1979年1月、東京生まれ同士の古賀及子さんとスズキナオさん。「デイリーポータルZ」で共に働いたお二人が、スズキさんの『このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。』刊行を記念して、“中年と寂しさ”について(?)語り合います。
3回目は、「デイリーポータルZ」という同じ学習塾の塾生という二人の、執筆スタイルについて。
その2はこちらから
* * *

世界で言いたい。「今の自分が一番歳とってるんです」という逆名言。
古賀 私たちが「デイリーポータルZ」で一緒に仕事したのは、10年くらい前からですね。ナオさんがライター、私が編集担当で。
スズキ 原稿を担当の古賀さんに送って、いつもそれについて面白かったですとか、感想を言ってくれるんですけど、あんまり面と向かって会うことって、なかったですね。
古賀 でもどこかのタイミングでナオさんと仲良くなったんですよね。
スズキ いつからか、パリッコさんと3人で一緒に取材に行くことも増えて。それが終わった後にそのまま飲みに行ったりしてだんだんとっていう感じですよね。古賀さんが本を書かれるようになってからは、出版記念イベントとかで一緒になったり。
古賀 そうそう、イベント一緒にやらせてもらったり。今では、本(『答えのない答え合わせ』)とかを一緒に出させてもらって。元々は、ナオさんが日記書いてたから、私、日記書き始めたのはナオさんの日記を読んだから、っていうところがあって。ナオさんがずっとネットに日記を更新し続けていて、それでネットって日記書くところだったよな、昔だったら MIXIとかで、じゃあ私も書いてみようか、って書いたらずっと書けた、っていうところがあったんです。あと「デイリーポータルZ」でお互い記事も書いたし、編集の担当でもあったけど、あのサイトのスタイルとして、みんながまあ簡単に言ったら見過ごしがちなこととかに立ち止まって、なんかこうああだこうだ、こねくり回して記事に仕上げるみたいな一個スタイルがあって。
スズキ そうですね、同じ学習塾みたいなところにいたとも言える。
古賀 そうです、同じ塾にいたみたいな感じです。そうだ、同じ出身。それで、どうなの最近やってんのみたいな感じで。
スズキ 古賀さんの日記やエッセイを読んでいると、一つのことを面白い角度で見たり、グーンとズームしたりして書いていっているように見えます。そこにも同じ塾のスタイルを感じます。
古賀 なんか、確かに塾生としての習性。
スズキ それをやり続ければどんどん書いていけるみたいなね。
古賀 そうですそうです。同じ塾生で生まれ年も同じですね。誕生日も近い。
スズキ だけど、書くペースは古賀さんが圧倒的に速くて……。
古賀 私せっかちなんですよね。確かに私は恐るべきせっかち。
スズキ 古賀さんの『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』は去年の春出てましたもんね。本当はこの本(「このロボ」)は、それと同じタイミングで出る予定だったんですから。もう周回遅れ……。なんか中年に関することを書こうと思うと、日々の中で色々なことが起きて、自分がどんどん歳をとっていくから書けることが増えていくんです。
古賀 そりゃそうですよね。短期間で書くよりは、ゆっくり年取って何年もかけて書いた方が様々なる加齢がある。
スズキ 今が一番歳とってますからね。
古賀「今の自分が一番若い」っていう文脈は聞いたことあったけど、名言、逆名言ですよ。世界で言いたいですね。「今の自分が一番歳とってるんです」。
スズキ 胸を張って言うことじゃないですけどね。
古賀 一番経験値が高いですね。なるほど。

