1. Home
  2. 読書
  3. 片見里足立アフェクション
  4. 入社4ヶ月の新米編集者が、キャリア20年...

片見里足立アフェクション

2026.05.16 公開 ポスト

刊行記念特別鼎談・小野寺史宜 担当編集者 新米編集者

入社4ヶ月の新米編集者が、キャリア20年の作家と編集者歴31年の担当に訊いてみました!小野寺史宜

小野寺史宜さんの『片見里足立アフェクション』が発売になりました。「片見里」シリーズ3冊目となる本作。その成り立ちや、作家と編集者の関係などを、この1月に幻冬舎編集者となったばかりの新米編集者Iが、作家生活約20年の小野寺さん、幻冬舎生活31年目の担当編集Kに尋ねる形の鼎談を行いました。

作家と編集者は、どうやって出会うのですか?

新米I(小野寺さんに)初めまして、編集者4ヶ月目のIです。今、色々な作家さんにオファーしているのですが、打ち合わせをする中で、編集者と作家さんがどういうやりとりをするのかわからないことが多くて結構手探りな状態です。

担当K 企画本だと上司がついていくことも多いけど、作家さんに会う時は一人で行っておいでとしてるので。でも実際私も、他の編集者が作家さんとどういうやりとりをしてるのかは、あまり知らないかも。

小野寺 作家もそうじゃないですか。僕も、他の作家さんが編集者さんとどういうやりとりしてるか、意外とわからないですよね。

新米I お二人の最初の出会いはどんな感じだったんですか?

担当K 初めてお会いしたのは2012年です。小野寺さんの『転がる空に雨は降らない』という作品を読んで、ぜひお仕事ご一緒したいとご連絡ました。

小野寺 子供がいきなり死んでしまう話で、僕はそんなに暗いと思ってなかったんだけど、僕の中では重い方の作品かもしれません。

担当K でもそんな中に切なさと温かさがあって、すごくいいなと思って。新潮社の担当Oさんに小野寺さんのメールアドレスを教えていただきました。

小野寺 Oさんからそういうお話が来たんです、って連絡があって。最初の頃でしたから、めちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。今でも嬉しいですけど。

テーマはどうやって決まるのですか?

担当I それでお会いして打ち合わせします、ってなった時に、すぐにこの坊主の話(『片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ』)に決まったんですか?

小野寺 これはもう、Kさんから「お坊さんで」それで「仕返し物」でって言われて。

担当K 人によると思うんですが、私は作家さんにお会いするときは、ある程度こういうのを書いてくださいと持っていきたいので。その当時キャラクター小説が流行っていて、お坊さんを「なまぐさ」なキャラクターにしてほしいなと思って。

小野寺 多分初めてですね、こういうふうに具体的にこういうのでどうですか、って言われたのは。お坊さんのこと何にも知らないなと思ったけど、面白そうだからやりましょうか、って話になって。

新米I 取材に行ったりはしたんでしょうか。

担当K 今思い出しましたが、どなたかに紹介いただいて、神奈川のお寺まで取材に行きましたね。

小野寺 お若くてきちんとした方でした。

新米I じゃあ、お坊さんは編集者発にしても、相方の草食男子の設定などはどうやって作っていったんでしょうか。

小野寺 僕の小説はほぼ全て一人称で書くので、当然お坊さんとなったらその一人称になるだろうとは思ったんですが、全部お坊さんの一人称もどうかなって考えて、多分もう一人立てた方がいいんじゃないかと思ったんですかね。お坊さんを客観的に見る人がいてっていうんで。徳弥(主人公の坊主)は砕けたキャラクターだったので、一時(もう一人の主人公)は対照的な人にした方がいいかなと、「草食男子」の設定にしました。

新米I 片見里は架空の町ですよね?

小野寺 完全に僕の創造です。東京からこれくらいの距離の町で、駅前にはこんな商店街があって、飲み屋があって、徳弥のお寺はこの辺で……と考えました。

作家は編集者からの提案にどう答えるのですか?

新米I では、2作目(『片見里荒川コネクション』)はどんな感じで決まっていったんでしょうか。

担当K その頃オレオレ詐欺とかが流行ってたので、お年寄りが出てきてちょっとした事件に巻き込まれる話を、ってお願いしたと思います。

小野寺 そうそう。それもまあ、1作目と同じようにもちろん実際そんな酷いことにはならないんだけど。おじいさんをって言われて、僕はシリーズっていう感じで、やっぱり2人立てたかったんです。で、じゃあもう一人はどうするかなってなって、若いヤツがいいなと。孫くらい離れてた方がいいかなって。それで、継男と海平の2人が主人公になりました。

新米I 荒川はどこから……?

