清水ミチコさんの「朝日新聞」連載エッセイ「まぁいいさ」(金曜日夕刊・月1回)をまとめた文庫本『時をかける情緒 まぁいいさ』が発売になりました。平成から令和へ、自由自在にかけめぐる清水さんの情緒の味わいを、少しだけお裾分けします。

ハムはまわる
健康オタクである私の弟。このあいだ、「最近話題になってる低糖質・高脂質ダイエットがすごいよかった! 空腹感もなくて効果あるよ~!」 と、感動的に言ってました。
MCTオイルや生クリームなどを、朝からたっぷりコーヒーや紅茶などに入れ、できる限り糖質は控える。そのかわりに夜は、牛肉や魚、卵などはオイリーな調理法で食べてもよく、その結果いくら食べても体重が減少する、と謳われているもの。
脂を避けるダイエットを長年してきてる私など、まだ頭が硬いので(一番やばい脂質を取りながらダイエットなど絶対ありえない!)と疑ってました。しかし先日、たまたまその方法で「減量に成功した!」と話している、芸人さんのVTRのナレーションを担当し、かなりそそられました。再度背中を押されたカンジで、憧れのステーキやハムなど、久しぶりに食べてみようかしら、と思いました。ずっとあきらめていたあのお味。
話は変わりますが、私にとってハムといえば、いつも思い出すのが松村邦洋さん。
いつだったか、明るくて屈託のない彼から、「清水さんも、モノマネする対象の人にハムを送っといた方がいいですよ」と教わりました。松村くんのフォルムがハムにも似てるので(失礼だろ)忘れられない話です。
彼曰く、「松村コノヤロー、俺のモノマネしやがって!」と怒ってた人にも、ハムをお中元で贈ったとたん、「マ・ツ・ム・ラ~! はははは。なんだよ~ありがとよ~」と、笑顔の上機嫌となり、全ての人間関係が円滑になった、と言います。
そんな単純なものなのか? とは思いましたが、我ながら、ある女性タレントのモノマネが特にひどかったな、という日があって(つい)、私も一度送ってみることにしました。するとどうでしょう。翌々日、私の玄関にその方からもっと豪華な返礼品が届いてるではありませんか。手書きのお礼状まであり、恐縮・萎縮しました。(やはり男性芸能人と女性芸能人では、受け取り方の繊細さが違うのかもな~)と、妙に勉強になったのでした。
それを松村さんに言うと、しばらくしたら今度は、私に松村さんからハムが送られてきたりして。私もお返しに、とやりとりしていたら、「ハムは日本を延々まわる」、という諺を思いつきました。なんだそれ。
時をかける情緒 まぁいいさ

カンジ悪さが褒められた「ドクターX」出演、黒柳徹子さんにおフルの洋服をプレゼント、詐欺かと疑った伊丹十三賞受賞の電話、武道館ライブで達成感が得られない謎、卒業証書チラ見せ伊藤市長からの学び、60代で初婚の親友の結婚式、人生の残り時間を計算して思うこと……。平成から令和へ、自由自在に軽やかにかけめぐる情緒の味わい。











