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銀行の本店はなぜ仰々しいのか?

2026.04.09 公開 ポスト

投資信託とは何か? 仕組み・リスク・資産運用会社の全体像鈴木雅光(金融ジャーナリスト)

銀行の本店はなぜ、あれほど仰々しいのか。なぜ銀行は儲かるのか。証券会社や保険会社は、本当に顧客本位で動いているのか――。私たちの生活に深く関わる金融の世界には、知っているようで知らない“仕組み”と“裏側”があります。

そんな金融業界のリアルを解き明かすのが、金融ジャーナリスト・鈴木雅光さんの著書『銀行の本店はなぜ仰々しいのか? 金融業界の謎』。本書では、銀行・証券・保険といった身近な金融機関の構造や慣習、そして不祥事が繰り返される背景まで、豊富な知見と取材をもとにわかりやすく解説しています。本記事では、その一部をご紹介します。

*   *   *

そもそも「投資信託」ってなに?

「資産運用会社」というと、かなり大雑把なくくりになってしまいますが、誰の資産を運用するのかによって、いくつかのカテゴリーが存在します。

日本の場合だと、個人を対象にして資金運用を行う「投資信託」と、年金基金など機関投資家の資金運用を受託する「投資顧問」とに大別され、投資顧問のなかには、運用アドバイスのみを行う「投資助言・代理業」と、お客さんから資金を預かり、自分たちの判断で運用を行う「投資運用業」があります。

投資信託と投資顧問の違いですが、投資信託は不特定多数の人たちを対象にしたファンドを組成し、そこにお金を集めて運用します。対して投資顧問の場合は、運用会社とお客さんが一対一で契約を結び、特定のお客さんのために運用サービスを提供します。

したがって、投資顧問から投資運用業のサービスを受けるためには、運用資産の額も億単位でなければなりません。この点、投資信託は不特定多数のお客さんから集めたお金でファンドを組成し、それを運用するため、お客さん一人一人が拠出する金額は、少額で済みます。実際、今ではインターネット証券会社で積立投資する場合の最低購入金額は、1000円というところが大半を占めています。

極端な話、毎月1000円ずつ積み立てるだけで、専門家による資産運用サービスを受けることができるのです。これが投資信託の最大のメリットといってもよいでしょう。

投資信託は「資産運用会社」「信託銀行」「販売金融機関」の三者間で回る

改めて投資信託の仕組みを説明したいと思います。

投資信託は、それぞれ異なる役割を担う「資産運用会社」「信託銀行」「販売金融機関」の三者によって構成されます。

資産運用会社は、ファンドを企画・組成して、不特定多数のお客さんから集まった資金の運用指図を行います。野村アセットマネジメント、三菱UFJアセットマネジメント、フィデリティ投信など、日本国内だけで79もの資産運用会社があります。

次に信託銀行。投資信託の仕組みにおいては「受託銀行」という言い方をすることもあるのですが、信託銀行はファンドの組入資産の管理に加え、資産運用会社からの指示を受けて、ファンドの組入資産の売買注文を執行する役割を担っています。

3番目が販売金融機関です。販売金融機関は証券会社や銀行がメインです。ファンドの販売窓口になる他、購入代金や解約金、償還金、分配金など、お客さんとの間で行われる金銭の授受を代行します。

お金の流れで言うと、お客さんがファンドを購入した代金は、販売金融機関を通じて信託銀行に送金され、そこで管理されます。その管理されたお金の運用指図を、資産運用会社が行うという形です。

2025年7月末現在、日本国内で設定・運用されている投資信託の本数は5796本。運用資産の総額は261兆343億4600万円です。

一時期はバブル崩壊の影響を受け、投資信託の運用成績が大幅に悪化しました。特に不振だったのは、日本全体が金融不安に覆われた2003年で、同年4月の純資産総額は34兆3732億200万円でした。

この22年間で、投資信託の運用資産の規模は7・6倍にまで成長したことになります。そこを見れば、日本における資産運用ビジネスは、日本の金融業界において数少ない成長分野と考えられなくもありません。だから、この261兆円を狙って、79もの資産運用会社がひしめき合っているのです。

これは、バブルピークの頃の話ですが、日本における資産運用会社、特に個人を対象にした投資信託を設定・運用していた資産運用会社の数は、10社を少し上回る程度でした。バブル崩壊後、日本経済は「失われた30年」を経験したわけですが、この間に資産運用会社の数は8倍近くに増えていたのです。

