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アルパカ通信 幻冬舎部

2025.12.29 公開 ポスト

アルパカ通信 2025年末特別編【第3回】

2025年はこんなに豊作!本読みの二人が「まだ読んでない人に、なんとしても推したい小説」がずらり!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

年末恒例の「アルパカ通信幻冬舎部年末特別編」。今年2025年は、文芸の、書店界では、どんな1年だったでしょうか?ーーブックジャーナリスト・アルパカ内田さんと幻冬舎営業局のコグマ部長が、この1年を振り返ります。(全3回)

さあ、ここからは、二人が今年気になった作品を、タイトルを挙げながら一気にお話していただきます!

内田さんが今年作った手書きPOPのほんの一部!

(構成:篠原知存)

*   *   *

本屋大賞はどうなる?

コグマ 本屋大賞のノミネート作品に入ってきそうなのは。

アルパカ さきほどあげた朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』に加え、村田沙耶香さんの『世界99』も筆頭格です。あとは、櫻田智也さんの『失われた貌』と森バジルさんの『探偵小石は恋しない』がどうなるか。ど真ん中のミステリーは入りにくいというのはあるんですが。

『世界99 上・下』
集英社 上・下とも2420円
性格のない人間・如月空子。彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。空子の生きる世界には、​​ピョコルンがいる。ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。
『失われた貌』
新潮社 1980円
山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。事件報道後、警察署を小学生が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は10年前に行方不明となり、失踪宣告を受けていた。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を呑み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。
『探偵小石は恋しない』
小学館 1870円
小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日​​​​​を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。

コグマ 和田竜さんの『最後の一色』はエンタメ要素もたっぷりの時代物で、推しやすいといえば推しやすいですよね。血湧き肉躍るような物語です。

『最後の一色上・下』
小学館 上・2100円 下・1900円
織田信長による天下布武の軍団が日本全土を侵略していくなか、その怪物は戦場にあらわれた。名を丹後の守護大名、一色義員の嫡男・五郎と言った。17歳の青年は、父が倒された圧倒的不利な状況下で、凄惨な戦闘を繰り広げ、その場にいた全ての人間を恐怖に陥れる─。一方、信長に丹後を支配するよう命じられた智将・長岡(細川)藤孝、猛将・忠興親子は、決死の覚悟で五郎と戦う。味方にも秘策を明かさぬ五郎が進もうとする先は、果たして織田家の壊滅か、一族の破滅か。戦国時代最後の怪物が覚醒する。

アルパカ 本屋大賞は時代物が弱くて、最近特にそういう傾向があった。和田さんは本屋大賞を受賞した『村上海賊の娘』以来一二年ぶりですよね。和田さんにはもっと書いてもらいたいです。

コグマ 城戸川りょうさんの「高宮麻綾」シリーズもジャケットのデザインも含めてかなり成瀬あかりシリーズを意識されていますよね。最新作『高宮麻綾の退職願』もそうです。キャラの強さを打ち出していくってのは似ていますが、とてもいい作品です。
二〇二四年の松本清張賞で次点でしたが、文藝春秋の社内で「出すべきだ」という声が相次いで刊行に至ったという経緯も面白い。

『高宮麻綾の退職願』
文藝春秋 1760円
満を持して親会社に出向した高宮麻綾。新たなビジネスを仕掛けようと奮闘するが、早々にパワハラ疑惑をかけられて……。さらに、次なる敵は産業スパイ!? デビュー作『高宮麻綾の引継書』が異例のヒット、待望の続編。

アルパカ 城戸川さんは僕もインタビューさせてもらったんですけど、商社で一〇年ほど働いていて、二刀流で小説家をされている。ビジネスマナーもきちっとしていて、仕事もバリバリやられるんだろうなと思わせる人です。

