男性が女性を軽んじてしまう様々なケースの分析から、男女が歩み寄る糸口を探る『男尊女卑という病』。静かに熱く注目される本書から、その一部を抜粋してお届けします。
第2回は、クレーム電話を入れてきた中年男性のケースです。こういう人は、今も珍しくないのかも……?

かつての東京都議の女性蔑視のヤジ発言──「早く結婚したほうがいい」「産めないのか」等々──は、ニュースでも大きく取り上げられ話題となった。しかし、そこまであからさまでなくても、妻や恋人を日常的に軽んじ、男性優位の“上から目線”でしか女性を見られない人はいる。
彼らは無意識のうちに、女性を一段下に見てしまっている。それを本人や周囲から非難されても、本質的な部分では、相手の気持ちが理解できない人も少なくない。彼らはなぜ女性を軽んじるような言動を自然ととってしまうのか。
この章では、男性優位が表れた身近な例を挙げながら、そこに潜む彼らの思い込みや、心理的背景を見ていきたい。
責任者は“男性”と無意識に思い込む人たち
男性が無意識に女性を軽んじてしまう典型的な例は、社会的ポジションに関するものだろう。
たとえば、ある30代の女性編集者のところに、読者から問い合わせの電話がかかってきた。購入した本の内容に関することで質問があるという。取り次がれて出ると、電話の相手は声から推測して、50代から60代ぐらいの男性だった。
その男性から、「この部分はどういう意味なのか。内容が間違っているのではないか」と聞かれ、書籍の担当責任者である彼女は丁寧に説明をした。しかし、その男性は説明に納得がいかなかったのか苛立(いらだ)ち始め、「いいから、この本の責任者を出してよ」と言ったという。その男性は、電話口で説明している女性より上に、男性の責任者がいるものと思い込んでいたのである。
このような話は、よく見聞きするのではないだろうか。
たとえば企業のお客様窓口はたいてい女性が担当しており、クレームもその担当者が受けることが多い。けれどもいまだに、「女じゃ話にならないから、男を出して」と、はじめから話をまともに聞こうとしない不躾(ぶしつけ)な人もいるらしい。
女性を軽視する傾向がある人は、まったく悪気なく失礼なことを口にする場合も多い。ミスや失敗を責められるのなら反省し、改善することもできるが性別は変えられない。何も反論できず、悔しい思いをしている女性は多いことだろう。
私がまだ若い頃に勤務していた病院でも、こうしたことはあった。
さすがに患者さんから面と向かって「男性の医者に替えてほしい」と言われたことはないが、部長として着任した当時の男性医師に、「女の医者は信用ならない」と言われたことはある。特に私が医者になったばかりの30年前は、女医が少なかったこともあって、周囲のそういった反応は珍しくなかった。今の医学部は女子学生が3分の1を占め、女医もよく見かけるようになった。それでもまだ、医者は男性がなるものだと思い込んでいる人は少なくない。
最近、研修が終わったばかりの若い優秀な女医にこんな話を聞いた。
入院していた患者さんが夜中に「せん妄(もう)(意識障害の一種で、しばしば幻覚や妄想を伴う)」を起こし、暴れていたという。彼女が呼ばれて病室に行くと、患者さんは幻覚症状もあって興奮状態が収まらない。そこに男性の看護師が駆けつけた。すると、途端にその患者さんはおとなしくなったのだという。
おそらくその患者さんは、もうろうとした中でも、女医を「看護師」、男性看護師を「医者」と思ったのだろう。「そういう時、すごく悔しい思いをするんです」と彼女は話した。昔に比べてずいぶん状況は変わってきてはいるが、似たような話は今もあるのだ。
実際、日本では、責任者や社会的な地位の高い職業に就いているのは男性であると思い込んでいる人が多い。社会全体が、女性が上のポジションに就くことにまだ慣れていないこともあるのだろう。次のようなケースからもそれはわかる。
第3回「男性がお茶出しをした時に流れる微妙な空気」は、10月16日(金)公開予定です。












