ぼんやりしているとき、ふと浮かぶその一言——実はあなたの人生を動かす「ヒント」かもしれません。
だからこそ必要なのは、その一言をすくい上げる習慣。ここでは、あなたの中に眠る可能性を動かす、簡単なワークを紹介します。
脳神経外科医である菅原道仁さんが、脳科学的な視点から「脳の余白」をつくる新習慣を提案する『ゆるまる脳 タイパ疲れの時代に効く「脳の新習慣」』(リンク先はAmazonページに遷移します)。同著から本文の一部を抜粋してお届けします。
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アーティストの声を聴くワーク:幸せの種をメモする癖をつける
アーティストの声は、記憶に残りづらい
あなたの中に眠る可能性を動かすワークに進む前に、まずはアーティストの声を拾うテクニックについてお伝えしていきましょう。
まず、アーティストと接するときの基本ルール。
それが、「とにかくメモする」ということです。
ぼーっとしているときは、脳が過去の経験や感情を静かに再編集して、未来に役立てようとしている時間です。
このときにふと浮かんだ言葉や映像は、脳が「自分にとって意味がある情報」を再構成したもの。
そんな、あなたにとって意味ある情報が組み合わさって生まれた、
「今、あれがふっと浮かんできた」
「なんだかあれが気になる」
といったデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)のつぶやきは、あなたの人生にとって価値のあるものがギュッと詰まった、幸せの種のようなもの。
ですから、あなたの中から幸せの種がポロリと湧き出た瞬間に、どんなささいなものであっても、その場でメモして「すくい上げる」行為がものすごく重要になります。
「今思い浮かんだこと、覚えておいて、あとでメモしよう」がNGなことは、あなたも経験からわかっていますよね。
唐突に湧き上がってきた言葉やイメージは、本人にとっても意味がわからないことが多くて、記憶に残りません。だからこそ、すぐにメモする必要があるわけです。

浮かんできたことを「そのまま」メモする
というわけで、自分が幸せに生きられるヒントを逃さないように、突然、ふと思いついたことは、ひとつ残らずメモする癖をつけましょう。
「あの映画が気になる」
「新商品のビール、飲みたい!」
「今年はお花見したい」
メモの形式なんて気にしないで、こんなふうに、ゆるく・短く・感じたままを、ただ書きつけていきます。
そのとき、「これが何の役に立つのか?」なんて、考えなくてOK。
考えると、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)のかすかな声は、たちまちかき消されてしまいます。
頭の中に浮かんできたことを、評価せず、整えず、そのままのカタチで拾ってこられれば、成功です。
「なにこれ?」
「なんの意味もなさそうだけど」
そんなふうに思える言葉ほど、あとで、あなたにとって意味のある種になる可能性もあります。
スマホを「アーティストの受け皿」にする
こうしたつぶやきを逃さないために、いつも持ち歩いているスマホを積極的に「アーティストの受け皿」として活用してください。
文字入力はもちろん、思いついた瞬間に声を吹き込める音声入力機能がついた「Google Keep」や、自分一人だけのトーク画面に書き込めるLINEの「Keepメモ」などは、メモのハードルを下げるのにおすすめのツールです。
ちなみに僕自身は、iPhoneに標準搭載されている「メモ」アプリをフル活用しています。
iCloudを通じてデスクトップのMacとも瞬時に同期してくれるので、「外出先でふと思いついたことをスマホでメモし、帰宅後にPCの大きな画面でゆっくり見返し、アイデアを醸成する」といった使い分けができて非常に重宝しています。
こうしたツールを、あなただけの「自分専用のポスト」にしてみてください。浮かんだことを大切に保管し、あとで見返してあげる。
この小さな「すくい上げる習慣」の積み重ねが、あなたの人生を望む方向へ導く、大きな力になってくれるはずです。

