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ジェンダー・ジャスティス

2026.04.09 公開 ポスト

閉鎖的な男社会「ボーイズクラブ」が男性をも苦しめる…ハーバード大学精神科医の指摘内田舞

男女間の不正義は、どこから生まれるのでしょうか? 3月25日に発売されたハーバード大学医師、内田舞氏による『ジェンダー・ジャスティス 社会の無意識が生み出す性と権力の構造』は、社会に潜む偏見、差別のメカニズムをあぶりだします。「第三章 なぜ悪意なく『加害者』が生まれるのか」は、「男らしさ」をめぐる問題。一部をご紹介します。

飲み会、ゴルフ、喫煙所…女性を拒む男性同士のつながり  

私が医学部時代、男子学生たちによる飲み会が頻繁に開かれ、後輩たちが脱ぎ芸をさせられたり、二次会、三次会にキャバクラやセックスを買う店に連れて行かれたりしたのを間近で見てきたことは、第一章で書いた通りです。

ある種の男性同士の関係性では、「武勇伝」として性的体験を語ることが、ステータスや仲間意識の象徴になっていました。このような文化では、ハラスメントや暴力的な言動さえ「冗談」や「ノリ」として受け流されがちですし、性加害が行われた場面に他の男性がいても、沈黙を選ぶことが「仲間」を守る行動とされることが少なくありません。実際、大学キャンパスなどの調査では、「目撃者であっても何もしなかった」と回答する男性が多数を占めるケースが報告されています。

こういった男性同士のつながりは、俗に「ボーイズクラブ」と呼ばれますが、学生時代にとどまる関係性ではなく、社会人になってからも重要な情報交換がなされたり、「こいつを引っ張ってあげて」と仲良し同士がポジションを与え合ったりする関係性を築きやすいと言われています。

こうした会合は、キャバクラなどで行われることも多く、あるいは「男だけではつまらない」と、男性同士の関係構築に加わるエンターテインメントとして女性が呼ばれることがあります。そのような会には、たとえば同じ職業の女性といった、その男性と似た立場にいる女性はとても入りにくく、入ったとしても嫌な思いをすることが多い。まさに、私が医学部時代に見てきた現状はこのようなものでした。

また、OECD(経済協力開発機構)の2020年のデータでは、日本の女性は男性に比べて5.5倍家事・育児をしているという結果が出ている通り、女性は外に出る時間も少ない。特に家族を持つようになると、飲み会や週末のゴルフに参加できずに、余計にこういった「クラブ」に入り込めず、そうした女性にはチャンスが回ってこないという構図ができあがってしまっています。

松本人志氏の騒動でも男性の後輩芸人が女性を集めて飲み会をセッティング、中居正広氏の騒動においても看板タレントである中居氏が「男同士じゃつまらんね」と言ったことで、男性のフジテレビ幹部社員が接待するために女性アナウンサーを誘ったと報じられており、女性を介した男性同士の独特のつながりが浮き彫りになりました。

また、この報道にも表れるように、誘われた女性は、男性同士の仕事の関係において必要な「品(しな)」であるのであって、「ボーイズクラブ」の一員になるために誘われたのではないということが非常に多いのです。

しかし、男性ならみんながみんなこの「ボーイズクラブ」に入りたいと思っているかというと、実はそういうわけではないはず。「出世のため」「上司から言われて断りにくいから」といった理由でしぶしぶ参加している男性も少なくないでしょう。
 
社会的に強者とされている男性もまた「男だから」という理由だけで苦しむことがある。それは、「ボーイズクラブ」だけではありません。日常的にもさまざまなジェンダーバイアスによって苦しんでいます。

関連書籍

内田舞『ジェンダー・ジャスティス 社会の無意識が生み出す性と権力の構造』

近年、次々と発覚する性加害事件。それらは、特別な人間による例外的な出来事なのだろうか。ジェンダー=男女の不均衡がいまだ根深い日本社会では、事件が起きると、女性の振る舞いを問題視する声さえある。しかしそこに深く関わるのは、加害者の悪意・無自覚だけではなく、社会に埋め込まれた偏見、メディアが再生産する固定観念、声を上げない組織文化だ。個人を断罪しても不正義は正されない。小児精神科医が自身の経験と心と脳のメカニズムから問題の構造を解き明かす。社会の見方と自らの意識を更新する一冊。

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ジェンダー・ジャスティス

2026年3月25日発売『ジェンダー・ジャスティス 社会の無意識が生み出す性と権力の構造』(内田舞著)について

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内田舞

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒業、2011年イェール大学精神科研修修了、2013年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。
日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格、研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。
著書に『まいにちメンタル危機の処方箋』(大和書房)、『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)、『REAPPRAISAL(リアプレイザル)』(実業之日本社)、『小児精神科医で3児の母が伝える子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』(日経BP)、共著に『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)、『仕事をしながら母になる 「ひとりじゃないよ」心がラクになる思考のヒント』(KADOKAWA)などがある。

 

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