
世界幸福度ランキング1位にも輝いた南太平洋の島国・フィジーで、17年間暮らした永崎裕麻さん。待望の新刊『余白をつくる練習』の発売を記念して、元・京都芸術大学副学長で、「学習学」の提唱者として知られる本間正人さんとの対談が実現しました。後編では、余白よりも大切な「余白感」について、そして人生の「春夏秋冬」について、お二人に存分に語っていただきました。
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余白よりも大切な「余白感」
永崎裕麻(以下、永崎) 「余白がない」って、みなさんよくおっしゃいますよね。でも、それって錯覚じゃないかと思うんです。もちろん、本当に余白がない人もたくさんいますが、そう思い込んでいるだけの人も、けっこういるなと思っていて。
とくに僕の年代はそうだと思うんですけど、子どものころ、習いごとで毎日すごく忙しくて。僕も野球とか、水泳とか、やたらやっていたんです。大学生のときも、空き時間をサークルやバイトにどんどん投入していくから、ヒマな状態に慣れていない。
こんなふうに、子どものころからずっと忙しいから、「自分がヒマなわけがない」という感覚の人が多いんじゃないかと思います。
本当はヒマがあるんだけど、自分は忙しいに違いないって思い込んでいる人がけっこういるなと思っていて。だから、「それって錯覚じゃないですか?」っていうことは、ここで問題提起しておきたいです。
あと、もうひとつ言いたいことがあって、余白が大事というよりは、「余白感」のほうが大事だと思っているんです。本間先生なんて、まさにそうじゃないかな。余白はあんまりないですよね?
本間正人(以下、本間) 人から見たら、ないように見えるかもしれないね。
永崎 実際、いろんなことやってるじゃないですか。だから余白はないかもしれないけど、でも余裕はあるように見えるんです。余裕をちゃんとまとうことができているタイプの人なんじゃないかな、って思う。
「今日、めっちゃスケジュールが立て込んでいるけど、でもコーヒーを飲む時間はあるな、その時間さえあれば別にいいか」みたいな。そういう「自分には余白があるんだ」っていう感覚があるかどうか、そっちのほうが大切な気がします。
本間 余白がなかったとしても、余裕を持つことができたら、ウェルビーイング度はかなり上がると思います。余白の次は、余裕について探求したらいいと思うな。幻冬舎から本が出て、ベストセラーになるんじゃないかな(笑)。
永崎 本当ですか(笑)。でも今、本間先生が言ったみたいに、余白がなくても、考え方しだいで余裕っていうステージに行けそうだなと思います。
僕は「余命の学校」という活動をしているんですが、「終活」をすることが余裕を生むと思っています。
「余命の学校」は、自分の余命が60日しかないとイメージして、残りの60日を過ごすというものです。実際にやってみると、あのとき死んでいたのだから、今はおまけみたいな人生だな、ボーナスステージだなって思えるようになります。
こうした捉え方ができるようになると、余裕をもって日々を過ごすことができるようになる。つまり、余裕というのは考え方しだいで入手可能なものだと思うんです。
本間 大病をして死の淵から生還した人も、これからの人生をどう生きるか考えたときに、やらなくちゃいけないことをやるとか、義務感で何かをやるとかよりも、自分の生き方を見直す人がいますよね。余白、余裕、余生、この「余」シリーズ、いいかもしれないよ。
今、自分が心から望んでいることは?
永崎 昨日、人生を春夏秋冬にブロック分けするとしたら、今、自分ってどのフェーズかなって考えていたんです。僕はこれまで夏の気分でいました。ずっとこのまま夏が続けばいいなと。でも、秋の入り口にいるんじゃないかなと思ったんです。
本間 裕麻さんは、まだ秋じゃないよ。秋だと思うなら、南半球行ってごらんなさい、春だから。空間的な移動によって、人生の季節はコントロールできると思う。春夏秋冬っていう順番を踏まないといけないなんて、そんな変なルールに従わなくちゃいけない理由はまったくないから。
永崎 たしかに、そうですね。でも、僕の中で秋っていうのは余白的な季節というか、味わう季節だなと思っていて。僕はこれまで100か国以上を旅して、フィジーに移住しました。でも、あと100か国回ったら、1位はフィジーじゃなくてグレナダでした、トリニダード・トバゴでした、となるかもしれない。
そういう派手な目標設定もいいかなと思ったんですけど、今の自分に問うたとき、「いや、それより息子とキャッチボールしているほうが絶対面白いわ」って。自分が心から望んでいるのは、そっちだと思ったんです。
もう少し、身近なところに目を向けるみたいな。そういう味わう時期にしたいなっていう意味で、秋っていう表現を使っています。
でも、本間先生がヒントをくれたなと思いました。秋の次は、夏の可能性もあるなって。「春夏秋冬の順番をめちゃくちゃにしてやれ」っていう、新しい発想をいただきました。
本間 僕たちは、地球と同じ軌道で公転する必要はないからね。自分で自転したらいいんですよ。
※本記事は、永崎裕麻 × 本間正人『余白をつくる練習』出版記念特別対談『人生100年時代の"余白"と"学び"』の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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『余白をつくる練習』出版記念イベント第2弾開催決定!
10/31(金)開催 安藤美冬 × 永崎裕麻「⾃分に帰る旅 〜“余⽩”と“直感”で心の声に耳を傾ける夜〜」
忙しさや情報過多で自分の感覚を見失いがちな現代人。「余白」と「直感」は自分らしい生き方を見つけるためのヒントです。異なる環境で生きる二人が、「余白」と「直感」をキーワードに交差する、一夜限りの特別な時間。忙しさを誇る時代は終わり、いま問われているのは、どう余白を確保し、どんな感覚を信じて生きるか。二人が体験してきた「余白」について語っていただきます。
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余白をつくる練習

効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。
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