誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
夜は誰かを待つためにあるのではなく、待っていた時間の断片を溶かすために
君のそばで猫みたいに眠る、そのイメージだけは忘れないで
光は濡れた路面にほどけ、人影は名前を持たずに交差して
街の喧騒は遠ざかり、ひとつの感情だけが鮮明に浮かび上がる
私は貴方。
その言葉は愛の告白ではなく、境界線の消失に近くて
君と僕の中間にある薄い膜が、夜気のなかで静かに破れてゆく
ガラスに映る顔を見つめて、そこにいるのは僕なのか、君に見つめられたことで生まれた僕なのか
僕はひとりで自分になるのではなく、君の眼差しの中で、僕は僕になる
あらゆる輪郭を変えて、思い出の坂道を歩いて
ビルの隙間から流れる風、遠い季節の匂い
触れ損ねた指先、思い出さなくてもいいはずの夜
ふわりと消えて、姿を変えて漂う約束
ひとりひとりの胸の中にも、誰かの不在が棲んで
愛された記憶も、愛しすぎた記憶も、言えなかった言葉も、スクランブル交差点の光に紛れて静かに明滅して
貴方の香りの中にも残った私
君の中でも息をする僕
二つは綺麗に分けることなど出来ない
無数の孤独を光のなかへ放ちながら、誰かを愛した者だけが悟った、あの奇妙な眩しさを抱いている

三浦透子『点描』(2022年、Universal Music)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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- ガラスに映る顔を見つめて - 三浦透子『...
- 奇蹟と呼ばれるものは、たぶん - THE...
- その淡い輝きは、世界を照らすためではなく...
- この瞬間だけが異様な密度を帯びて存在して...
- 誰かを愛した記憶も、失った季節も - 忌...
- たとえ何にも代え難い大切なものだとしても...
- 近づくことと、触れ合うことは違うのに -...
- それでも誰かを求めてしまうのだから - ...
- ただ、崩れゆく均衡のなかで - 折坂悠太...
- 声も笑いも思い出の中に佇む君には - a...
- 街は今夜も静かな水の像のように - BT...
- 音だけが先に季節を越えてゆけるのなら -...
- 救いとは、劇的な変化ではなく - Rol...
- 確かなものを握ろうとする指先から、光はこ...
- そのリズムが止んでも幻視は続き - XG...
- 数えきれない始まりの気配が - 高橋幸宏...
- 君と僕が描いた思い出の色彩の洪水が - ...
- 心の境界線を曖昧に - 星野源『生命体』
- 風と時間の気まぐれに晒され続けて - R...
- 静けさだけが曖昧に - showmore...
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