アーティストの声を聴くワーク:アーティストのための「聖域」を用意する
一人で落ち着ける居心地のよい場所を用意
このあと、あなたには、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と向き合うための時間を、ほんの少しだけつくってもらいます。
ただ、その前にしてほしいことがひとつだけ。
「ここなら、一人で落ち着ける」という場所を決めてください。
なぜなら、DMNの自分語りをうまく作動させるには、外界に惑わされない、静かな環境が必要だからです。
というわけで、アーティストとゆっくり話ができる、あなたにとっての「聖域(サンクチュアリ)」を決めておきましょう。
自分の部屋でもいいですし、その一角の落ち着けるスペースでも構いません。お風呂の中とか、ベランダなんかもいいでしょう。
あるいは、車の中や、通勤途中の公園、知り合いのいないカフェというのもいいかもしれません。
「聖域」を選ぶときのポイントは、
●他人に話しかけられない場所であること
●あなたにとって、居心地のよい場所であること
の2点です。
なぜ「居心地のよさ」が重要なのか。それは、脳内の警報装置である「扁桃体」をなだめるためです。
実はアーティスト(DMN)は、扁桃体の影響を強く受けます。
扁桃体が「不安」や「不快」という警報を鳴らしていると、アーティストもつられて、暗い過去の後悔や将来の不安ばかりを紡ぎ始めてしまうのです。
そのため、うるさい、汚い、暑すぎる……といったストレスフルな環境では、せっかく内面をのぞき込んでも、うんざりするようなイメージしか浮かんできません。
だから、扁桃体が上機嫌でいてくれる「居心地のよい場所」を用意できるといいわけです。
そんな場所にはたとえば、座り心地のいいふかふかのクッションを置いたり、キャンドルがゆらゆら揺れる淡い光を灯したり。
うっとりと落ち着けるものを用意できれば最高です。
特におすすめしたいのが、アロマやお香などを用意すること。嗅覚は、脳の中で感情を司る扁桃体にダイレクトにつながっています。あなたが「心地よい」と感じる香りをかぐだけで、扁桃体のトゲトゲした反応を、一瞬でやさしく落ち着かせることができるのです。
具体的には、次のような香りが「聖域」づくりを助けてくれます。
●ラベンダー:
鎮静効果の代表格です。脳の興奮を抑え、深いリラックス状態へと導いてくれます。
●フランキンセンス(乳香):
古くから礼拝などで使われてきた神秘的な香りです。呼吸を深くし、まさに「聖域」にふさわしい静かな心理状態を作ってくれます。
●サンダルウッド(白檀)やヒノキ:
日本人に馴染み深い木の香りは、森林浴をしているときのような安心感を与え、アーティストが自分語りを始めるための「土壌」を整えてくれます。
●ベルガモット:
リラックスしつつも、少し明るい気持ちになりたいときに最適。不安を和らげる効果が高いことで知られています。
もちろん、いちばん大切なのは、あなた自身が「あぁ、いい香りだな」と心から思えるかどうかです。どれほど科学的に効果があるとされる香りでも、あなたが苦手だと感じれば、扁桃体は逆に不快な警告を出してしまいます。
まずはあなたの直感が「好きだ」と告げる香りを、アーティストへの贈り物として用意してあげてください。
外なら、自然が多いところもおすすめです。
さわやかな花の香りや、小鳥のさえずり、風の音などに意識を向けてみてください。そうした感覚的な刺激が、知らないうちに扁桃体を鎮めて、アーティストが安心して話し出せる状態をつくってくれます。
この「聖域」は、なにかトラブルがあってパニックになりそうなとき、自分を取り戻すための「避難所」としても機能します。
自宅とは別に、職場の近くなどにも自分なりのスポットを確保しておくと、人生のタイパはさらに安定していくはずですよ。

アーティストの声を聴くワーク:1日の終わりに「快日記」をつける
DMNの声を拾うための「快日記」とは
これが、STEP2のメインのワークになります。
DMNのつぶやきから、あなたの人生に必要なものを感じとるためのワークです。
何をするのかというと、1日の終わりに、「快日記」をつけてください。
就寝前に10~15分の時間をとって、その日に感じた、自分にとって「心地よかったこと」をメモしてほしいのです。
ちなみに、人が「心地よい」と感じる瞬間にはいくつかのタイプがあります。
たとえば、
①ほっと力が抜けて、落ち着くような心地よさ
②気づいたら集中していて、時間を忘れていた心地よさ
③どちらでもないけど、なぜか印象に残る心地よさ
どんな種類の「心地よさ」でも構いません。
とにかく、「今日はあれが、心地よかった」ということを思い出して、メモしてください。
短くても、断片的でも、単語ひとつでもOK。
そのメモの中に、あなたがこの先、生きていきたい、人生のヒントが眠っていることがあります。

