いきものの解説が人気のYouTubeちゃんねる「へんないきものチャンネル」の“中の人”、ろうさんの新刊『知れば知るほどへんすぎるいきもの事典』から、興味深いいきものの豆知識をピックアップしてお届けする本企画。
今回は、人間の手元をじーっと見つめて、あるものを狙い続けているサルのお話。
海外旅行の際には、持ち物を盗まれないよう、頭上のサルたちにもご注意ください。
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返してほしけりゃエサよこせ 観光客に忍び寄る泥棒ザル!
動物の「知能」に関する研究は古くから行われているけれど、脳の仕組みがいまだ完全に解明されていないため、現代でも謎に包まれていることだらけ。
でも、動物たちの行動を観察していくと、人間が想像しないような驚くべき行動を見せることもあるんだ。
インドネシアで有名な観光地、バリ島にあるウルワツ寺院の「カニクイザル」たちは、近年、人間のスマートフォンを盗んで簡単には届かない高い木の上に逃げるようになった。
お腹を満たすために人間の食べものを奪うのは納得できるけど、一体なぜ、スマートフォンを盗むんだろう?
興味本位? それとも自分たちで操作するため?
実はこの地域では、サルがメガネや帽子など、サルが人間のものを奪っていくトラブルが以前から頻繁に起きていたんだそう。
そうやって、人間のものを盗み続けるなかで、サルたちはあることに気付く。
「何を奪うか」で人間のリアクションが変わるような……。

そんな時、道を歩く観光客たちが、常に手元で、一生懸命なにか操作している姿を見たんだ。
「きっとあれは、人間が大切にしているものに違いない」と考えたサルは、まるで食べものをもらうための“人質”のようにスマートフォンを奪った。
何回か繰り返すうちに、「スマートフォン」と「財布」が一番いい見返りをもらえることが分かってくる。
そうして学習したサルたちは、満足いく食べものがもらえるまで、高価なものを盗んでは返さずにねばり、交渉するようになったんだ。
これは、知能の高さをはかる上ではとっても重要な発見。
人間が「お金」を使って食べものを買い、空腹を満たすように、サルたちも、人間の貴重品を交渉材料の「通貨」にすることで、食べものをもらえることを学習したということだ。
さあ、こんなことを話している今も、何を奪えば一番あせるのか、サルたちが木の上で目を光らせて、人間たちの行動を観察しているのかもしれないよ!
知れば知るほどへんすぎるいきもの事典

へんないきもののネタを50集めた児童書『知れば知るほどへんすぎるいきもの事典』の試し読み記事です。
たとえば……
・牛66頭を襲ったヒグマは、実は、熊同士の闘いに負けていた〈OSO18〉
・プロボクサーより早いパンチを繰り出す海の生きもの〈モンハナシャコ〉
・噛まれたら10分で死んでしまう殺人グモ!? 〈シドニージョウゴグモ〉
・体が大きいのに泳ぐスピードも速い人食い魚〈ムベンガ〉
・世界で唯一、血液を食べものにする鳥〈フィンチ〉
・人間の貴重品をあえて狙う泥棒ザル〈カニクイザル〉
などなど……面白いいきものの生態がたくさん! 子どもと一緒に大人も楽しめます!