コグマ 『このミス』大賞・文庫グランプリの松下龍之介さんの『一次元の挿し木』も面白かったです。

『一次元の挿し木』
宝島社文庫 900円
ヒマラヤ山中で発掘された200年前の人骨。大学院で遺伝人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、4年前に失踪した妹のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく──。

アルパカ そうそう。二〇〇年前の人骨のDNAが、自分の妹のDNAと一致するなんてありえないじゃないですか。やっぱりつかみがいいというのは、売れるミステリーの傾向としてありますよね。

コグマ 最初に、それってどういうこと? という不思議から始まるんですよね。最近のミステリーの一つの傾向とも言えるかもしれません。

アルパカ 特殊設定ですね。どんな本って聞かれた時に、こんな内容でねって説明できるじゃないですか。どういうこと? それでどうなるの? って会話も広がりますしね。『一次元の挿し木』って、オリジナルのブックカバーで有名な大阪市の正和堂書店さんが「面白そう」ってXで投稿したんですが、意図したわけじゃないけど、指でタイトルが一文字隠れてたせいで奇跡的にバズった
そうです。

コグマ 隠してることに意味があるんじゃないかと思われたんですね。

アルパカ わざとじゃないし、狙ってできないんですけど、バズりはひょんなことから生まれますね。正和堂さんはオリジナルの文庫カバーやしおりを作っていて「バズらせ屋」でもあります。牛乳石鹼の文庫カバーはすごく流行っていて、正和堂さんのいいところはオリジナルのアイデアでも、使いたい書店があったらどうぞどうぞって提供していること。僕も牛乳石鹼のカバーは都内の書店で買いました。

まだまだ続くホラー人気の話から、気になる装丁まで――

コグマ まだまだいろいろと仕掛けられることはありそうですね。ブームが続いているホラーについてはどうですか。二〇二五年もそうとうの数が出ましたよね。幻冬舎も恩田陸さんの『珈琲怪談』、最東対地さんの『耳なし芳一のカセットテープ』を刊行しました。

『珈琲怪談』
幻冬舎 1980円
男子会で、ホラーをダベる。京都、横浜、東京、神戸、大阪、再びの京都─。なぜ多忙な4人の男たち(外科医、検事、作曲家、音楽プロデューサー)は、わざわざ遠出して喫茶店を何軒もハシゴしながら、怪談を披露し合うのか─。そして、いつも茫洋としているが、気づくとなにか肝心なことをぼそっと呟く塚崎多聞とは何者なのか?
『耳なし芳一のカセットテープ』
幻冬舎 1870円
1980年代、人気ラジオ番組を録音していた男子高校生のラジカセから突然流れてきた、「耳なし芳一」の琵琶語り。その後このカセットテープを聞いた人には、次々と不幸が訪れた─。【耳なし芳一のカセットテープ】は、テレビでも取り上げられたほど有名な実話怪談のはずだった。なのに、誰も知らない。不思議に思い調べ始めた怪談師・馬代融が出会うのは、奇妙な偶然、とある冥婚の風習、そして強烈な悪意。果たして、この物語の行きつく先とは?

アルパカ 恩田さんの『珈琲怪談』は、一七年ぶりの塚崎多聞シリーズ三作目。王道の面白さですね。恩田さんによくできてるなんてとても言えませんが、出色の出来栄えです。

コグマ 恩田さんはまさにこのジャンルから出てきたわけですからね。ちょっとした違和感を生み出していくのが本当にお上手です。どんどん怖さが募っていく。お見事でした。『耳なし芳一のカセットテープ』は、よく知られた「耳なし芳一」が関わる実話怪談を最東さんが元にしているんですが、恐怖がきちんと引き出されている。やっぱりホラーって面白いんだなと思いました。

アルパカ ホラーはもう安定のジャンルなんですけど、より一層売れているという感じですね。いろんな読者の入り口になる
のはホラーか、さっきお話ししたような特殊設定のミステリーですよ。

