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生き方3.0

2013.11.20 公開 ポスト

特集 生き方3.0 國分功一郎×麻木久仁子スペシャル対談

社会全体が「政治に無関心な若者」を育ててきた(2/4)麻木久仁子/國分功一郎

「意見が違うのは当たり前」と実感することから

麻木 本来、党派性って、組織じゃなくて自分の内側にあるものなんじゃないのかな。一人ひとりにそもそも党派性というものがあって、それらがくっついたり離れたりして、集団としての党派になっていく。たしかに自分の中の党派性、政治性をないものにしておくほうが、この国では円滑に生活できる。でも、「じゃあ、あんたとは闘うしかない」とか、「あなたとは組めそうだ」とか、そういう肝心な話をするためには、まず己の中には党派性があることを認めないといけないよね。

國分 「一人ひとりの党派性」っていうのは、とてもいい言葉ですね。

 今回運動をやってみて思ったのは、みんな日常の会話で政治の話は避けがちだけど、やっぱりしたほうがいいってこと。小平の僕の周りでは多少するようになったんですよ。たとえば近所のママ友とコンビニで会って、道路建設について十五分ぐらい立ち話したりする。

 そういうときに重要なのが、相手と意見が違うのは当たり前だと実感できることなんです。政治の話をしていたら、必ず意見が違うところが出てくる。というか、政治の話は、違うのは当たり前だよねってところから始まると思うんですよ。

麻木 私もそれが議論の土台だと思う。意見が全部一致しなくても、「もうお前という人間が許せない!」とならないことが大事なのよね。ところが日本の場合は、意見が一致しないとすぐに、「あいつ、カネでももらってんじゃねえのか」とか、「あいつはバカだ」ってなっちゃう。こうなるともう政治の話はできない。まあ、意見が違う人から批判されると、たしかにムカつくけどね(笑)。

國分 今回の運動では、道路建設賛成の人に会っても、「まあ、その話もわかりますよ」っていう人たちが、反対派のなかに多かったんですよね。それは、自分の意見に自信があったからかもしれない。自分の意見に自信があると、違う意見が出てきても、「とりあえず話を聞かせてください」と言える。自分で自分の意見を信じていないと、いつ崩されるかわからないから、反対意見に対してヒステリーを起こしてしまう。

 だから、政治的な議論を成立させるためには、まず自分で自信を持てる意見をどうやってつくっていくかが重要で、それには――ごくありきたりな結論ですけど――いろんな人と話をすることがとにかく大切だと思うんですよね。

 僕自身、この活動を通じていろんな人と話をして、最初にあった意見がだんだんと磨かれていった。この本は、そうやってこの半年の間につくってきた意見を、忘れないうちに書きとめた本でもあるんです。

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麻木久仁子

1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退後、芸能活動を開始。司会者、女優、エッセイスト、コメンテーターなど幅広く活躍。無類の読書好きで、TBSラジオ『麻木久仁子の週刊「ほんなび」』のパーソナリティを務めるほか、人気書評サイトHONZのレビュアーでもある。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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