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アウトドアブランド新入社員のソロキャンプ生活

2025.10.12 公開 ポスト

幸せという概念に押しころされそうになる大石祐助

新しい相方、ジムニーノマドで初めてのキャンプです。

 

先代オンボロムーヴでは、あまりに古すぎて時速100キロを超えるとたちまち大破してしまいそうで、県外のキャンプ場へは行けませんでした。

今回は、新しい相方と群馬県のキャンプ場へ向かいます。高速道路にのってキャンプへ行く日が来るなんて。

 

これまでは、あの緑なる一般ゲートで「サイフ、サイフ」とあわてていたのに、神々しい紫なるETCゲートを通れるなんて。

ヴオオオオオとワンピースのラブーン並のけたたましい声をあげてようやく時速80キロ到達できる先代に比べて、新しい相方は一瞬でハイウェイの波に乗れます。

 

しかも、オートクルーズなる未来の機能がついており、アクセルを踏まなくても一定の速度で勝手に走ってくれるのだ。もう何もしなくても、目的地に着いてしまうではないか。感動している間に、群馬に。改めて、キャンプと車の蜜月な関係を思い知りました。

新しい相方は快適に遠くのキャンプ場へ連れてきてくれた

せっかく遠くのキャンプ場へ行くのです。寄り道も醍醐味。

モツ煮定食で有名な永井食堂でお昼を食べます。未だ十時半前なのに、すでに三十人ほどの行列が出来ています。

 

十年前、前職で群馬県に出張した際に、一度きたことがありました。

覚えていることが三つ。最高に美味しいモツ煮が食べられること。行列ができる大人気店であること。そして、白米の量が多くて必死になって胃に押し込んだこと。

 

それを知っていたので、順番を待つあいだ、半ライスにしようかと悩む。

ただ、半ライスは邪道な気がするし、あの頃の自分に負けた気がする。でも、価格はほぼ変わらないのに半ライスを注文できる余裕こそが大人だとして、二十二歳の自分に誇示するか。そうこうしていると先頭になっており、結局ふつうのライスで注文。

群馬で有名な永井食堂のモツ煮定食

うまい。やはりうまい。そして、難なく完食できました。まさか胃袋が成長しているとは。

一般的には二十代の方が食えるはずです。そうか、この十年でキャンパーになっていたからか。というのも、キャンパーという生き物は毎回食材を買いすぎて自ら強制フードファイトを行う特性を持っています。気づかないうちに胃が鍛えられていたようです。

 

群馬を味わい、身も心も大満足でキャンプ場へ向かいます。

道中、東日本一の道の駅である川場田園プラザに寄り道します。

幸せで溢れる東日本一の道の駅、川場田園プラザ

さすがはナンバーワン。休日を満喫するファミリーやカップルで溢れています。

ソロで乗り込む強者は我だけなり。ぼっちであることを悟られぬようサングラスをかけて忍び、農産物直売所で野菜を買います。

 

薄暗い直売所内では、サングラスのせいで野菜がぜんぜん見えない。

ひとまず、今回のメインディッシュであるジンバブエ料理「ニャマ」に必要なトマトを手に取ります。グラサンによって視界が奪われているので、嗅覚を頼りに店内をうろつき、強い香りを放っていたバジルを手にとりレジへ。

 

会計を済ませ、車へと戻ります。

直売所を後にし視界に映るは、ChatGPTに「休日、幸せ、風景」で画像生成をさせたような象徴的幸福景観。さきほど購入したバジルを鼻の下にあてがい強烈な香りを吸引し、この幸せで満ちた空間にぼっちでいる現実をぼやかす。

 

ああ、あぶなかった。

幸せという概念に押しころされてしまうところだった。命からがらキャンプ場へ到着しました。ここからが本番です。

 

道の駅で休日を謳歌するカップルが愛睦じく食べるソフトクリームの味は知らないけれども、私はキャンプ場で独り淡々と食べるニャマの味は知っている。

 

ええ、これで私の勝ちです。

 

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