夫婦カウンセリングを訪れるカップルが急増しています。コロナ禍のステイホームやリモートワークの普及により、パートナーへの不満から目を逸らしにくくなってきたことも要因のひとつだと『夫婦はなぜ壊れるのか』の著者は言います。病気の妻にから揚げが食べたいと言ってしまう夫から、実家に尽くし過ぎる妻まで。夫も妻も、なぜみすみす関係を悪化させるような言動をとってしまうのか。その背景を本書から抜粋して紹介していきます。別居や離婚を考えながらも揺れている方はもちろん、家庭内が以前に比べてギスギスしていると悩んでいる方まで、関係改善のヒントが得られる1冊です。
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子どもの頃に満たされなかった「愛情欲求」とは
ここまで、主に妻からの訴えでカウンセリングに来た夫婦の事例を見てきました。心理テスト結果の説明で、「愛情欲求」という言葉が頻繁に出てきたことをご記憶の方もいると思います。この愛情欲求というのはいったいどのようなものなのでしょうか。
人の心には、愛情によって満たされる器があります。この器は、成長する過程で、親を中心とした周りの大人から愛情を注がれる事によって満たされていきます。十分に満たされないと心が苦しくなってしまうのですが、この器は心の深いところ、つまり潜在意識にあるので、なぜ満たされないと苦しさを感じてしまうのか、自分では理由が分かりません。そこで、食欲や物欲、金銭欲、出世欲など別の欲求を満たすことで不足を補おうとしますが、この器には愛情しか入ってくれないので、他のものでは満たされない。つまり、苦しみは続いてしまうという構造です。愛が注がれなかった、つまり「愛されなかった」と本人が感じてしまうのは、虐待はもちろんですが、放任主義で関心を向けられなかった、逆に過干渉で意思を尊重されなかったなどが原因といえます。
大人になって、パートナーからの関心や愛情でこの器を満たそうとする事もあります。これはある意味で健全なことですが、気を付けなくてはならないのは、過去に満たされなかった器を満たすために、今のパートナーの愛情を求めている、という場合もあることです。
本人は自分が愛情に飢えていることに気づいていません。ですが、無意識に愛情を求める気持ちがパートナーへの強い期待となって、求めるほどの愛情を享受できなかった場合、強い悲しみや怒りになる事があります。
なぜ「足りない」と感じてしまうのか
自分の気持ちを察して欲しいのに察してくれない、もっと家事育児を手伝って欲しい、たくさん会話をして共感して欲しい──こうした願望を持つ妻は多いと思いますが、決して過剰な欲求と言えないのが現状です。しかし中には、夫は精一杯努力しているし、妻のお願いに応えようとしているけれど、妻の不満がいつまでも解消されないままの夫婦もいます。
また、夫の側が満たされなかった愛情欲求を抱えていて、妻に愛されたいという思いが強く、子どもに嫉妬したり、「家事育児を出来るだけ手伝っているのに、誉めてくれない」という不満を抱くことも。妻からすれば、夫婦の時間を作るようにしているし、「ありがとう」といつも言っているのに、夫は「足りない」と感じている。これは、愛情の器が満たされなかった過去の分まで、相手に愛情を求めてしまう事があるからです。
しかし、過去の器は過去の器であり、満たされる事はありません。自分が過去の愛情の器を満たそうとしている事に気づけないと、今現在、十分な愛情を注いでもらっている事が分からず、自分も不幸なままで、相手も不幸にしてしまうという事です。
「過去はどうすることも出来ない」と気づくことの重要性
だからまず大事なのは、自分が子どもの頃に愛されていないと感じていた悲しみを、今も引きずっていると気づく事です。もともと自覚がある人もいれば、心理テストで初めて気づく人もいます。どちらにしても、過去はもうどうする事も出来ないと整理出来れば、今現在注がれている愛情に目を向ける事も出来るはずです。
実際、相談に来た当初は「夫は私の気持ちを全く分かってくれない」と言っていた妻が、カウンセリングを経て「夫と結婚できた事が私の一番の幸せです」と言うまでに至った例もあります。他にも、子ども時代の愛情不足による怒りを夫に向けていた事に気づき、夫がどれだけ家事や育児を頑張ってくれているか分かるようになったケースも。カウンセリングに来た当初は、夫の作ってくれる料理に文句を言っていた妻が、です。
自分が何を求めているのか。そして相手からの愛情をちゃんと感じることが出来ているか。それに気づくのは案外難しいことなのです。
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