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考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-

2025.10.29 公開 ポスト

「ちょっとだけエスパー」第2話 衝撃のラスト……。これはコメディではありません。稀代の脚本家、野木亜紀子氏が伝えたいものとは。 #大泉洋 #6969b6969b~ろくろっ首~(ドラマ考察系 YouTuber)

「ただのコメディドラマでは終わらせない……。最後に苦味を効かせて終わらせる。」

 

これぞ、野木亜紀子劇場だ。

 

軽快なテンポとコミカルなタッチで描いていた第2話だったが、エンディングに待っていたのは“予想外すぎる突然の死”この結末に込められた野木亜紀子氏の思いや、この作品の方向性を、私の独断と偏見で紐解いていきたい。

 

 

この物語は何を語りかけてくるのか。野木亜紀子氏が描くSF作品の本質とは?

振り返ると第2話はこの作品の「説明書」のような回だった。

 

〈今日から地球を救ってもらいます〉とノナマーレの社長:兆(岡田将生)から告げられた文太(大泉洋)は、「タッチすると人の心の声が聞こえる」というエスパー能力を駆使して様々な日常的ミッションをクリアし、間接的に少しずつ世界を平和に導いていく物語。

 

基本的な枠組みはおそらくこんな感じだろう。

 

そして今回のミッションは

「千田守(小久保寿人)が目的地につくことを阻止する」というもの。

画家である千田はその目的地で絵画を使った詐欺を企てていたが、文太ら“ちょっとだけエスパー集団”の説得で詐欺を中止。

 

見事ミッションはクリアとなり「千田守は画家として一生を終える」という未来に変わった。それはつまり、「詐欺から離れ、再び画家として生きる選択を取り戻した」と私は受け取っていたのだ。

 

ここまでを鑑賞した私は「シンプルに素敵なお話だな」と満足感を感じていた。
美術への絶望も相まって犯罪者になりかけた千田だったが、人との出会いをきっかけに再び画家への道を歩み始める「再生ストーリー」として、この物語を噛み締めていたのも束の間……。

 

 

待っていたのは「千田守の死

 

空いた口が今も塞がっていない私だ。
それと同時に「これぞ、野木亜紀子節だ」と空いた口のまま、呟いてしまったのだ。

 

振り返ると野木氏の作品は、フィクションでありながら「現実主義」である。

 

野木氏の代表作の一つでもある『MIU404』
こちらの作品では「どんなに正義感に溢れる人間でも、何かをきっかけに犯罪者になりうる」という人間らしさと社会の不条理さを「現実的」に表現していた。

 

そして「ちょっとだけエスパー」というコメディタッチのSFドラマでさえ、野木氏の「現実主義」が垣間見えたのだ。

 

『個人の幸せと世界の平和は必ずしも直結しない』

 

私はそんなメッセージを感じた。

 

このミッションを命じたノナマーレという会社の目的は、

 

「世界には沢山の分岐点があるため、小さな出来事が地球の命運を変えることもある。だからミッションを達成することで世界の形を良くする」ことだ。

 

だとすると「千田守が画家として一生を終える=死」が世界の形を良くすることだったと解釈することができる。

 

これは不条理でありながら、非常に現実主義的な考えだと言えるだろう。

 

世界の平和という大きな枠組みでは前向きだったとしても、個人の幸せというものにスポットを当てれば、それが必ずしも前向きとは限らない。

 

私はそんな解釈にたどり着いた。

 

しかし、犯罪者として人生を続けていくことと、善人に踏みとどまって一生を終えること……。果たしてどちらが個人としての“幸せ”と言えるのか、私はまだその答えを持ち合わせていない。

物語の方向性は見えてきたが、まだまだ多い謎!今後の考察ポイントは?

第2話を観て「序盤なのにこんなに謎を明かして大丈夫?」と思ったのは私だけではないだろう。

 

最大の謎だった〈四季の過去〉については、亡くした夫の存在と、その死を受け入れられない彼女の苦しみが明らかになった。

 

また、謎の会社〈ノナマーレ〉が、“世界の形をよくするため、小さなミッションを通じてそっと方向づけを行っている”という目的が、少しずつ見えてきたのだ。

まだまだ序盤だからこそ、全てが“真実”ではない可能性もあるが、ここからの展開に自信があるからこそ、種明かしも早いのだと私は思ってしまう。

 

それほどに私はこの作品に信頼を置いている。そして第2話を観てもその信頼は全く薄れなかったのだ。

 

また序盤にして種明かしがあったからこそ、物語の枠組みが見え、残された謎も明確化されたのだ。

 

「ちょっエス」を100%楽しむために、今後の考察点をまとめていく。

 

・ちょっとだけエスパー軍団の「失敗した過去」とは?

・四季(宮崎あおい)の旦那を亡くした事故の詳細とは?

・ノナマーレ社長の兆が四季にこだわる理由とは?

・この物語の終着点とは?

 

この辺りが主な考察点になるだろう。

 

第2話の衝撃の終わり方を見る限り、この考察達も一筋縄ではいかないだろう。だからこそ乃木亜紀子氏が伝えたいメッセージ性を鋭くキャッチして、少しでも真実に辿り着けるように精進していこうと思う。

 

現実主義の日常系SFドラマ「ちょっとだけエスパー」
野木氏の新しい挑戦に今後も目が離せない。

 

最後に。

四季を前にして「人を愛してはいけない」というルールを守るのは無理です、マジで。キュートすぎるって。四季に幸あれ。

 

••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
テレビ朝日『ちょっとだけエスパー』( 毎週火曜夜9時~)
出演:大泉洋、宮崎あおい、ディーンフジオカ、北村匠海、岡田将生 他
脚本:野木亜紀子
監督:村尾嘉昭、山内大典
エグゼクティブプロデュース:三輪祐見子
音楽:髙見優、信澤宣明
主題歌:こっちのけんと『わたくしごと』

著者:ペチ
イメージイラスト:サク

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考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-

3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!

今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?

物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。

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6969b~ろくろっ首~ ドラマ考察系 YouTuber

登録者10万人超えのドラマ考察系YouTuber。

大人気を博した考察ドラマ「あなたの番です」では公式本に考察集団"として掲載され、担当プロデューサーとコラボした経験もあり。

『僕らとエンタメを全力で楽しもう』をモットーに、落ち着くお茶の間のようなチャンネルを目指して活動中です!

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