日記を書くときのポイントは、浮かんできた内容の良し悪しを評価したり、分析したりしないこと。
意味がないつぶやきでも、意味がわからないつぶやきでもOKです。
あなたの中の価値ある情報が詰まった種を、そっと拾い集める感覚で、できるだけそのまま拾い上げてください。
書けない日は、がんばりすぎのサイン
もし、何も書けない日があったとしても、自分を責める必要はありません。
それは「『快』を感じる余裕がないほど、心が動員されていた」という脳からのサインです。交換手であるサリエンス・ネットワーク(SN)やマネージャーのセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)が、ヘトヘトに疲れているのでしょう。
そんな日は無理にひねり出そうとせず、「今日はゆっくり休もう」と意識を切り替えて、脳をいたわってあげてください。
ワークは2~3週間、やってみる
この「快日記」のワークですが、できれば2~3週間続けてください。
あなたが「心地よい」と思う瞬間のつぶやきを、ある程度、溜めるのがポイントだからです。
「なるほど、つぶやきが溜まったら、そこから自分のやりたいことや、人生の目的を探すわけか」
そんなふうに思った人もいるかもしれませんが、ちょっと違います。
実は「快日記」から浮かび上がってくるのは、ハッキリとした「人生の目的地」ではなく、あなたがこれから歩むべき「人生の方向性」です。
この方向性をゆるく決めてあげることで、脳は安心して、望む未来へと進んでいくことができるようになります。
逆に、「人生の目的地はここ!」としっかり決めてしまうと、場合によっては、脳が負担に感じて、先へ進むのがおっくうになってしまうケースがあるんですね。
特に、
「自分のやりたいことが、今はまだわからない」
「自分のやりたいことをしていると思っていたけど、最近、このままでいいのか疑問を感じている」
そんな人は、人生の目的地を明確化するよりも先に、まず、人生の方向性を明確にしたほうが、そちらへ向かって、とりあえず歩き始めることができるようになります。
ですから、ぜひこのワークをしばらく続けてほしいと思います。
このワークを通じて、脳のアンテナを「自分の心地よさ」に向け直す。
そうやって、自分の中の「好き(快)」に気づくこと。
これが、自分にログインする方法のひとつです。
この習慣は、あなたの内なる望みとつながり直すための、確かな入り口になってくれます。
「ぼんやりする時間」は、決して無駄ではありません。
脳の中では、その空白にこそ、アーティストが大切な自分の物語を紡いでくれています。
STEP1でつくった「脳の余白」を、この「自分との対話」に使う。これこそが、あなたが望む人生を歩き始めるための、もっとも効率的なやり方なのです。
では、拾い上げたアーティストのつぶやきを、どう活かしていくか。
そのためには、もう少しだけ別の角度から「ぼーっとする」を行う必要があります。
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ゆるまる脳 タイパ疲れの時代に効く「脳の新習慣」

倍速で消耗する人生、そろそろ手放そう。
パフォーマンスの質を決めるのは、「速さ」ではなく「ゆるめ方」!
「がんばっているのに、なぜか成果が出ない」
「タイパを追うほど、心も体も消耗していく」
……そんな“タイパ疲れ”を感じていませんか?
じつは、私たちの脳内には、4人のキャラクター(心配性の「おかん」、情報分析と注意の意識の使い手「交換手」、行動の司令塔である「マネージャー」、自分らしい生き方を模索する「アーティスト」)がいて、その役割分担がうまくいくことで毎日の選択や行動がなりたっています。
ですが、残念なことに効率を求めすぎる現代人はこの4人のバランスが大きく崩れてしまっています。
それが、タイパを追うほど虚しさが募る「脳のパラドクス」の正体なのです。
本書では、脳神経外科医である著者が、脳科学的な視点から「脳の余白」をつくる新習慣を提案します。
それは単なる休息ではなく、人生の処理能力を劇的に引き上げるための戦略的な「ゆるめ方」です。
スマホ依存から脳を守り、五感を研ぎ澄ませ、ぼーっとする時間で「自分を紡ぐ」――。
脳をゆるめて“余白”をつくれば、人生は最短距離で好転し始めます。
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