小野寺 徳弥と一時は出したかったけど、片見里の話だけじゃなくて東京も絡めたくて。それで、荒川区の路面電車のあたりを描いてみたかったので荒川区に。継男と海平は、片見里出身の2人で、ちょっとした事件があって、徳弥と一時も関わってくるお話にできました。

新米I 担当者から「オレオレ詐欺が流行ってるから、年寄りを素材にした話を書いてほしい」って言われて、その時は持ち帰るわけですよね?

小野寺 流れは当然そうですね。で、持ち帰って考えて。そうやったご提案をもちろん、あ、無理だなって思ったら言いますけど、でもそれは全然無理じゃないって思ったので。さらにちょうどいいなって思ったのは、受け子が年寄りだったらあんまり怪しまれないし、ちょっとありそうだし、と。

プロットは作るのですか?

新米I 一作作るのに何回ぐらい打ち合わせをするんですか?

担当K 人や作品によりけりですが、小野寺さんの場合は最初に設定の打ち合わせでお目にかかって、そのあとは出来上がった原稿についてお目にかかる感じです。

新米I プロットは作られるんですか?

担当K 小野寺さんの場合は、最初に登場人物の名前表があります。 

小野寺 僕、最初に名前を全部バーッと決めちゃうんです。役割が決まってない人まで全部。40人くらいのフルネーム。やっぱり名前をダブらせたくないじゃないですか。

担当K 1回しか出てこない人でもちゃんとフルネームで書かれてて、ルビ(読み仮名)も振られてます。

小野寺 それよく言われるんです。僕、話を進めるだけに都合よく出てくる人っていうのを絶対出したくないんです。出てきた時には、とにかくちっちゃいことでもいいから、何かしら残させたいんです。

担当K その人は、どこか違う場面ではその人の人生があって、その人は生きているってことですよね。

小野寺 はい。それを何となく感じさせられるようにしたいです。

新米I では、3作目もその人物表があって。設定はどうやって決めたんですか?

担当K 3作目は打ち合わせ前に小野寺さんの中で決まっていましたね。洋と央という姉弟がいます、この2人の恋愛の話ですって。そして、1月から12月まで構成は決まっていて、それを口頭で伺いました。

小野寺 同級生の男同士やって、おじいさんと若者やって、女性が出てきてないなっていうのがあって。せっかく女性だから、ちょっと無茶な人にしたくて。そうすると男はちょっと歳の離れた弟で、タイプ的には一時に近い、頭のいい人がいいなと思って。そこに徳弥や一時だけじゃなく、2作目の継男さんや海平も登場して、さらに片見里の新しい人物も登場します。

担当K 構成には特にリクエストすることなく、原稿が上がってきました。私としては片見里シリーズの登場人物たちが大好きなので、みんなが出てきて、お互いを不器用なりに思い合って、この2人を何とかしてやろうっていう感じで。地味ながら読んでいて楽しくて。もうただただ幸せでしたし、登場人物みんながハッピーでありますように、と思いました。

新米I ありがとうございました。次回は僭越ながら私が『片見里足立アフェクション』について著者インタビューをさせていただきます!

関連書籍

小野寺史宜『片見里足立アフェクション』

小さき人生を送る全ての人に、乾杯! 生き方がバカで男運がない姉・洋。 何でもそつないエリートな弟・央。 マチアプと合コンで、それぞれ恋人ができたはいいけれど――。 不器用な二人の“不穏な”恋の行方は? 大切な人を想い合う無骨な情緒が沁みる、長編小説。

{ この記事をシェアする }

片見里足立アフェクション

小さき人生を送る全ての人に、乾杯!

 

生き方がバカで男運がない姉・洋。

何でもそつないエリートな弟・央。

マチアプと合コンで、それぞれ恋人ができたはいいけれど――。

不器用な二人の“不穏な”恋の行方は?

 

大切な人を想い合う無骨な情緒が沁みる、長編小説。

 

ファミレスで、夜景の見えるバーで、八重洲の居酒屋で、結婚式場で……

それぞれの乾杯にそれぞれの人生。

 

惚れっぽく男性に貢ぎがちな姉・洋を、何かと心配するエリート銀行員の弟・央。洋が商社マンの新恋人に浮かれる一方で、央も合コンで出会った女性となんとなく付き合い始める。「もしかして、騙されてる?」――お互いの恋路を気にかける片見里出身の姉弟と、なまぐさ坊主、探偵、公務員……故郷・片見里の面々が織りなす優しい世界。

バックナンバー

小野寺史宜

1968年千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール読物新人賞を受賞。2008年『ROCKER』で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ』『片見里荒川コネクション』『ひと』『食っちゃ寝て書いて』『タクジョ!』『今夜』『天使と悪魔のシネマ』『僕は刑事です』『あなたが僕の父』『言問ラプソディ』などがある。

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP