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じゆうちょう「Q」

2026.01.31 公開 ポスト

一番気持ちのこもったのをください 第11話「こけし」フェイクドキュメンタリーQ

フェイクドキュメンタリーQによる連載は、今回が11回目です。日本の伝統的な木製人形である「こけし」。祖父母世代の家には何体かあった——そんな印象を持つ方も多いことでしょう。読み取りにくい表情をした人形たちには、いったいどんな願いが込められていたのでしょうか? とあるインタビュー音源から探ります。

*   *   *

『【素材書き起こし】1104_伝統の技_こけし工房_INT_Ver3.docx』――2019年 テレビ番組のワンコーナーで使われたインタビューの全文書き起こし

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ファイル名: 【素材書き起こし】1104_伝統の技_こけし工房_INT_Ver3.docx
収録日: 2019年11月4日
場所: 宮城県〇〇市 こけし工房「〇〇」
対象者: 工房店主(60代後半・男性)
テープNo: CAM-A_02
書き起こし担当: AD佐藤
Dチェック: 済(※11/8 構成案反映済み)
(※太字はディレクター指示によるOA使用候補箇所)

 

 

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TC(タイムコード)/内容

[00:00:05] ディレクター(以下D): えー、はい、カメラ回りました。ではご主人、いつも通りで大丈夫ですよ。手元とか撮らせてもらいながらお話聞かせていただきますね。

店主: はいよ。……あ、これ、音は入ってる?

D: あ、はい。ここのマイクで拾ってるんで大丈夫です。今やっているのはどういった作業なんですか?

店主: これは木地挽き(きじびき)だね。木取りしたものをろくろにセットして、まず大まかな形を。

D: あ、すみません、木取りっていうのは?

店主: ああー、最初から説明しようか。

D: すみません、お願いできますか。

店主: はい。まずね、材木だけど、ミズキを使います。

D: 入口に積んであるのがそのミズキですか?

店主: そう。ミズキの成長は秋に止まるんだけど、そのタイミングで伐採して、1年間乾燥させます。

D: あっすぐ削るわけじゃないんすね。

店主: とんでもない(笑)。切ったばかりの木は水分たっぷりだから、そのまま削ったら後で乾燥したときに割れちゃうよ。今ここにあるのは去年の秋に切って1年乾かした木ってことです。 えー、それで、乾かした原木をこけしの大きさに合わせて切ることを玉きり、玉きりしたのをナタでざっくり角を取ってこういうきれいな丸(※円柱状)にするのが木取りって言います。これでさっきのところに戻ると。 (※D注:ここ図解テロップ入れる。木のイラスト→乾燥→玉きりのフロー)

[00:02:15] D: ありがとうございます。

※取材映像より抜粋

店主: で、こっから木地挽きです。ろくろにセットして、これ、カンナね。これを使って……(※機械音:キュイイイーン)……形を作っていきます。

D: うわ! 一瞬で形になってきますね。

店主: 簡単そうに見えるでしょ? でもこれ、木の目の向きとか節(ふし)の位置を読みながら刃を当てないと、逆目(さかめ)になって表面がガサガサになっちゃうの。 ツルツルの白い肌にするには、刃の角度と力加減が命なんだよ。

D: なるほど……まさに職人技ですね。

店主: まあね(笑)。これで形を作って、このあとサンドペーパーとかでもっと滑らかにしていきます。これでこけしの素体ができるね。 そしたら次の工程が描彩(びょうさい)、「描く」に「彩る」で描彩ね  。顔や着物の柄を描き入れる。

D: 今日はやらないんですか?

店主: 今日はやらないよ。今日は削る日、今日は描く日って分けてるね、俺は。なんてえの、使う脳みそが違うっていうかね。

[00:03:45] D: なるほど。一番難しいのはやっぱり顔を描く工程なんですか?

店主: 一番ってことはないけど、まあ木は生き物だからね。難しいよ。 迷いがあると線が死ぬし、遅いと滲んじゃう。 特に目はね、「一筆入魂」なんて言うけど、ここが決まらないと全部おじゃんだから(笑)。

D: もし失敗したらそれは、廃棄になっちゃうんですか?

店主: そうだねえ……削り直して、ひと回り小さいこけしにするしかないね。残酷だけど(笑)。

[00:04:30] D: そもそもなんですけど、こけしってどういうきっかけで生まれたものなんですか?

店主: 元々はね、江戸時代の終わり頃かな。山の中で木を切って生活してた「木地師(きじし)」って人たちがいたんだけど。 彼らはお椀やお盆を作るのが本業でね。その時に出る「端材」、余った木切れだね。それを捨てずに、子どものおもちゃとして削ったのが始まりだって言われてるね。

D: あ、元々は端材だったんですね。SDGsですね  (笑)。

店主: はは、今で言うとそうだね(笑)。 それで、湯治場、まあ温泉だね。そこに来るお客さんに、お土産として売るようになったのが広まったきっかけ。 子どもの手に握りやすいように細長くて、赤ちゃんの肌みたいに白い木を使って。形も表情も素朴でね、地域ごとに作りが違ってて、そういう「系統」ってのもあるんです。

[00:05:50] D: なるほど……地域ごとに受け継がれてるんですね。 ただ最近は、後継者不足なんて話も聞きますが。

店主: んー、まあねえ。うちも弟子はいないし、息子も東京行っちゃったからね(笑)。 昔みたいに観光バスで団体さんが来て、飛ぶように売れる時代じゃないから。 「伝統を守る」って口で言うのは簡単だけど、これで飯食っていくのは、まあ楽じゃないですよ。この辺も工房だいぶ減っちゃったしね。 (※D注:ここBGMしっとりさせて、工房内の引きの画へ)

D: でも最近、若い人の間でも「こけし女子」とか、ブームが来てるんですよね?