コグマ 子供たちが本屋さんでなにか買うとなったら、やっぱりそういう本から入ると思うし、気軽に手の届くようなものであるというのは大事ですよね。

アルパカ ホラーは入り口にもなるし奥深くもあって、通の方も楽しみにしています。以前は書店でも隅のほうに置かれていましたが、いまや堂々と真ん中にあって、立派な一ジャンル。売れ筋の本、話題の本に定着しています。

コグマ 昔は怪談といえば夏でしたが、季節は関係なくなりましたね。

アルパカ 今回、ジャケットについてもちょっとお話ししたいんですよ。Q–TAさんという方の装画が目立ってきていて、ジャケットのインパクトがすごい。『一次元の挿し木』の装画もQ–TA さんです。

コグマ Z李さんの新作『君が面会に来たあとで』もそうです。

『君が面会に来たあとで』
幻冬舎 1760円
立ちんぼから裏スロ店員、ホームレスにキャバ嬢ホスト、公務員からヤクザ、客引きのナイジェリア人にゴミ置き場から飛び出したネズミまで。繁華街で蠢く人々の日常を​​​​多彩なタッチで描く、東京拘置所差し入れ本ランキング上位確定の暇つぶし短編集!

アルパカ ひとつの潮流だと思うんですよ。ジャケットのインパクト、設定の面白さ、タイトル。思わず衝動買いしちゃう本というのは。宮島未奈さんの『それいけ!平安部』も、春バージョン、夏バージョン、秋バージョンと、季節に合わせてカバーを変えていました。帯を変えたり、ジャケットを変えたりすることによって、書店でもう一回売り出したり積んでもらえたりする。ジャケットの重要性は、より顕著になっているような気がします。個人的には、井上荒野さんの『私たちが轢かなかった鹿』のジャケットもすごく刺さりました。フォークだけに刺さったとか、そういうことではないですよ(笑)。

『それいけ!平安部』
小学館 1760円
県立菅原高校の入学式当日、同じクラスになった安以加から「平安時代に興味ない?」と栞は声をかけられた。「平安部を作りたい」という安以加の熱意に入部を決めるが、新部を創設するには5人の部員が必要だった。あと3人(泣)。知恵をしぼって部員を集め、平安部は誕生するが、はたしてどんな活動が始まるのか─!?
『私たちが轢かなかった鹿』
U-NEXT 1980円
同じ出来事を2人の当事者の視点から描く、騙し絵のように読者を惑わす短編集。彼女は私の親友で、私の男の母親……「私たちが轢かなかった鹿」。身ごもりたい女と、身ごもることを許されなかった女……「不幸の****」。不治の病を宣告された夫の心配と妻の気遣いの掛け違い……「犬の名前」。頭かペニスか――家出した娘と愛人との間で揺れる男の天秤……「つまらない掛け時計」。大雪の日、老作家と元担当兼愛人が住む古民家へ迷い人が……「小説みたいなことは起こらない」。

コグマ なるほど、これはインパクトがありますね。アルパカ標野凪さんの『独り言の多い博物館』も、文学的にも大好きですけれど、ジャケットも好みです。個人的には二〇二五年のベストと言ってもいい。中身も含めて、ものづくりのセンスの良さを感じます。一家に一冊持っていてほしい。紙の本として一生ものじゃないですか。

『独り言の多い博物館』
幻冬舎 1760円
丘の上にある古いレンガの「別れの博物館」。さまざまな想いを抱えた人々が、今日も博物館を訪れます。「別れの博物館」収蔵物リスト――館長の〈数〉、喫茶店に飾られていた〈額〉、帽子作家の〈針〉、手話ボランティアの〈耳〉、数学教師の〈名〉、着られることのない〈服〉……。

幻冬舎刊の面白い小説も、続々!

