一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第49回 菊池良『本読むふたり』
きっかけに読書にハマったタツヤ。
調べるうちに出会ったのが、Twitterの
読書アカウントだった。自由に本の感想をつぶやく
彼らの中の、フミカというアカウントの投稿に
心惹かれる。初デートの渋谷。明け方の神保町。
抱きしめあった御茶ノ水。ふたりの間には、
いつだって本があった。それなのに──。
2010年代のカルチャーを閉じ込めた、
ピュアな恋愛小説。

みなさん、こんにちは。ドッグショーより読書。アルパカ内田です。
本がある。ただそれだけで幸せだ。活字の海に漂う時間は至福のひと時である。この世には、本に興味がない人はたくさんいるが、本を読み飽きた人には出会ったことがない。読書の喜びを知れば、それは一生の財産となるのだ。
本書の主人公は、SNSを通じて知り合った若い男女である。共通の話題は読書。優しさゆえのぎこちない交流。不器用だからこそピュアな感性がリアルに伝わり、ダイレクトに心を震わせる。ガラス細工のような恋模様をいつまでも見守っていたくなった。
特筆すべきは、2010年代の小説界の空気と本の匂い、そして舞台である本の街・神保町を見事に再現している点だ。個人的な話で恐縮であるが、かつて書店員であった自分は、本書で書かれている老舗の大型書店に勤務していた。二人が初めて待ち合わせた場所、見つめた棚、手にした本、すべて記憶に刻まれている通りだった。物語のハイライトでもある村上春樹の新刊発売日の歴史的イベント。まさにその場所に僕もいたのである。読みながら、確かに登場人物たちと触れ合っていた。こんな特別な読書体験は初めてだ。
大切な誰かと繫がる「きっかけ」となるこの一冊は、孤独な心を癒やしてくれるだけではない。「本の力」を思う存分に味わえる物語でもある。神田神保町一丁目一番地にある思い出の書店は来春、生まれ変わってオープンする。「本読むふたり」が三人、四人と仲間を増やし、聖地巡りをする風景がすでに見えている。

アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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