誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
君が知らない小さな夜の入口は
地下へ降りる階段か、誰かの横顔に浮かぶ一瞬の影なのか
濡れた舗道にしがみつく、名前のない塵かもしれない
人々は気づかず、その入口を通り過ぎていく
渋谷の夜は巨大な水槽
無数の身体が自由に泳ぎ、光の魚がその間をすり抜けてゆく
交差点の信号は月の満ち欠けのように色を変え、ビルの窓には存在しない星座が幾つも浮かんでは消えた
君と僕が見つめあうと、街の輪郭が静かにほどけてゆく
舗道は海になり、ネオンは遠い惑星に、誰かの笑い声は、何千年も前に消えた星から届く信号に
生まれる前に失い忘れてしまった記憶が、暗闇の底で静かに目を覚まして
幼いころに見た夜空、行く先を知らなかった光、まだ誰も愛していなかった頃の透明な孤独
音の果てから一つずつ理想が浮かび上がって、ふと気づく
星は失くしたものの中にも潜んでいる
会えなくなった人の声にも、言葉にならなかった感情の底にも、微かな光が沈んで
言霊は夢のように揺れ、無数の窓が瞬きはじめて、ひとつひとつが遠い宇宙への小さな扉に
僕は歩く
帰る場所を探すのではなく、まだ名前のない場所へと
君と交わした音だけを灯りにして
見えないはずの星が、夜の底でひとつ静かに瞬いた

細野晴臣『Yours Sincerely』(2026年、ソニー・ミュージックレーベルズ)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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- 言霊は夢のように揺れ、無数の窓が瞬きはじ...
- 触れた瞬間だけが小さな火のように残って ...
- ガラスに映る顔を見つめて - 三浦透子『...
- 奇蹟と呼ばれるものは、たぶん - THE...
- その淡い輝きは、世界を照らすためではなく...
- この瞬間だけが異様な密度を帯びて存在して...
- 誰かを愛した記憶も、失った季節も - 忌...
- たとえ何にも代え難い大切なものだとしても...
- 近づくことと、触れ合うことは違うのに -...
- それでも誰かを求めてしまうのだから - ...
- ただ、崩れゆく均衡のなかで - 折坂悠太...
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- 街は今夜も静かな水の像のように - BT...
- 音だけが先に季節を越えてゆけるのなら -...
- 救いとは、劇的な変化ではなく - Rol...
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- 君と僕が描いた思い出の色彩の洪水が - ...
- 心の境界線を曖昧に - 星野源『生命体』
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