店主: ああ、ありがたいことだよね。新しい創作こけしとか、可愛らしいのが人気あるみたいね。 ただねえ、ネットなんかだと、また別の変な誤解も広まってるみたいでね。

D: 誤解というと?

[00:06:45] 店主: ほら、子どもを消すで「子消し」なんて当て字して、口減らしのために殺された子どもの慰霊だ、とかさ。 あれは完全なデマで、本当は小さいに芥子(ケシ)の花の芥子で「小芥子(こけし)」って書くの。まあ、子どもの成長を願ったり、病気にならないようにって意味でね。そういう気持ちで作られてた、縁起物なんですよ。 ただ、無表情だったり、どこにでもぽつんと立ってたりするもんだから、創作物なんかで「なんか怖い」ってイメージが付いちゃったのかなあ。それで怖い話に使われたりしてね。 でも、こけし自体には呪いだの怖い由来だの、そんなもんはまったく無いですよ。あれは、静かで、あったかいもんなんですよ。 (※D注:ここまでOA。店主の良いコメントで締める)

D: ですよね。ありがとうございます。やっぱり、作り手の口からそういう話を聞けると安心します。

店主: そうそう。……ただね、なんかそういうデマのせいなのかなあ。悪影響か分かんないけど、4、5年前かな。

D: はい。

店主: 若い女性がフラッと入ってきて。なんて言うか、身なりはきれいでしたよ。礼儀も良くて。 ただ、話の内容が妙でね。「一番効力のあるこけしが欲しい」って言うんだよ。

D: 効力?

[00:08:10] 店主: ね。俺もわかんないから「効力って何ですか」って聞いたら、「自分の念が込められるような、私の代わりに願いを叶えてくれるような」って言うからさ、「こけしはそういうもんじゃないです、間違ってますよ」って俺言ったんだよね。 そしたら「知り合いの占い師に手に入れるよう助言された」って。こけしを呪いのわら人形か何かだと思ってるのかね。狂ってますよ、頭おかしいって。

D: それはまた……。その人、どうしたんですか? 帰ってもらったんですか?

店主: いやあ、どれだけ言っても譲らないんだもんその人。結局、その時店にあった一番高いのを買って帰ったよ。50万くらいのでっかいやつ。

D: 50万!? 買ったんですか?

店主: 買った買った。まあこっちも商売だからね、背に腹は変えられませんよ。 でもそれから毎年買いに来てくれるからね、良いお客さんだよ。だからいつもそれっぽい、効きそうなこけし作ってやってる。 (※店主、作業台の奥から黒っぽい木箱をいくつか取り出す)

D: 効きそうって……あ、これですか? (※カメラ、ズーム)

[00:09:25] 店主: そうそう。ちょっと木を古く見せたりしてね。目のところも普通は描き入れるんだけど、こう穴にしてみたり。こういうのがいいんでしょ、あの人たちは。 中身なんてただの木なんだから、気持ちの問題だよ、気持ちの(笑)。 

D: ははは……なるほど、商魂たくましいですね(苦笑)。

D: じゃあ、最後にまた作業風景、別アングルから撮らせてもらっていいですか?

店主: はいはい。後で顔の描彩のところも少しやってみせたほうがいいですか?

D: あ、ぜひお願いしたいです。       
(※D注:ここ全カット。毎年買いに来てる→現在進行系で呪いをかけている??こけしの良いイメージ崩れる&コンプラ的にも微妙。ただ、黒い箱のインサートだけ素材としてキープしといて)


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本インタビューは、前半部分はオンエアにて使用されたが、後半部分は番組コンセプトから逸脱するという理由でカットされた。
なお、カット部分に含まれていた「効きそうなこけし」の画像を以下に掲載する。

 

 

 

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この連載では、とある事情にてお蔵入りとなった文章を、一部再編集のうえ公開できるようにし、掲載していきます。呪われたモノ・こと・人…あなたのまわりにも「それ」はあるかもしれません。

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フェイクドキュメンタリーQ

「フェイクドキュメンタリーQ」は、映像制作を生業とするクリエイターの集合体で、YouTube上でホラー系のフェイクドキュメンタリー作品を不定期に公開。テレビ局の未放送VTRや素人動画を再編集するというフォーマットを採用し、その高いクオリティと迫真性で視聴者から高い評価を得ている。 初の著作『フェイクドキュメンタリーQ』(双葉社、2024年)は累計発行部数6万部を突破。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@pro9ramQ 
X:https://x.com/pro9ramQ 

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