
平成に取り残された全ての人達へ……。
耳にした当初はどこかよそよそしい感じがした“令和”という言葉の響きは、今や違和感のかけらもない。むしろ最近は「ずっとここにいましたよ?」と言わんばかりの存在感を放っている。
逆に私が生まれ育った愛すべき“平成”は、誰が作ったかわからない“平成レトロ”なんて言葉の後押しもあってか、やたら過去の産物的扱いを受けている気がする。
……ちょっと早くないか?
平成の時間を多く過ごし、地続きの令和を生きている身としては、数字にすれば十数年前の平成の思い出たちは今も色褪せることなく、同じタイムラインに乗っている感覚だ。
しかし、どうやらもう過去の産物らしい。
幼い頃に昭和を懐かしがる大人たちを「古いものを嗜んでいるな~」と見てきたが、平成レトロなんて言葉を口にする今の子達から見ると、私を含む平成組は“そう”見えているのだろう。
なるほど。
だったら受け入れようじゃないの。
平成レトロ最高!!! エモい!!! 懐かしい!!!
どうやら私は過ぎ去った時間の長さを受け入れたくなかっただけなのかもしれない。
増えたのは年齢と体重だけ。年収は増えない。
いつまでも平成に取り残されたあの頃と変わらない精神年齢。
なりたかった大人になれていますか? あの頃の夢、叶っていますか?
そんなノスタルジックな気持ちにさせてくれる平成エモエモ考察ミステリードラマ、
『良いこと悪いこと』(日本テレビ)が10/12(日)に始まった。
平成を生きた視聴者なら、劇中の随所に盛り込まれた懐かしの平成グッズに目がいって仕方ないだろう。
そしてなんと言ってもこのドラマの主題歌は24年前にリリースされたポルノグラフィティ『アゲハ蝶』という、平成に生きた人たちへのツボをどこまでも刺激する仕様。ついついそんな“側”の話をしてしまったが、このドラマは本格考察ミステリーだ。
連続殺人はいわば「チェーンメール殺人」?
同窓会で再会した同級生たちが掘り起こしたタイムカプセルから、6人の顔が塗りつぶされた卒業アルバムが出てきたところから不穏な空気が漂い始め、その塗りつぶされた内の1人である貧ちゃん(水川かたまり)がその翌朝に遺体となって発見される。
そして同じく顔が塗りつぶされていた居酒屋店長のカンタロー(工藤阿須加)も続くように命を狙われ、これからこの塗りつぶされた6人が連続で命を狙われていくのではないか……。というスリリングな展開で第1話は幕を開けた。
久々のド直球考察ドラマ、とにかく面白かった。
顔が塗りつぶされた6人というのは、どの子(新木優子)という転校生をいじめていた6人で、そのいじめ描写は息が詰まるものだったが、それほどまでに酷いいじめがあったのにも関わらず平然と今を生きている6人に対する、被害者のどの子が感じる怒りや不条理さが身に染みた。
そういった過去の罪に加害者たちはどう向き合うのか……?これからをどう生きていくのか……?登場人物達の罪の償い方に注目している。
しかしなんと言っても一番注目すべきは真犯人は誰なんだ? というところ。
まだ第1話時点なので入り組んだ考察は控えるが、この連続殺人は計画する真犯人と実行犯が分かれているのではないかと考えられる。
まずは真犯人の話をしよう。ずばり真犯人は委員長(藤間爽子)なのではないかと私たち6969bは睨んでいる。
というのも過去描写で委員長は、どの子が体育倉庫に閉じ込められる際に倉庫の一番近くにいた。えっ? と思う方はTVerやHuluで見返してみてほしい。かなり小さく映り込んでいる。
その後に、委員長自身がどの子を助けるふり……。いわば自作自演の救出劇をして委員長はどの子と友達になりたいと思っていたところに、キング(間宮祥太朗)らが来てしまった。
そのため作戦は失敗に終わり、彼ら6人に恨みを持っているのではないか……。という考察だ。
そんなことで数十年後に連続殺人をするのか? とも思うが、同窓会の際に委員長はどの子に覚えてもらっていたことをとても喜んでいるように感じた。そのことからも委員長のどの子に対する好意が伺える。
委員長としてクラスの風紀を守りたかったのにキングらに壊され、その後の人生でも夢を叶えられなかった委員長は心が荒み、過去に執着するように。そして思い通りにならなかった根本である、クラスの不穏分子の6人を狙う計画を立てたのではないか……。というのが委員長真犯人説である。
しかしこれだと委員長が成人男性の貧ちゃんをマンションから突き落としたことになる。
小柄な委員長にそんなことが出来るとは思えないため、やはりそこには実行犯が別にいるのではないかと考えられるのだ。
その実行犯こそがカンタローである。彼は酔っ払った貧ちゃんと最後まで一緒にいたし、真犯人から貧ちゃんの住所を教えられていれば先回りして待ち伏せするのも可能だろう。
そして何よりカンタローもいじめをしていた6人の中に入っているという点。
真犯人から“指示された殺人を行わなければ、お前を殺す”とでも脅されていたら、カンタローはそれが動機となり犯行に及ぶのも考えられる。
この連続殺人は、真犯人は指示を出すのみで6人を連鎖的に殺害させ合う構図になっているのかもしれない。
貧ちゃんは幼い頃の夢「空を飛ぶ」になぞらえて転落死させられたように、カンタローも幼い頃の夢「消防士」になぞらえて火災で命を狙われた。
そのようにして、「殺害方法」と「やらなければお前を……。」という脅しの文面を対象者に送り、いわば平成に流行ったチェーンメールのような方法で真犯人は連続殺人を成し遂げようとしているのかもしれない。
とは言っても、その指示を実行したであろうカンタローが狙われてしまったのだから、この考察も綻びはある……。
しかしまだ第1話。そこそこの下地は用意できたはずなので、今後の展開を加味して考察を上塗りしていこうではないか。
共に平成を生き抜いてきた同志達よ。
『良いこと悪いこと』が用意してくれた、合法的に平成に取り残されていい環境にどっぷり浸かってみてはいかがだろうか。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『良いこと悪いこと』( 毎週土曜夜9時~)
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)、徳永えり、木津つばさ、玉田志織、秋谷郁甫、田中美久、宮崎莉里沙、赤間麻里子
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
音楽: Jun Futamata
制作協力:ダブ
制作著作:日本テレビ
主題歌:ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』(Sony Music Labels)
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
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物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。
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