投資信託の種類とリスク なぜ長期投資が前提なのか

こうした資産運用会社が設定・運用する投資信託には、実にさまざまな種類があります。ファンドに組み入れられる資産で分類すると、日本の株式・債券・短期金融資産、海外の株式・債券・短期金融資産、金などのコモディティ(商品)、不動産など、多岐にわたります。

なお、海外資産に投資する投資信託にも幅広いタイプがあります。全世界の株式や債券に分散投資するファンドもあれば、米国・オーストラリア・中国・インドなど、特定の国に絞って投資できるファンドも存在します。

また、リスクとリターンの観点で言えば、MRF(マネー・リザーブ・ファンド:証券会社での余剰資金を一時的に運用する超低リスクのファンド)のように元本割れリスクを極めて低く抑えた、預貯金に近い性質を持つものもあれば、株式を100%組み入れて運用する、値動きの大きなファンドもあります。

ちなみに投資信託は預貯金とは違い、元本や利率の保証はありません。投資信託の日々の値段のことを「基準価額」と言うのですが、基準価額は値上がりするだけでなく、値下がりすることもあります。マーケットが大荒れになると、それこそ投資した金額が半分になってしまうケースもあります。

とはいえ、これは長年にわたって投資信託を見てきた経験から申し上げますが、長期間保有し続けられれば、一時的に大きな評価損を被ったとしても、時間の経過と共にマーケットが徐々に回復し、購入時の基準価額に戻る確率は、決して低くありません。

「投資信託を買って損をした」とおっしゃる方の多くは、基準価額の急落に耐えられずに解約し、評価損が確定してしまったという方で占められています。

しかも、そういう人ほど金融機関から勧められるままに、損失が生じた時に精神的に耐えられなくなるほど大きな金額で購入しています。

投資信託は、自分が許容できるリスクの範囲内で購入し、長期間にわたって保有できるのであれば、比較的リーズナブルなコストでプロの運用力を取り入れられる、優れた金融商品のひとつであることを、まずお伝えしておきたいと思います。

激変する運用業界! かつての大手4社はどうなった?

前述したように、日本国内には79社の資産運用会社が存在しています。それらを資本系列によって分類すると、伝統的な証券会社系、銀行系、保険会社系、外資系、そしてそのいずれにも属さない「独立系」に大別できます。

証券会社系には、野村アセットマネジメントと大和アセットマネジメントがあります。かつてはこれに加えて山一證券投資信託委託、日興アセットマネジメントがあり、大手4社などと言われたのですが、山一證券投資信託委託は、親会社である山一證券の破綻後、社名や資本関係が変更され、現時点では三菱UFJアセットマネジメントに統合されました。

また日興アセットマネジメントも、かつての親会社は日興證券でしたが、同社が三井住友フィナンシャルグループの傘下になったことから、自動的に同グループ入りしたものの、現在はSMBC日興証券から分離独立し、三井住友トラストグループの傘下にあり、2025年9月に「アモーヴァ・アセットマネジメント」に商号を変更しました。

他にも、かつては準大手証券といわれた新日本証券、勧角証券、三洋証券、岡三証券、和光証券などがそれぞれ資産運用会社を持っていましたが、各証券会社が破綻したり、統合されたりしたことによって、社名が残されている準大手系はSBI岡三アセットマネジメントのみになりました。それも今ではSBIホールディングスの傘下にあります。

崩れた“証券会社主導” 資産運用会社の勢力図の変化

かつて投資信託を運用している資産運用会社は、証券会社系しかなかったのですが、現在はむしろそれ以外の資本系列にある資産運用会社ばかりで、伝統的な日本の証券会社系の資産運用会社は、野村アセットマネジメントと大和アセットマネジメントのみになっています。

銀行系は三菱UFJアセットマネジメントや、アセットマネジメントOneが該当します。

三菱UFJアセットマネジメントはその名のとおり、三菱UFJフィナンシャル・グループ系列ですし、アセットマネジメントOneはみずほフィナンシャルグループ70%、第一生命ホールディングス30%という経済的持分比率のため、銀行系であり保険系とも言えるのですが、やや銀行系寄りというところでしょうか。

