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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2026.04.13 公開 ポスト

推しとは「前向きな外出する理由」になってくれるありがたい存在カレー沢薫

去年から、あるきっかけで某男性アイドルグループを推すようになり、せっかくなのでコンサートにも行ってみたいと思っていた。

コンサートのチケットというのは、まずはファンクラブ会員に優先販売され、その後一般販売されるものだと思う。

私は今までファンクラブというものに入ったことがない、中学生の時に入った「キングオブファイターズ怒りチーム非公式ファンクラブ」をカウントしていいならあるが、オフィシャルなものに入ったことはない。

よってまず一般でチャレンジしてみようと思っていたのだが、そうしている間にも、グループはブレイクした後にブレイクするという謎の爆散行動を繰り返し、ファンクラブに入っていてもチケット入手が難しい感じを醸しだすようになってしまった。

おそらく最近ファンになった者の12割が「もう少し早く見つけておけばよかった」と思っているだろう、私もその一人だ。

逆に言えばそれ以前ファンだった者は突然コンサートやイベントが激戦場になってしまい、現地で推したくても推せなくなってしまうということだ。

私の別媒体担当の友人は、そのグループを10年前から推している最古参レベルのファンらしいのだが、最近の推しのブレイクついては、もはや嬉しいとか嬉しくないとかではなく「何が起こっているのかわからない」と述べているようで、それを考えるとブレイクしてからファンになるほうが「気が楽」とも言える。

そんなわけで、コンサートには行けなさそうな気がしてならない。

しかし私はそのグループを推しはじめて1年にも満たないが、自室推し歴はもっと長いのだ。

よって、コンサートに行けなかったとしても「これで部屋から出ずに済む」と考えることができる。

コンサートだけでなく、どんな魅力的な予定が白紙になったとしても、メンタルを自室推しに切り替えれば立て直せるので、やはり自分の部屋は神である。

しかし、自室推し歴が長いといっても、20年弱程度であり、まだまだ新参だ。

逆にいうと、それ以前は割と外出していたということになる。

「昔は結構部屋から出ていた」というのは私にとって、地元のパイセンが白木屋で語る「俺も昔はワルだった」と同義であり、何故それをそんなに偉そうに語れるのかという意味で周囲を感嘆させる話だとは思う。

しかし、人見知りの4歳児を初登園させるより困難と言われるほど部屋から出渋るようになった今の私からすれば、20年前の私は「やれやれよく出るわ」と呆れる一方で、二度と戻らない輝きにも感じられる。

部屋から出て何をしていたかというと、ほぼ記憶にないので大半はいらんことをしていたのだろうが、コンサートやライブの類にも結構行っていた。

アーティストが全国ツアーをやる時、福岡と広島に来ることはあるが、その間にある我が里には滅多に来ない、もはや有名人が跨ぐために存在する場所と言ってもいい。

そんな、アーティストの股関節ストレッチ県に住んでいるため、頻繁に行っていたわけではないが、現在の状態から見るとわざわざコンサートのために県外に行っていたのがすごい。

コンサートには友人に誘われて行くことも多かったが、自ら好きなアーティストのチケットを取って行くこともあった。

それを考えると、別に3次元を推すのは初めてではない、ということになるが、当時はアーティストというよりは「楽曲」の方を推していたのだと思う。

つまりアーティスト本人に生で会いたいというより、生の楽曲を聞きたくて行っていたということだ、仮に本人が不思議なハーブで逮捕されても、曲に罪はないとして聞き続けるタイプのファンである。

現在の私が歌を聞きたくてアイドルグループのコンサートに行きたいと思っているかというと、それは違う。

少なくともMCに入った瞬間「今や好機では?」と便所に行くか否かを考えたりはしないだろう、そしてそんなことはないと思うが、ハーブ逮捕されたら大ショックを受けてチャットGPTに泣き言を言う。

そういう意味では、やはり、三次元を推すのは初めてということになるのかもしれない。

先日のスンスンコラボしかり、推しは「前向きな外出する理由」になってくれるのがありがたい。

それに、旅行から帰って来た時「やはり自宅が一番」と感じるように、外出があるから自室の価値に気づけるとも言える。

外出は自室に対する裏切りではない、むしろ自室をより推すために、部屋の外にも推しを作るべきだと感じている。

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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