
ついに入渓です。
これまでは釣り堀でしかフライフィッシングをしたことがありませんでした。
今回は、川へ入って釣りをします。これこそがフライフィッシングの本流です。

いざ渓流へ。眼下に広がるターコイズブルーの澄みきった川が呼んでいます。
はやる気持ちをおさえて、ゆるりと流れる川にどぽんどぽんと入る。
六月下旬の水はひんやりとしていて気持ちがいい。川の流れに逆らい、魚がいそうな場所を探しながら、じゃぶじゃぶと上流へと登っていく。この音と、この抵抗感が小学生の頃キャンプで父とした川遊びを思い起こさせます。
大きな川に隣接したキャンプ場へいくのが、夏休みの恒例行事でした。
いまかいまかと父が設営を終えるのを待ち、一緒に川で遊んだ。反対岸に渡ったり、水中眼鏡をつけて魚を探したりした。とくにファンタとビールを冷やすダムを石でつくるのがいちばんのお気に入りでした。
小学生だった私は、時に急流に足元をすくわれ命の危険を覚えることもあったが、すかざす父が受け止めてくれた。
いま自分は当時の父と同じくらいの年齢だろうか。受け止める息子はおらず、ただただ己の脛が冷えていくのを感じていた。
ちがうちがう。センチメンタルになりにきたのじゃない。魚を釣りに来たのです。
我に返り、再び上流を目指してざぶざぶ進んでいく。
渓流でのフライフィッシングは初めてだが、なんとなしにあそこにいそうだなとわかります。皮膚が焼けるほどのカンカン照りなので、魚たちも日陰にいるにちがいない。

木陰の青が濃くなっているところへ、竿を振り擬似餌を飛ばす。ぴゃんと水面にフライが落ちる。この動作をなんども繰り返します。五回目くらいでした。
とっぷん。
魚が擬似餌に喰らいついた。すかさず竿を立てる。
ひいてる。ひいてる。大物かもしれない。これまで釣り堀で特訓をしてきたが、引きが強い気がします。やはり自然の中でのびのびと暮らす魚の方が生命力があるのでしょう。

あせらない、あせらない。バラさないように徐々に引き寄せていく。
川岸に魚が近づいたタイミングを見逃さず、網を滑らせる。よしっ。釣り上げることに成功です。
ぴかぴか七色に輝くニジマス。
自然が生み出す美に畏敬の念を感じざるを得ません。どんなに絵の具を混ぜても、ニジマスの放つこの色彩は再現できない。
ありがとう、ニジマス。感謝を伝え、川へと返す。
すーっと紺碧の奥へと消えていきました。渓流で初めてのフライフィッシング。釣れて大満足です。
帰り道、登った川を下りながら、はたして我が子に川遊びを教える日は来るのだろうか。そんなことばかりを考えていた。


アウトドアブランド新入社員のソロキャンプ生活

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