運用資産の額で言うと、ここまで触れた野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、アモーヴァ・アセットマネジメント、三菱UFJアセットマネジメント、アセットマネジメントOneが5強といったところです。

ちなみに公募投資信託の運用資産の規模が大きい順に並べると、次のようになります。

1位 野村アセットマネジメント……75兆7340億円

2位 三菱UFJアセットマネジメント……47兆7561億円

3位 大和アセットマネジメント……37兆7745億円

4位 アモーヴァ・アセットマネジメント……34兆8836億円

5位 アセットマネジメントOne……17兆348億円

数字は2026年1月末現在のものです。こうして比較すると、野村アセットマネジメントが断トツであることがわかりますが、銀行系である三菱UFJアセットマネジメントが2位に入っているところは、かつての資産運用会社の序列が大きく崩れたことを意味しています。

外資系では米国のフィデリティ投信が最も運用資産が多く、6兆2482億9900万円です。ちなみに外資系の場合、本国の運用資産はこれよりもはるかに多く、ここでの数字はあくまでも日本法人のものです。

その他、外資系だとブラックロック・ジャパンの6兆869億6700万円、アライアンス・バーンスタインの5兆9396億800万円、インベスコ・アセット・マネジメントの3兆3242億3800万円、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの2兆9192億4500万円と続きます。

独立系の現実 直販モデルはなぜ消えつつあるのか

そして独立系ですが、これは前出の各資産運用会社のように、金融機関との資本関係を持たないところの総称です。

その嚆矢はさわかみ投信で、運用資産の規模は4221億3300万円。鎌倉投信も大半の資本を創業者が出しているので、独立系といってもよいでしょう。

ただ、かつては独立系だったけれども……というところもあります。

レオス・キャピタルワークスは現在、SBIホールディングス傘下ですし、コモンズ投信も議決権の20%は静岡銀行にあります。セゾン投信はもともとクレディセゾン資本100%で設立された資産運用会社でしたが、現在はクレディセゾン60%、日本郵便40%の出資比率で運営されています。

ちなみに、かつても含めて独立系と認識されている資産運用会社は、銀行や証券会社といった販売金融機関に頼らず、当初は資産運用会社自らが自社運用ファンドを販売する「直接販売(直販)」というスタイルを取っていました。

しかし、昨今では純粋に直接販売のみという独立系投資信託会社は、さわかみ投信くらいになってしまいました。

なお、新興の資産運用会社である、なかのアセットマネジメントは、議決権こそ特殊株式の発行により創業者が50%を握ってはいますが、他の出資者は第一生命ホールディングス、ソニーフィナンシャルグループ、スパークス・アセット・マネジメント、楽天証券ホールディングスという金融機関です。したがって、独立系というよりも、金融機関系といったほうが相応しいでしょう。

以上が日本国内で投資信託の設定・運用を行っている資産運用会社の全体図です。

ところで、ここであえて「資産運用会社」と言っているのは、かつてのように個人から集めたお金を運用する投資信託委託会社と、年金基金など機関投資家の運用を受託している投資顧問会社の垣根が取り払われ、ひとつの資産運用会社で両方の運用が行えるようになっているからです。

たとえば、かつては投資信託の運用を行う野村證券投資信託委託と、機関投資家の運用を行う野村投資顧問は別組織でしたが、今は野村アセットマネジメントとして統合され、両方の資金が運用されています。

関連書籍

鈴木雅光『銀行の本店はなぜ仰々しいのか? 金融業界の謎』

銀行や証券、生命保険、ゆうちょ。これらと無縁に生活している人は、今やほとんどいないだろう。だが、その仕組みや実態について疑問を抱いたことはないだろうか。銀行の本店はなぜ、あれほど仰々しいのか。メガバンクは他行を吸収合併し、近年では通信会社との業務提携も加速させている。だが、それらは果たして本当に成功しているのか。コンプライアンスに人一倍厳しいはずの金融業界で、なぜ不祥事が後を絶たないのか……。金融業界の“裏側”を深く知ることで、世の中を見る解像度が劇的に上がる一冊。

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鈴木雅光 金融ジャーナリスト

金融ジャーナリスト。JOYnt代表。一九六七年生まれ。一九八九年岡三証券入社。その後、金融専門紙記者を経て、投資信託データベースを扱う会社に入社し、投信業界を中心に取材。二〇〇四年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作にも関わっている。

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