているのか」「なんのために生きているんだろう」と、ふと考えては、ため息をついた。

あのころは、人生とは、とかく辛く苦しいものであると思い込んでいて、幸せは、はるか遠いところにあった。会社は急成長していて、たくさんの売上があり、そこそこの収入を得ていたにもかかわらず、幸せを感じる余裕がなかった。

ただ、「ダメな人間だと思われたくない」「無職にはなりたくない」「人に迷惑をかけたくない」というような後ろ向きな理由が、消えてなくなりそうなモチベーションをなんとか支えていた。

 

「生きる意味なんてもたなくて、いいじゃないか」

「そもそも、生きていることに、意味なんてない」

「ただ、生きているだけでいいのでは」

そんなふうに考える人もいるかもしれない。

でも、“自分自身”の生きる意味をもたなかったら、私たちは無意識のうちに、生き方を、なにかに依存してしまうのではないだろうか。「会社がいうことに従う」「みんながそうするから、私も」と流されるように。そんなふうに、いつもなにかにコントロールされて生きていると、時間ができたとき、会社から外に放り出されたときに、なにをやっていいか、わからなくなってしまう。

戦前や戦中であれば、国家や地縁、血縁によって、なかば強制的に価値観や役割を与えられていた。戦後は、経済成長によって、だれもが家をもち、車をもち、家電製品をもつ……という新しい幸福感に、国民全体が歓喜した。

それはそれで幸せだったのかもしれない。

そして、いま、私たちは、経済的なゆたかさも自由も手に入れた時代にもかかわらず、ぼんやりとした“まわりの空気”といったものにコントロールされている。真面目さや忠誠心のある国民性はいいことだが、方向をまちがうと、ただそれが搾取されてしまうことにもなる。

まわりに迎合して、ちいさいことから大きいことまで、社会の枠から外れないように生きていたら、一人ひとりが幸せになれないのは、あたりまえではないか。

 

私は、30代後半になってから、やっと自分の人生を歩き始めた。「やりたいことはなんでもやってやろう」と、世界をぐるりと一周したとき、貧しい国の人びとのほうが、たくさんの子どもをもち、ゆたかで自由な時間をもち、弾けるような笑顔のなかで生きていることに愕然とした。富める国のほうが、犯罪や自殺が多くなり、心と体の健康が損なわれていることに、激しい矛盾を覚えた。

私たちは、経済的にゆたかになるほど、失ってきたものがあるはずだ。

働くことばかりを優先して、自分の時間がなくなること。

出費がなにかと増えて、経済的に苦しくなること。

便利なものに依存して、生きる力が失われていくこと。

人とのつながりが希薄になり、子どもからお年寄りまで孤独になること……。

おかしなことだ。がんばればがんばるほど、私たちは、幸せから遠ざかっている。?それらの大きな理由は、経済社会の与える意味に従って、押し流されるように生きてきたからではないのか。

だから、ルシアさんは、「日本人は、もっと自分の人生を生きたほうがいい」と言いたかったのではないか。

私たちには、“それぞれ”が幸せになる道があると。

それを、「生きる意味」といったのだろう。

人生の意味は、神様が与えてくれるものでも、社会が与えてくれるものでもない。私たちが、自分自身に与えるものなのだ。

 

関連書籍

有川真由美『質素であることは、自由であること 世界でいちばん質素なムヒカ前大統領夫人が教えてくれたこと』

お金がなくても、誰でも幸せになれる! 給料の9割を寄付する。資産は中古の車1台のみ。 ムヒカ氏との質素な生活の末に辿り着いた 人生に最小限必要で、最高に価値あるものとは? 「世界でいちばん貧しい大統領」として有名になったウルグアイ前大統領ムヒカ氏。 彼と長年付き添っている妻のルシア・トポランスキーに女性エッセイスト・有川真由美がインタビュー。 ムヒカ氏とのなれ初めから、物を持たずに幸せになるということ、お金との向き合い方など誰でも 幸せになるヒントが盛りだくさん。持たない暮らしの幸福論。 【内容】 ・働けば働くほど幸せから遠ざかる ・生きる意味は近くにある…… ・ゆたかになっても幸せにはなれない ・「〜したい」が人生を変える ・暗い側面を見ることは悲観的ではない ・スーパーで人生は買えない ・愛のないものを欲しがってはいけない ・人生に少しだけ花の種を置いていく

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有川真由美

鹿児島県姶良市出身。台湾国立高雄第一科技大学大学院応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、科学館コンパニオン、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリーカメラマン、新聞社、編集者などその数50の職業経験を生かして、自分らしく生きる方法を模索し、発表している。また、世界約40か国を旅し、旅エッセイやドキュメンタリーも手がける。著書に『遠回りがいちばん遠くまで行ける』『上機嫌で生きる』(小社)他多数。

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