美容ライター&コラムニストの佐藤友美(さとゆみ)が、きたるべき50代を、なるべく明るく楽しく最小限の痛手で迎え入れるために、尊敬する先輩や頼もしい識者の方々に話を伺いながら右往左往するコラムです。前回「シャンパンと括約筋」はこちら!
恋の数だけ膀胱炎
お付き合いする殿方が変わるたびに、膀胱炎を発症する人生を過ごして参りました。
何をカマトトぶってと言われるかもしれないけれど、相手の目の前でお手洗いにいくのが、とにかく恥ずかしいのだ。
お相手が寝静まった丑三つ時にそーっと抜け出してトイレ行くのが続くと、だいたい膀胱炎になる。
病院の先生も、ああ佐藤さんですね、いつものやつ処方しておきますね、となる。恋の数だけ、膀胱炎になってきた。
と、何が言いたいかというと。
本来、それくらい、“下(しも)”関連の話題に対しては、奥ゆかしいのである。
「エロは書いても、シモは書かない」
そう宣言してきた、奥ゆかしく恥ずかしがりの私(自分で言うな)が、ですね……。
大学時代の素敵な先輩たち(メンズ)3人と10年ぶりに(オンラインで)飲むことになったときの話をしていいでしょうか。
かつて、ほんのり憧れていた、そして今もダンディで素敵な先輩たちを前にして、なぜ私が、“下”も“下”であるアンダーヘアについて熱弁するハメになったのか。
なぜ、画面越しに「VIO脱毛の需要」について力説することになったのか、について語りたいと思う。
上下のヘアカラー
はじまりは、私よりだいぶ若いライターの友人と話をしていた時のことだ。
「さとゆみさん、介護脱毛って知ってます?」
と、聞かれた。
うん、なんか聞いたことがある。VIOを脱毛すると、介護する人が楽になるという話だよね。
「でもなー、痛そうなんだよね。普通のVラインでも痛かったもん」
と答えると、
「だけど、毛が白くなると、脱毛の機械が反応しなくなるって言うじゃないですか。そろそろやっといた方がいいのかなと思って」
と彼女は言う。
たしかに、レーザー脱毛は黒い毛にしか反応しないと聞いたことがある。でも、白髪? アンダーに? え? 私たち、まだそんな年齢じゃなくない?
と、思ったわけです。
彼女は続ける。
「私、先輩の男性コピーライターに言われたことがあるんですよね。『キミもそのうちあちらの毛に白髪が混じってくるから。そしたらちゃんとケアした方がいいよ。あれは、千年の恋も冷める』って。」
な、なるほど。そうか。そういうものなのか。
当時45歳だった私、頭髪の方の毛に関しては、年齢のわりに、白髪が少ない方だと思う。
だけど、下半身に関しては、気にしたこともなかった。
で、家、帰って点検しましたよね。
ずーーーーーーーーーーーーん。
はじめましてこんにちは。
まさか、こんなところで会うなんて。
思ってもいなかったよ、ダーリン。
いや、私がはじめましてって思っただけで、あなたはずっとそこにいたのね……。
って、嘘でしょ!!
いや、頭髪の方は、どう対応すればいいか、わかる。長年美容ライターやってきたから、このあたり、詳しい。
白髪は抜いちゃダメ。毛根が傷むから。どうしても気になるときは、根元から切る。増えてきたら、隠すのではなくぼかす。今は、カラー剤もカラーシャンプーも進化しているから、白髪、おそるるに足らず!
だけど、えっと、下の場合はどうすればいいの?
カラーシャンプーは……ないよね。
抜いていいの? 抜くと痛くない?
あ、でも、毛根傷んで二度と生えてこないなら、それはそれでよいのか?
いやそれよりなにより!
えええええ、私、もうそんな歳!?
アンダーヘアは真実を語る
話は逸れるようで、つながっているので、ちょっとお付き合いください。
みなさん、「ケイ・スカーペッタの『検屍官』シリーズ」ってご存知です? 1990年の刊行以来、全世界で1億冊突破している大人気のロングセラー(なんと、本日3月11日からAmazonPrimeでドラマ「スカーペッタ」もスタートするんですってよ、奥様!)。
私、このシリーズが大好きで、高校時代に読みあさったんです。主人公の女性、検屍官のスカーペッタがとても知的でクールで、カッコよくて。
で、今となっては、細かいストーリーはほとんど思い出せないのだけれど、唯一、くっきりはっきり記憶に残っているエピソードがあって、それが「検死をするときには、下の毛の色を見る」というものだった。
「頭髪に白髪がまじる年齢は様々だけれど、下の毛の白髪率は年齢とほぼ正比例する。だから、死体の年齢を推測する検死では、必ずアンダーヘアのチェックをする」的な記述があったの!