スズキ「巣鴨のお寿司屋」で、古賀さんは記憶を掘りおこしていますね。
古賀 そうですね。だから過去をずっと見ていくことなんで、いつでも書ける。
スズキ そうか、それは確かにそうですね。
古賀 老いは今をずっと切り取ったりしながら。
スズキ 今回の私の本は「デイリーポータルZ」で書いているようなものとは書き方が違って、自分の中の記憶について書いたりすることも多いんですよね。「デイリーポータルZ」だと、目の前に展開していくことを書いていけばいいんですけど、そこが大変でしたね。掘り起こしていくのが。
古賀 私も日記とエッセイはやっぱり違います。日記は本当に昨日のこと。で、エッセイはエピソードと論考っていう感じですかね。
スズキ どっちが難しいというのはありますか。
古賀 エッセイの方が全然大変で。日記は本当に、昨日あったこと、以上、だから。まあ、うっかり何か論じだすこともありますけど。でも、基本的には昨日あったことでエピソードもあんまり出てこない。とにかく昨日見たことだから書くことがクリアなんですよね。エッセイは何でもいいから難しいです。ナオさんは結構本当に何でも書いたわけですよね。
スズキ うーん、でも、どこかで書いたことをまた書いている……、と思うことが多かったけど、それはまあ、諦めましたね。
古賀 そうなんですよ。もう本当にね、勘弁してもらって。切り口違うから。
スズキ でも大変でしたけどね。
古賀 大変ですよね。
スズキ 大変でした。はい。結論的には大変でした。
古賀 いやいやいや、でもいい本になってねえ。
スズキ 本が出ることは嬉しいんですけど、その時点で大変ありがたいんですけど。どんな人に読んでもらえるかとか、読んでどう思ってもらえるのかって、分からないじゃないですか。
古賀 それもまあ、なかなかハンドリングできるものではないですからね。
スズキ「デイリーポータルZ」の記事をまとめた本だと、もう少しそこが想像できるんですけど、エッセイとなるとわからなくて。
古賀 そうですね、面白いと思ってもらえたらいいなとかね。
服大丈夫かっていうのは思う。着る服どう変えていくのか、なんかそういう不安はあります。

古賀 これからのことでいうと、まだ40代だから、中年期もまだまだ続く。いやまだ長いですからね、これから。どうなっていくか……やっぱりちょっと本当に体は不安ですよね。しかし、私は本当に元気だから。こっちから見たら書けることがどんどん増えていくみたいな、いい感じになるビジョンしか浮かばないんですけどね。
スズキ 結構長いスパンでは先が見えないなあと思いますよ、まあそんな風に長期的に見ること自体、あんまりしてないなっていう感じで。1年2年先がなんとかイメージできるかどうかで、あとはもう出たとこ勝負でやってる感じなので。こうなりたいというのもないし、とにかく今やっていくしかないという感じです。
古賀 うん、ほんとそんな感じですね。でもそれって結構、ずっとそうなんでしょうね。
スズキ そうですね。一年前の自分には思いもよらなかったことを今やっていたりするから。来年も多分そうなんだろうみたいな。こんな感じで、とりあえず仕事が続けばなーみたいな感じで。
古賀 そうですね、仕事さえあれば。それできっとあと10年経ちますよね。でも、服が、岸さんも言ってたけど、服大丈夫かっていうのは思う。着る服どう変えていくのか、なんかそういう不安はあります。中年以降はアクセサリーをつけないと全ての服が寝巻きになるって、ツイッターに書いてあるのを見て。でも私、アクセサリーをつける習慣がほとんどなくて、ってことはもうまあもう寝巻きなんだ、よしと思った。寝間着のままで生きていこうよ。よっしゃ、任しとけって、そう思った。
スズキ そうそう、開き直って生きていく。

撮影:米玉利朋子
このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。

なんと平凡な中年だろうか――。
缶チューハイ片手にふらっと散歩が趣味の、中年フリーライター。
歳を重ねるにつれ寂しさが積もる日々を綴る、書き下ろしエッセイ。
親戚一同が集い、伯父と伯母の金婚式を屋形船で祝った日の夜、父から渡された席順表。いつかこの紙を見てこの日のことを思い出すかもしれないと、リュックにしまった。「そしてまた、捨てられない紙が増えていく」より
息子がキャプテンを務める小学校のミニバスケチーム最後の公式戦を観戦。息子のチームがブザービートで勝ったのを見届けた帰り、発泡酒を飲みながらどんどん涙が出た。「ずっと忘れられない試合を見た」より
ライターとして飲食店を取材するという仕事があるけれど、最近、急激に食べられる量が減ってしまった。食べることを心の底から楽しめた時間は、せいぜい10年ほどしかなかったのではないだろうか。「食べられないという悲しみ」より
社会学者・岸政彦氏との特別対談「『こうはなりたくない』だけで生きていく」収録。











