期待の大きい次世代エネルギーですが、果たして脱炭素は実現するのか?
エネルギー関連銘柄への投資で成功するにも、エネルギー問題は政治情勢にも影響されるため、ニュースなどを追って世界規模でのトレンドを分析する必要があります。
今回は、本日発売となるファンドマネジャー歴25年のプロ・窪田真之さんの著書『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーが明かす「超」成長株の見つけ方』より、エネルギー循環社会についての一説をご紹介します。
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「エネルギー循環社会」を実現するために越えなければならない3つのハードル
今の状況から脱し、「エネルギー循環社会」を実現するために克服しなければならないハードルについて考えてみましょう。
①太陽由来のエネルギーを活用
地球上に広く薄く拡散しているため、それを集めて効率良く発電する方法を見つけるのが簡単ではありません。
②地球内部のエネルギーを活用
地下深くに熱源が存在するため、そこまで水を送り込んで水蒸気に変えて発電タービンを回すのは簡単ではありません。
③核エネルギーを活用
核融合発電は、実現すれば恒久電源となりえますが、実現まで、技術的ハードルが高い状態です。
それぞれ簡単に現状を深掘りしていきます。
①太陽由来のエネルギーを活用
太陽光・風力・水力・潮力などのいわゆる自然エネルギーの活用が進められています。これらはすべて、元をただすとほとんど太陽由来のエネルギーです。
太陽から地球まで、毎日、人間が使いきれない莫大なエネルギーが届いています。そのエネルギーはほとんど地球にとどまらず、宇宙に放出されます。
このエネルギーのほんの一部だけでもうまく捉えて人類が利用できるようにすれば、今あるエネルギー問題はすべて解決します。
ところが、太陽から来るエネルギーは、地球上に広く薄く拡散しているため、それを集めて効率良く発電する方法を見つけるのが簡単ではありません。
また、電気は「運ぶ」「貯める」ことが困難なエネルギーであるため、太陽光で大量に発電しても、それを効率良く使うことができません。
②地球内部のエネルギーを活用
地球内部にも、人類が使いきれない莫大なエネルギーがあります。
地球内部へ30キロメートルも掘り進むと、高温のマントルに突き当たります。そこから内側は非常に高温です。
地球全体を見渡すと、温度が低いのは私たちが生活している地表(地殻)だけということがわかります。地球内部のエネルギーをうまく活用することが鍵になるでしょう。
地球内部のエネルギーで発電することにチャレンジしているのが、前述した「高温岩体地熱発電」です。
地球上のどこでも、平均すると地下10キロメートルまで掘れば、300℃くらいの高温帯に達します。そこへ水を送り込んで水蒸気に変え、その蒸気でタービンを回せば発電できます。
ただし、そこまで深く掘り進んで、水を送り込むには大変なコストがかかります。現時点では、技術的にもコスト面でも、商業利用が可能な発電方法となっていません。
地球内部のエネルギー活用で、すでに商業利用が可能な低コスト発電が、みなさんおなじみのいわゆる「地熱発電」です。
火山地帯などで、地下水が熱せられて水蒸気になり、地下2〜3キロメートルの深さに閉じ込められている場所を、地熱資源と言います。そこから水蒸気を噴き出させ、その力を使って発電するのが、地熱発電です。
良質の地熱資源が見つかれば、このしくみは低コストの基盤電源として利用可能です。
ただし、そのような地熱資源は、火山帯に偏在しています。日本・インドネシア・米国が、三大地熱資源国と言われています。良質な地熱資源は偏在しており、それだけ利用していても、人類が使うエネルギーとしてはまかなえません。
将来的には、地球内部を20〜30キロメートル掘り進む、高温岩体地熱発電を主流にしていく必要があります。
③核エネルギーを活用
核融合を利用してエネルギーを得る「核融合発電」の実現が期待されます。「地上の太陽」と言われるように、太陽が燃え続けてエネルギーを常に出しているのと同じ原理を使います。
米国・中国・日本・欧州などが、開発を進めていますが、実現までに乗り越えなければならない2つの高いハードルがあります。
(1)長時間プラズマを維持できるか
核融合を起こすための環境(1億℃以上の超高温プラズマ)を長時間、安定して維持する制御技術の確立が必要です。
