「リブート」(TBS)の公式ホームページを閲覧すると、このドラマの紹介には“エクストリームファミリーサスペンス”と銘打たれていた。
“エクストリームファミリーサスペンス”……はて?
さすがに聞いたことのないジャンルに、ドラマの放送開始前は戸惑いを隠せなかった。
さらには“顔を変えて他人に成り代わる”という大胆な設定に「そんなありえない設定……日本の民放ドラマで大丈夫だろうか?」という不安を抱いたのを今でも覚えている。
しかし「リブート」を完走した視聴者ならお分かりの通り、そんな不安は杞憂でしかなかった。
“儀堂歩/早瀬陸”という二役を演じ分けた鈴木亮平氏、そして“幸後一香/早瀬夏海”を演じた戸田恵梨香氏。
彼らの高い演技力と成り代わりの“動機と過程”を丁寧に描いた脚本によって、その成り代わりは視聴者に違和感を与える隙を見せない説得力を帯びていた。
そしてピンと来なかった“エクストリームファミリーサスペンス”という言葉の意味も、直訳でどうこうではなく今ではその言葉が腑に落ちる感覚だ。
どの登場人物の裏にも守るべき“家族”がいて、皆それぞれの正義のもと戦っていたのだ。
誰もが自分を正義だと信じて……。
家族を守るということ
裏組織のトップに君臨し続け、家族を人質に取ることで陸(松山ケンイチ)と夏海(山口紗弥加)の人生を奪った合六(北村有起哉)。
彼も最初は自身が守るべき“愛する家族のため”に働いていたのだろう。
家族の幸せのために仕事をしていく中で、いつからか裏社会への扉を開けてしまったのではないか。
そして政治家の真北弥一(市川團十郎)と繋がり、弥一が総理になった暁には「減税と少子化対策」に働きかけるという期待から闇献金をしてきた合六。それもまた自身の、そして世の中の家族を持つ人々の幸せのためだったのではないだろうか。
そのやり方を擁護する気は毛頭なく、合六の掲げていたものは捻じ曲がった大義でしかないが、彼が描く幸せのビジョンの中心には常に家族の存在が強くあったと感じる。
そして家族との絆、愛がどれほど強くて尊いものか……自身もよくわかっているからこそ、合六は家族を人質に取るやり方で早瀬家らを支配してきたのではないだろうか。
しかしそれは最後、自身に返ってきた。
自身の命か、家族の命か……。
選択を迫られた合六は迷わず、そして嗚咽するほど懇願して「家族を助けてください」と声を振り絞った。
あの瞬間、合六は純粋に家族を愛する1人の強い男に戻ったように見えた。
生きて償うにはその代償があまりにも大きすぎた合六。
もう二度と家族とは会えずとも、自分ではなく家族が幸せに生きることを選択した。
家族のためと思ってやってきたことが、いつしか家族を危険に巻き込む道へと繋げてしまったとは……。なんとも皮肉なものだ。
「金や権力で縛られている連中より、小さな家族 必死で守ってるやつの方が強い」

冬橋(永瀬廉)が合六に放ったこの言葉はまさに、この「リブート」という物語の顛末を象徴している。
“金と権力で固められた力”なんてものは、“早瀬家の愛と絆の力”には到底敵わなかったということだ。
これが観たかった! 早瀬家、念願の再会
霧矢(藤澤涼架)がその罪を全て被り、冬橋がNPO法人「しぇるたー」を守り抜くとなってから5年と8ヶ月後。
冬橋は顔を変えマチムラ(北村匠海)という男に“サプライズリブート”をしていた。
骨格が近ければ……みたいな理由はあるにせよ、結局イケメンはイケメンにリブートするのだなと。
私の中に眠るほんの少しの希望が打ち砕かれたが、まあそんなことはいい。
最終回、「実はまだリブートしていたやつがいるのでは?」と散々言われていたが、まさかこれからリブートする者がいるとは、誰もが予想できなかっただろう。
マチムラは、刑期を終え出所した夏海をハヤセ洋菓子店へと導き、夏海は家族と再会を果たした。
視聴者の誰もがこの再会を望んでいたに違いない。
そして、一香時代のあの時「夏海さんのだから」と口にしなかったハヤセショートのいちごを頬張る夏海。

これほど幸せな光景が最後に待っているとは……。この過酷な道中にはとてもじゃないが思えなかった。
しかし9話で夫婦に戻ってからは違った。
どんなに過酷な状況でも夏海は「もう怖くないよ、あの人が一緒だから」と決して怯まなかった。
早瀬も決して諦めずZippoをナイスキャッチしたりと奮闘をした。
華麗なタックルなんて何回決めただろうか。
これも全て夫婦の、家族の愛と絆が生み出した力から放たれたものだろう。
そしてその力は、お互いの愛のベクトルが向かい合ったものたちだけに与えられるもののように思えた。
対照的だったのは監察官の真北正親(伊藤英明)だ。
彼自身に落ち度はないだろうが、妻の葉月(小橋めぐみ)が兄の弥一と浮気をしていたという最悪の内情が明らかになった。
残念ながらこの夫婦には愛の力など存在しなかったといえる。
しかし、正親には同じ志で動く早瀬陸という仲間の存在があった。
“クジラを倒す”という同じ方向を向いたベクトルを持つ正親と早瀬陸。
家族同志の愛から生まれるその力と形は違えど、その2人の絆から生まれた力がクジラを逮捕へと導いたのだろう。
正親の心の内を察すると、とても胸が痛い。
だがどんな人も生きている限り“リブート(再起動)”できるのだ。
私も34年の人生の中で、何度「終わりだ」と思ったことだろう。でも何度もやり直してきた。立ち上がってきた。
人生はそんなことの繰り返しのように思える。
あとそう簡単に人生は終わらない。
よく「社会のレールから外れる」なんて言葉を聞くこともあるが、レールから外れたとしてもその方が生きやすい場合もある。
私はそうだった。
もし外れて居心地が悪かったら、また戻ればいい。
顔こそ変えなかった正親も、まさに再起動……。新たな人生にリブートしたと言えるだろう。
そうやって人生は“リブート”をし続けて日々生きてきたのだなと実感した。
顔を変えて他人に成り代わるという壮大な設定の中で普遍的な家族愛を描いたこの作品は、顔が違えど心と心で繋がり合う親子の絆を最終回に向けてダイナミックかつ丁寧に描ききった。
そして視聴者の日常の中にある大なり小なりの“リブート”にも、このドラマは勇気と希望を与えてくれたことだろう。
「リブート」という作品を生み出してくださった製作陣に心からのリスペクトと感謝を。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBS 日曜劇場『リブート』( 毎週日曜夜9時~)
出演:鈴木亮平、戸田恵梨香、永瀬廉(King & Prince)、蒔田彩珠、中川大輔、藤澤涼架、与田祐希、上野鈴華、藤田ハル、矢崎滉、松山ケンイチ、野呂佳代、塚地武雅(ドランクドラゴン)、津田篤宏(ダイアン)、伊藤英明、山口紗弥加、池田鉄平、酒向芳、黒木メイサ、原田美枝子、北村有起哉
プロデューサー:東仲恵吾
協力プロデュース:國府美和
脚本:黒岩勉
演出:坪井敏雄、田中健太、元井桃
音楽: 大間々昴、木村秀彬
制作著作:TBS
主題歌:Mr.Children『Again』(TOY’S FACTORY)
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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