だから、(まだ死んでないけど)、自分の体を検分して思った。
「どんなに髪に白髪が少なくて、私ってまだまだ若いって思っていたとしても、身体は嘘をつかない。こちら(=下)の方が現実なのだ」
って。
アンダーヘアは真実を語る。
ずーーーーーん。
そして話は戻るのですが、そんなダメージをくらった数日後にワタクシ、前出のメンズ御三方と、zoom飲みしたんですよね。あれは今から3年半前。コロナ禍だった。
どんな人たちかというと、大学時代、サークルで一緒にテニスをしていた先輩たちです。
いろんな国で働いている4人の休暇と時差を鑑みて、日本時間22時からスタートした飲み会なのだけど、近況報告しあっている段階で、あっ! となった。
そう、その先輩メンバーの中に、インターポール勤務の御仁がいらしたんですよ。インターポール! 国際刑事警察機構!! 選ばれしものだけが世界各国から集う超エリート機構でございます。
そんな方と直に語れる機会なんて、そうそうないじゃないですか。
これはですね、聞かないわけにはいかない。……聞かないわけにはいかない。
ワタクシ個人の奥ゆかしさを、ライターの取材魂が凌駕した瞬間だった。
「あの~、先輩」
かつての憧れの先輩の顔を見ながら、私は、意を決して尋ねる。
「検死のときに、下の毛で年齢がわかるって、本当ですか?」
画面の向こうのダンディ3人が、固まったのがわかった。
アメリカから接続してくれていた先輩などは、朝の7時。「子どもが起きてきた」と言っている時間だったよ。ごめんなさい。
でも!
でも、聞きたかった!
私が先日はじめましてとご挨拶した、あの白髪は!
年齢を正確に示すものなのか?
もし私が突然死して身元不明の状態だったら、下半身をチェックされて、「ああ、あるね、下に白髪。アジア人女性・年齢は45歳以上」って判断されちゃうのか?
苦笑いをしている先輩たちに、
「いや、なんでそんなことを聞きたいかというと、今、介護脱毛の取材をしていて……」
と、ごにょごにょごにょとしながら、私は、嘘の「仕事」を強調した。
そんな私の必死のパッチに、先輩は、笑顔をひきつらせながらも優しく答えてくれた。
「僕は専門ではないから適当なことは言えないけれど、その部分“だけ”を根拠に年齢を割り出すことはないと思うよ」
え。そうなの? そうなんだ!
じゃあ、スカーペッタシリーズに書かれていた「アンダーヘアは実年齢を語る」という話は、小説用に作られた話なのね。私、必要以上に落ち込まなくていいのね。
明日から何かが変わるわけでもないし、私の“下”白髪も消えないのだけれど、なんとなくほっとした。
ほっとして、その後は品のいい話題が続き、「誰かが帰国した暁には、リアルで飲みましょうね」なんて話をしてお開きにしてから、数日たったころ。
フランスから裏切りのLINEが届いた。
ぴろりん。
「先日の件だけど、こんな文章があったよ」
と前置きされて、先輩から届いたのは、ある書籍からの引用。
死体は白骨化していても毛髪は保存されていることが比較的多い。そこで、頭髪の白毛ではなく、陰毛の白毛が大まかな年齢推定に役立っている。というのも、頭髪の白毛化は個人差が大きいのだが、陰毛に関しては男女ともにほぼ45歳以上にしか白毛が見られないのである。そのため、死体の陰毛に白毛がある場合は、ほぼ45歳以上と推定されるのだ。(小野一光『完全犯罪捜査マニュアル』太田出版より)
マ・ジ・で・す・か!
いやなんか、一度浮上した海面で呼吸していたら、もう一度沈められた気分だ。二度目の方が、苦しい。
そうか。この子、そうなのか。やはり、老化の証なのか……。
介護脱毛と現場のリアル
諦めがついた。
だとしたら、機械に反応しなくなる前に、すべきだよね。介護脱毛。
「まあ、いつでもいいけれど、そろそろやっておくか」
という感じと
「今、やんないと間に合わない」
って、ずいぶん心持ちが違う。一気に老けた気がする。
で、脱毛サロンのおねえさんに聞いてみました。
「あのー、VIO脱毛って、やっぱりそろそろした方がいいですか?」
って。
そしたら、もう、手ぐすね引いて待ってらっしゃいましたよね。
「はい、お客様。今、うちのサロンに通ってらっしゃるお客様のうち、8割はやってらっしゃいます!」
と。
そして、彼女はちらり、どこを見たかはちょっと私が自意識過剰なだけかもしれないけれど
「VIOは黒いうちにとスタートされる方が多いですね」
と、畳み掛けてくる。
そうか。やっぱりそうなのか。
介護されるときを考えたら、少しでもお相手が楽なのが、いいよね。うん。
これは、私のためだけの脱毛じゃない。世のため、人のためなのだ。
そう言い聞かせて、ええいっとばかりに、その場で契約したよVIO脱毛コース。そして1ヶ月後に予約をとった。よし。この話を連載で書こう! この切ない気持ち、原稿で昇華しようと思って、はたと気づいたことがあった。
そういえば、私、「脱毛している人のほうが、介護される時のQOLがあがる」って、どこにも取材してないし、裏とりしてないやって。
いかんいかん。ちゃんと取材してから、書こう。
そう思った私は、終末医療に詳しい女医の暢(のぶ)ちゃんに連絡をした。
「暢ちゃーん。介護脱毛って、現場の方からすると、どんな感じ? やっぱり、毛がないほうが助かるもの?」
と、軽い気持ちでメッセしたわけです。
すると、われらが暢ちゃん、仕事がめちゃくちゃ速くて
「原稿の締め切りはいつ? わかった、明日までにうちの介護士たちにアンケートに答えてもらうよ」
と、レスがきた。
そして翌日。
暢ちゃんから返事がきた
「このアンケート、現場がすごく盛り上がっていた。介護脱毛に関しては、みんな、言いたいことがいっぱいあるみたい」
と、添えられている。
この、現職の介護士の皆さんからのアンケートを見て、私はまたまたびっくりするのです!!!
え???? マジで???
まさかの、だーい、どんでん、返―――――し!
(続く)
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