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「ブラインドサッカー世界選手権2014」スタンド満員化プロジェクト

2014.11.24 更新 ツイート

第26回

決勝は8年ぶりに南米2強対決が実現!岡田仁志

 大会も、いよいよ大詰めである。23日には、準決勝が行われた。まずはアルゼンチン対スペイン。スペインはグループCを2引き分けの勝ち点2で終え、韓国とのPK戦を制して3位となり、決勝トーナメントに進んだチームだ。パラグアイとの準々決勝も0-0で引き分け、PK戦で勝ち上がり。記録上は1つも勝っていない。幸運というか、勝負強いというか、要領がいいというか、その全部というか、多くの関係者がその快進撃(?)をやや苦笑しながら見ていた。

アルゼンチン対スペインの準決勝(写真:増田茂樹)。

 そのスペインがアルゼンチンとの準決勝も0-0の引き分けに持ち込んだのだから、会場の空気は微妙である。なにしろこの日は、重大なことが発表されていた。今大会の優勝国には2016年リオデジャネイロパラリンピックの出場権が与えられるのだが、もし開催国のブラジルが優勝した場合、その権利が準優勝国に与えられることになったのだ。したがって、次の試合でブラジルが中国に勝って決勝進出を決めれば、その時点で、アルゼンチン対スペインの勝者がパラ出場権を獲得する。スペインがそうなった場合、もちろんそれは実力によるものとはいえ、いささか得るものが多すぎる感は否めない。

 PK戦はスペインが先行した。2人目を終えて1-0。だがスペインは3人目の3番ギエラが「決めれば勝ち」のキックを失敗。アルゼンチンは、「外すと負け」のキックを21番マキシが決めて同点に追いついた。そしてサドンデスの4人目。スペインの6番アコスタのキックは、後半途中からPK戦のために交代出場したアルゼンチンの巨漢GKゲルマンの正面をついた。最後はアルゼンチンの11番ベリスが決めて、アルゼンチンが決勝進出。同時にリオ行きも決め、ピッチ上では選手とスタッフが折り重なって賑やかに喜びを分かち合っていた。

 そのアルゼンチンの相手を決めるブラジル対中国は、世界のブラインドサッカー史に残るであろう激闘となった。グループリーグ3戦目での対戦は、どちらも「引き分けでOK」だったため消極的な戦いに終始したが、この準決勝は「これがブラインドサッカーの到達点だ」と胸を張ってオススメできる。スピード、テクニック、パワー、そして勝利への執念。すべてが揃った至高の一戦だった。

 試合を面白くしたのは中国だ。大方の予想を裏切って、6番リン・ドンドンが左45度からトウキッックのシュートを決めて中国が先制。ブラジルを慌てさせた。しかしこれが彼らの闘志に火をつけ、その潜在能力をさらに引き出したといえるだろう。後半に入ってからのブラジル、とりわけリカルド・アウベスの攻撃は凄まじく、スタンドの観客を圧倒し、茫然とさせるほどだった。ボールを失わないドリブル技術。密集する中国ディフェンスのほんのわずかなギャップを察知して抜き去る鋭敏な感覚。自分の前に誰もいないことを見透かして風のように走り抜けるスピード。この世のものとは思えぬプレーは、神業としか言いようがない。

中国の堅いディフェンスに挑むブラジルのリカルド・アウベス(写真:吉村もと)。

 そのリカルドが、まず後半7分に同点ゴール。中国の4枚カベを強引に打ち破る豪快なフリーキックだった。さらにその16分後、右のサイドフェンス際でボールを持ったリカルドが、ガイドライン(ゴールから12メートル)までいったん下がり、中国DFを前におびき寄せる。リカルドが再び前を向いてペナルティエリアに向かったとき、鉄壁の中国守備網にはわずかな綻びが生じていた。右足の強烈なシュートがゴールに突き刺さる。今大会で初めての逆転シーンに、特設スタンドが揺れた。

 中国は終盤、体調不調でベンチを温めていた7番ユー・ユータンを投入。ブラジルはエースのリカルドをベンチに下げ、控え選手を入れて守備を固めた。だがブラジルの監督は、試合後にこの選手交代を反省したかもしれない。攻撃の余裕を与えられた中国は、終了間際、ゴール前で待つユー・ユータンにボールを送る。振り向きざまのシュート。息を呑むスタンド。だが、ボールは惜しくもゴールマウスを外れた。ブラジル2-1中国。ブラジルが3大会連続、パラリンピックも含めれば6大会連続で、世界一決定戦の決勝戦に進出した。

 アルゼンチンとの決勝は、中国戦とはまた違う種類の驚きと興奮を観客に与えるだろう。以前よりもパスを多用するブラジルの戦術は、監督によれば「アルゼンチンの強力な守備を打ち破るため」にこの1年をかけて磨き上げてきたものだ。まさに、最強の矛と最強の盾の対決。「横」の動きで敵を揺さぶるブラジルに対して、アルゼンチンは「縦」のスピードが持ち味だ。ブラインドサッカーの魅力が詰まった一戦になるに違いない。それは、ある意味で「人類の最高到達点」だ。ぜひ、国立代々木競技場に足を運んで、それを目の当たりにしてもらいたい。行けない人は、スカパー!の生中継をご覧ください。決勝戦は、風祭喜一前日本代表監督と私のダブル解説でお届けします。

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「ブラインドサッカー世界選手権2014」スタンド満員化プロジェクト

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岡田仁志

昭和39(1964)年北海道旭川市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。3年間の出版社勤務を経て、フリーライターに。深川峻太郎の筆名でもコラムやエッセイ等を執筆。著書に『闇の中の翼たち――ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎)。

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