
今現在、長らく私の推しであるソシャゲFate/Grand Order(FGO)の土方歳三に改修があったりと、大変なことになっているらしい。
らしい、というのは、何故か昨日から私はこのゲームにログインできなくなっており、自分の目で確かめることが不可になっているからだ。
ちなみにログインできないのは私だけのようだ。
こういうパーティから締め出される経験は一度や二度ではない、と言いたいところだが、そもそもパーティに招待されるところまで行かなかった人生である。
そういう意味では今貴重な体験をさせてもらっていると言えるが、純粋につらい、これが一時的なものだったらいいが、永久にログインできないとすれば、人生からログアウトが視野に入ってくる。
しかしパーティ会場の外でダンゴムシの裏側を見ながら「キモ過ぎる、よく子供の時これをダンゴにする気になったな」と思いながら、少しホッとしている自分もいる。
自分の目では確かめられないが、伝え聞く情報だけでも「オイオイオイ死ぬわ俺が」としか思えないのだ。
推し活が一般化したことにより「推しが死んだ休暇」や「推しが結婚した休暇」「徹子の部屋に美輪明宏が来る休暇」ぐらいまでは理解を得られるようになってきた気がするが「推しに新モーションと新規絵が来た休暇」は受理されないような気がするし、推しジャンルが過疎っている人間からの暴行により傷病休暇が始まってしまうまである。
推し活は、仕事などイマイチ乗り気になれない作業に立ち向かう気力になるものだが、のめり込みすぎると、推しのことが気になって何も手につかない、気力根こそぎ持っていかれ状態になる場合もある。
よって、私が今ゲームから締め出されているのは、極刑間違いなしだったものに何故か執行猶予がついた状態でもあり、若干助かったとすら思っている。
もちろん、何故か執行猶予中に1回目よりさらにすごい罪を犯すやつがいるように、私も期間中に何とかゲームに入れるようにして死ぬつもりではあるのだが、その猶予を与えられてちょっと安心したりはしている。
推しの動向で気がそぞろになるというのはよくあることだが、悲報はもちろん吉報でも取り乱すというのが厄介なところである。
もちろん悲報よりは吉報の方がいい、だが、悲報に対する感情が主に悲しみの怒りなのに対し、吉報は感情すら超えて「生命の危機」を感じたりするので、ある意味こちらの方が重篤だ。
しかし、カップ焼きそばが喉に詰まった時だけ「生きてる」と感じるように、生命が脅かされることによって得られる快感があるのも事実だ。
だが、その快感を追い求めすぎると勢い余って死ぬ恐れがある。
その点オタクはすぐに「死ぬ」と口にするが、今のところ推しが原因の「尊死」が確認されたという話は聞いたことがない。
つまり推し活は最も安全に、生命を危険に晒せる趣味と言える、少なくとも冬季エベレスト単独登頂とかよりは安全だ。
危険地帯にばかり行く冒険家の人も「俺もできればこんなところに行かずに人生に満足したい」と言っていたので、家から出ず、スマホの中から出てこない人のことで生を感じられるのは幸せなことである。
ところで昨日Xのおすすめ欄で、「明日重大発表があります! お楽しみに」とつぶやいている、今人気のアイドルグループの公式アカウントを見かけた。
完全に他人事ながら、このアイドルファンの人たちは、この投稿を見てから重大発表までの時間、大丈夫なのだろうかと思ってしまった。
この口ぶりからして、解散や脱退、メンバーの逮捕発表とかではなく、吉報なのだろう。
だが、果たして自分に受けとめ切れるレベルの重大さなのかという不安、受けとめられるように今からメジャーリーガー級の増量をはかるべきなのかという焦りで発表まで気が気でないだろう。
大きなイベントの発表なら、資金の調達、日程の確保、死んだことにする親戚の数など、各種調整で忙しくなってくる。
しかしこれは「嬉しい悲鳴」という奴であり、それが野太すぎて断末魔に聞こえているというだけだ、推しのことで一喜一憂できるのは、幸せなことであり、何より平和なのだ。
そんなことを言っている間に、アイフォーンのデータを消していいのかどうかわからないものまで消したのが功を奏し、FGOにログインできそうである。
では、さらばだ。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

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