(2)プラスのエネルギーを得られるか
長時間プラズマ環境を維持するのに使う量を超えるエネルギーを核融合から得られないと「発電」の役割を果たせません。
フランスにあるITER(イーター:国際熱核融合実験炉)では、日本・米国・欧州・中国・ロシア・インド・韓国が技術を結集して協働で核融合発電の開発を進めています。
日本は、磁場閉じ込め方式(トカマク型)の技術力が高く、ITER計画の中核を担う貢献をもたらしています。
米国・中国はITERの成果を使いつつ、自国独自でも核融合発電の開発に取り組んでいます。米国は、政府に加えて民間スタートアップの参画もあり、商用化に向けた技術開発でリードしている状況で、そこに中国が急速にキャッチアップしてきています。
日本は、ITERへの貢献に加え、茨城県那珂(なか)市に実験炉「JT-60SA」を運営中です。日本も核融合においては、世界トップクラスの技術を保有していると言えます。

脱炭素を阻む3つの障害
2050年までの脱炭素は――この夢は、人類が本気で取り組めば実現可能と考えています。
ただし、実際には達成できないかもしれません。最大のリスクは、なんといっても、人類が本気で取り組まないかもしれないことです。そのほかのテクニカルな問題も含め、脱炭素を阻む、以下3つの障害があります。
①地球上に安価な化石燃料がまだまだ大量にある問題
安価な化石燃料が莫大に存在することが、自然エネルギー開発を遅らせる最大の障害となっています。
トランプ大統領のように、自然エネルギーを完全否定して、化石燃料をどんどん開発して使い続ければ良いと考えている人が多くいるからです。
原油が枯渇しそうになって、原油価格が急騰すれば、脱炭素の技術開発は文句なく進むでしょう。
ところが、現実には地球上に安価な化石燃料が大量に存在します。可採埋蔵量は、これからもどんどん増えるでしょう。技術革新によって、これまで採掘できなかった深海や、シェール層などからも大量の原油やガスが採れるようになったためです。
日本近海にも、メタンハイドレート(燃える氷)など未開発の化石燃料は、莫大な量が存在します。このような要因があるため、化石燃料が枯渇しそうになることは、当分ないと思います。
②流通コストがきわめて高い問題
自然エネルギーによる発電コストはどんどん低下し、発電コストだけで見ると、今や競争力のある電源となりつつあります。
ところが、流通コストがきわめて高い問題が残っています。流通コストまで含めて低コストとならなければ、化石燃料を本格的に代替することはできません。
もしも太陽光パネルをアフリカの砂漠に大量に敷き詰めれば、低コストの電気が大量に得られます。しかし、それを使う術(すべ)がありません。作られた電気を都市部に運ぶのに莫大なコストがかかるからです。
仮に、送電線網を張り巡らせて、砂漠の電気を都市まで持ってきても、需給調整がうまくいきません。
電気は保存ができない(蓄電池で保存できる量は限られる)ので、発電と電力消費を常に同時同量としなければならない問題があります。需給調整に失敗すると、しばしば停電するという難題に苦しめられます。
これを解決するのが、「水素の活用」です。
自然エネルギーで作る電気で水を電気分解して得られる水素を、運搬・保存する方法です。電気が必要になれば、貯蔵してある水素を燃やして発電すれば良く、排出されるのは水だけです。
ただし、水素エネルギー循環を実現するには、越えなければならない高いハードルがたくさんあり、簡単には実現しないと考えられます。
投資において、水素関連銘柄を対象にしても、成果は得にくいと思います。今は時期尚早と考えています。
③環境問題
持続可能なエネルギー循環社会を作るために進める自然エネルギーの活用ですが、皮肉なことに、必ず環境問題に突き当たります。
風力発電には、重低音公害の問題があります。洋上風力も、漁業資源への悪影響が心配されます。地熱発電も、高温岩体地熱発電も、地盤沈下や地下水への悪影響などの環境問題をクリアできないと前へ進めません。
自然エネルギーで発電を行う地域として人口過疎地が選ばれることが多いですが、それでも人が住んでいる以上、環境対策は大切です。
自然エネルギーの活用は、環境問題をクリアしながら進めることが求められ続けるのです。

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