コグマ 幻冬舎としては、『女の国会』で山本周五郎賞を取られた新川帆立さんに、二〇二五年は『魔法律学校の麗人執事』シリーズをスタートしてもらいました。

『魔法律学校の麗人執事1・2・3』
幻冬舎 いずれも1870円
野々宮椿は日本で一番優秀な15歳の女の子。生まれ育った修道院を救うため、魔法の天才・条ヶ崎マリスの執事になるが―。「おいド庶民。お前に俺の執事がつとまるわけないだろ」。ご主人は傍若無人で傲岸不遜、名門一家の御曹司だった。椿はマリスの尊大な態度に辟易しながらも、マリスと共に魔法と法律の学び舎・魔法律学校に入学する。契約通り、執事の仕事をこなそうとする椿だが……。

アルパカ 新川さんといえば、『ひまわり』を二〇二四年末に第一回アルパカ文学賞に選ばせてもらいました。熱い言葉の力を感じさせてくれることや、読後感の良さがあることが選考基準なのですが、一番印象に残った小説でした。二〇二五年は作家・新川帆立さんが脚光を浴びた一年でしたね。いまや人気も実力も兼ね備えた、押しも押されもせぬスター作家です。『魔法律学校の麗人執事』はファンタジーですけど法律というのがいいですね。やっぱり元弁護士の新川さんにしか書けないところがある。

コグマ 何でも書ける幅の広さを持っている新川さんですが、ハリー・ポッターが大好きだそうで、このシリーズもハリポタのようにベスト&ロングセラーに育てたいと思っています。幻冬舎としても頑張りますけれど、シリーズものは書店さんもうれしいじゃないですか。

アルパカ ちなみに、二〇二五年のアルパカ文学賞は瀧羽麻子さんの『妻はりんごを食べない』をノミネート作に入れています。この作品は、瀧羽さんをずっと読んでいる人でも驚かされますよ。どうなっていくのか、話の転がる先が分からない。これこそ物語の面白さですよね。こんな語り口があるんだって思わされました。夫婦にしてもなんにしても、秘密を抱えていない人間関係はない。その探り合いであったりとか、読ませるポイント、リーダビリティが突き抜けています。それから菊池良さんの『本読むふたり』。これはね、僕の本じゃないかっていうぐらい親近感がありました。

『妻はりんごを食べない』
幻冬舎 1980円
友達のように仲のいい夫婦に訪れた、突然の「妻の不在」。スマホではこんなにも簡単に「つながる」のに、こんなにも手がかりが無いなんて。そこはどこ?あなたは誰? 不安は、不信になり、不穏へ――。
『本読むふたり』
幻冬舎 1650円
大学の課題で読んだ村上春樹の短編小説をきっかけに、読書の面白さに気づいたタツヤ。調べるうちに出会ったのが、Twitterの読書アカウントだった。自由で楽しそうに本の感想をつぶやく彼らの中で、タツヤはフミカというアカウントの投稿に心惹かれる。初デートの渋谷。明け方の神保町。抱きしめ合った御茶ノ水――。わたしたち、出会うはずじゃなかったんだよ。

コグマ 共感しかないという思いです。村上春樹の本を持ってる私はかっこいいみたいな。

アルパカ そういう時代でしたよね。僕は、村上春樹さんの『騎士団長殺し』発売日の「徹夜して読む会」のその場にいましたからね。売る側として。物語の中に自分がいて登場人物を見ているような、ちょっと不思議な体験で、僕の本だと思っちゃったんですけど、個人的なことは抜きにしても、すごくいい話ですね。『ノルウェイの森』の緑と赤を持って待ち合わせとか、ベタだけど最高です。

コグマ 井上荒野さんの『しずかなパレード』もすごかった。東京から佐世保の和菓子屋に嫁いで、娘を育てている若女将が急にいなくなるんですけど、身近な人がいなくなったら自分たちもこういう会話をするんだろうなって。世界観の作り方が抜群です。

