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おいしい珈琲をごいっしょに

2006.07.15 公開 ツイート

第20回

いがいとあう和 甲斐かずえ

 

 第20回

これまで、「おいしい珈琲」を楽しんでいただくために
色んなお話をさせてもらいました。
毎回のように「おいしい珈琲」という言葉が出ましたが、
みなさんはどんな珈琲を思い浮かべていたのでしょうか?
本来は、言葉であーだこーだ説明してみても、
飲んでみないことには分からない部分もあります。
ですが、それとて好みがあり、10人が飲んで10人とも
同じものをおいしいと感じるものではありません。
そこがまた難しいんですよねー。
一番最初に、おいしい珈琲豆に出会うためのガイドとして
漠然としたイメージは言いました。
最後に、今度は具体的な「おいしい珈琲」についての
お話をしてみようと思います。

 

人それぞれに味の好みがあります。
珈琲という飲み物は、まさに「嗜好品」と言われるもの。
ただ「好み」という部分を除いて、
子供からお年寄りまで、誰もが飲んでおいしいと感じるものは、
ひとつのおいしさの基準のように思います。
でも、それって実はすごく平凡だったりします。
おいしい珈琲って言うからには、さぞかしおいしいんだろう、
などと期待をされても
特別なインパクトを与えるものではないので、分かりづらいかもしれません。
以外と珈琲が苦手な人の方が分かったりするんですよね。
苦手な人でも飲める珈琲なんですから、やっぱりおいしいんでしょう。
 

 

珈琲のおいしさと言うのは、
例えばイタリアンやフレンチなどの食べ物とは違い
はっきりと「これがおいしい珈琲」と表現しづらい部分があります。
ほとんど感覚的な物です。
他に類を求めるなら、
上級の日本酒やワイン、ブランデーといった所でしょうか。

 

 

実は、珈琲としての優れた味(=おいしい珈琲)は、
体が自然と伝えてくれる味と思って下さい。
というのも、舌には最高度の中枢神経があります。
食べ物と違い、飲み物は舌にのせた瞬間に判断出来るので、
口に含んだ時に拒絶作用(萎縮)を起こさない物は、
飲み物としてOKになります。
他の飲み物であれば、そんな反応は無いはずですが、
珈琲の場合、味の主体が苦味(人間の本能で毒として身構えるもの)です。
えぐみや雑味が混じった苦味に対しては、舌が拒絶反応を示します。
珈琲を苦手とする人の多くは、こういった苦味を嫌がります。
飲みづらいと感じるのは、ある意味体の素直な反応なのでしょう。
では、拒絶作用が起こらない珈琲ならおいしいのか? となると
それだけではなく、ちゃんと味わえるものであることも大事です。
おいしさというのは、最終的には、
人それぞれの味覚の経験やセンスによる判断になります。
色んなものを食べたり飲んだりして、
自分の中に蓄積されたものが判断の基となりますから、
味覚を磨けば、それだけおいしいものに出会えるってことですね。
それも、おいしいものだけ食べていては明確に出来ない部分があります。
あくまで、マズイものの対照にあるおいしさの存在だ
ということもお忘れなく。

 

 

店でお客さんから言われることがあります。
「たまたま切れちゃって違うのを飲んでみたら、
いつも飲んでるおたくの方がおいしかった」
「実は他を色々買って試してみたんだけど、
やっぱりここがおいしいってことになった」
きっと店にいらっしゃるお客さん達は、たまたま近所だから、
通り道だからと買いに来ていたのでしょう。
有名店でもない、宣伝もしていない街中の珈琲屋。
普通においしく飲めていたから買っていたものが、
実はけっこうおいしい珈琲だったとは気付きにくいです。
苦味の抵抗がなく、すうっと飲めちゃうんですもの。
先に、平凡だと言ったのはこういうこと。
だから、たまにする浮気なら大いに結構ですよ(笑)

 

じゃあ、そんな珈琲のどこを味わい楽しむのか?
味や香りはもちろんのこと、おいしい珈琲の最大の魅力は、
後口の良さ、余韻を楽しめる点です。
口の中にほわほわっと心地良く残る香味。
先ほど例に挙げた、上級の日本酒やワイン、ブランデーにしても
同じような楽しみ方を持ちます。
いいお酒を飲んで十分に味を堪能している時に、
つまみはほとんどいらないでしょ?
せっかくの余韻を消してしまいます。
珈琲の場合、良き余韻を楽しむためには、
その前の段階で、苦味や酸味が良質でなければなりません。
また、味のバランスが良いこと。
特に苦味や酸味が際立っていては、他の味が消されてしまい
余韻を楽しむに至りません。
個々の良質な味とバランスによってはじめて、
おいしい珈琲の余韻を楽しむことが出来ます。
これってけっこう贅沢な味わい方ですよね?

 

 

 

 

これまで、若輩者ながら
おいしい珈琲への案内役を勤めさせていただきました。
伝えたいことは全部お話してきたつもりですが、
みなさんに上手く伝えることが出来たかは、正直わかりません(笑)
ま、コレが正しい! という決まりもなく、
色んな人の考え方があって、色んなタイプの珈琲が存在する世界です。
この連載は、私の修行経験を通して感じたことを、
私の視点で書いていますから、
これもまた色んな人の考え方の中の一つでしかないです。
受け取り方はみなさんにお任せします。
肩書や情報に流されず、個々の感覚に磨きをかけていれば、
おいしい珈琲には必ず出会えます。
飲んで、心がほっと和むような珈琲。
こちらもみなさんのアンテナに引っかかるよう、
おいしい香りを漂わせて精進したいと思います。
長々とお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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「 おいしい」と感じる時人は思わず笑顔がこぼれます たかが一杯の珈琲されど一杯の珈琲 そこからうまれる「おいしい笑顔」……そんな珈琲に出会う旅ご一緒にいかがですか?

※本連載は旧Webサイト(Webマガジン幻冬舎)からの移行コンテンツです。幻冬舎plusでは2006/07/15のみの掲載となっております。

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