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  4. なぜ『ギャングース』は奇跡の漫画なのか?

◆鈴木さんからは無尽蔵にネタが出てくる

――それにしても毎週、この濃度で連載していくのは、ものすごく大変ですよね。どうやって1回1回を作っているんですか。

関根 はい、ものすごく大変です(笑)。まず連載が始まる前にだいぶ打合せをして、最終回までのおおまかな話の筋は全部作ってあるんです。「ネーム」とぼくらが呼んでいる漫画の下書きも、連載開始前に13話分ぐらいはできていました。

――それで肥谷さんが単行本第1巻のあとがきに、「2年間ネームが通らず、何度もやめたいと夜中泣いて走りました」とお書きになってたんですね。

関根 そうでしたね。4話めぐらいまでは、10回は大げさですが、多くのやり直しをすることになってしまいました。

――それはどんなに泣いても泣き足りない(笑)。カズキやサイケたちが行う犯罪の事例は、もちろん鈴木さんが持ってるわけですよね。その素材がまずあって、それをどういう話にしようかというのを、鈴木さんと肥谷さんと関根さんの3人で最初に詰めるんですか。

関根 最初のところは逆なんです。「漫画のストーリーとしてはこういう展開にしたいから、じゃあ、さらにこんなことが起きたらおもしろいですね」とか、「こんなつながり方にしたいなあ」というフィクションのおもしろさを先に作ります。そのあとで鈴木さんに、「このストーリーに当てはまるようなネタとか、犯罪の実例はないですか」と伺うんです。ちょっと無茶振りに近いですけど。

――それは意外でした。

関根 最初はネタが先行だったんですよ。こんなおもしろい実話があるから、それをもとにストーリーを作りましょうと。ただそれだと、そのネタを漫画全体の大きなストーリーにつなげられるかどうかが見えてこない。それよりはストーリーを優先させたい。鈴木さんはものすごい量の取材をなさる方で、『ギャングース』のストーリー制作に携わるようになった今でも、週に2、3本は必ず取材を入れてらっしゃる。だから本当に何でも知っているというか、無尽蔵にネタが出てくる。そこに甘えてしまえるので、そういう形になっていったという経緯があります。

――誰にでもできることではないですね。

関根 自分のわずかな経験からしか言えませんが、この作り方は、鈴木さん一人にしかできないのではと思います。ネタは無尽蔵だし、打合せもそれだけ付き合ってくださる。しかもフィクションならではの事情も理解してくださるところは、本当に奇跡的です。

 

★『ギャングース』第1話が無料で読めます!
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★第2回「ケンカすればするほど、よいものができる」は3月23日(月)に掲載予定です。お楽しみに!

 

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『ギャングース』担当編集者が語る、ルポライター・鈴木大介の仕事

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関根永渚至

2006年講談社入社。『別冊フレンド』『週刊現代』を経て、現在『モーニング』編集部。
担当作品は……
■肥谷圭介×鈴木大介『ギャングース』(単行本1~7巻好評発売中)
■島田荘司×原点火『ミタライ――探偵御手洗潔の事件記録――』(単行本1~3巻好評発売中)
■カレー沢薫『クレムリン』(単行本1~7巻好評発売中)/『バイトのコーメイくん』(単行本1~2巻好評発売中)/『負ける技術』(モーニング公式サイトの伝説のWeb連載エッセイを書籍化)/『やわらかい。課長 起田総司』(単行本1巻好評発売中)/『人生の病理相談』Dモーニングにて好評連載中

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