『しずかなパレード』
幻冬舎 1870円
東京から佐世保の和菓子店に嫁ぎ、娘を育てながら若女将として生きる、晶。誕生祝いの夜、夫から贈られたエルメスのバングルを手首に巻きながら、好きな人がいる、その人のところへ行くと告げ、いなくなった。残された夫・信伍の怒りと嘆き、愛人・武藤の不審と自嘲、捨てられたと感じながら成長する娘・結生……。「不在」の12年間を、さまざまな視点から綴る長編小説。

アルパカ ページをめくる手が止まらなかったですね。地方都市の匂い、老舗の訳ありみたいなところ、ちりばめられていた謎が少しずつ明かされながらも、なかなか真相は分からない展開。読ませますよね。帯のコピーにありますけれど、圧倒的な「不在」、その通りですね。不在を説得力を持って書くのは難しい。

コグマ 周りを描くことによって、中心にある空白を浮かび上がらせる。ほんとにさすがとしか言いようがないです。

アルパカ 真下みことさんの『春はまた来る』も好きです。性被害や分断を描いていて軽いテーマではないですけれど、こういうのはちゃんと売れ続けてほしい。小説が担っている大事な役目だと思うし、それを彼女にしかできないアプローチで書いていて、大変な価値があると思いますね。

『春はまた来る』
幻冬舎 1760円
名門大の理工学部に通う順子は、大学2年の春、高校の同級生で女子大に通う紗奈と再会する。高校生の時は「上」の人間だった紗奈と、「下」の人間だった順子は話したこともなかったが、不思議と2人の間には友情が芽生える。インカレサークルで「高学歴」男子と交流する紗奈が、ある日性被害に遭い――。

コグマ 稀有な作品だと思えるのは、まさきとしかさんの『スピーチ』もそうです。警察小説でかつ女性刑事のバディものなんですよね。東京以外が舞台になっていて、女性刑事でバディものは本当に少ないです。北海道で地に足をつけて執筆活動をされています。

『スピーチ』
幻冬舎 2090円
札幌、豊平川の川岸で見つかった女性の遺体。“寄り添い型”の刑事、天道環奈と、その上司であり“人の不幸が見たい”緑川ミキは事件を追う。黒い粘着テープで両目を塞がれた物言わぬ彼女に、あの夜、一体何があったのか。飲み会帰りかもしれない、不倫をしていたのかもしれない、夫もパート仲間も、本当の彼女のことを何も知らない。しかし─。人には誰しも“言い分”がある。被害者にも─犯人にも。

アルパカ びっくりしたのは宮田珠己さんの『そして少女は加速する』でした。巨大仏とかジェットコースターとかで笑わせてくれる面白エッセイの宮田さんだから、どこかで曲げてくるのかなと思ったら、最後までストレートで押してきましたね。ど真ん中の青春小説。清々しいです。

『そして少女は加速する』
幻冬舎 1980円
高幡高校陸上部の女子リレーチームは、バトンのミスによりインターハイ出場を逃してい​た。傷が癒えないメンバーを抱え、それでも来年に向けて、新しいメンバーで再始動。しかし、選手の怪我、校則違反・部則違反、チームメイトの家庭問題、恋愛問題、他校ライバル選手への嫉妬、そして将来の進路の悩みなど、次々に試練が。さらに正規メンバー枠の争奪戦も熾烈になり……。果たして彼女たちはインターハイに出場できるのか――。

コグマ ご本人も陸上経験者だし、やっぱり作家自身が反映されているのかなと思ったりもしました。それから女の子同士、仲はいいんだけど、ちょっとしたすれ違いみたいなことで関係がギクシャクしたり、ドラマにリアリティがあります。

アルパカ 面白かったですね。レースのシーンも没入感がある。一緒に走ってるような気にさせてくれる。読む前は、結構ボリュームがあるから、これ長過ぎないのかなって思いましたが、読み始めたら、あっという間でしたね。おじさんも加速しちゃいました、はい。

(「小説幻冬 2026年1月号」でもお楽しみください)

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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