
世界幸福度ランキング1位にも輝いた南太平洋の島国・フィジーで、17年間暮らした永崎裕麻さん。待望の新刊『余白をつくる練習』の発売を記念して、元・京都芸術大学副学長で、「学習学」の提唱者として知られる本間正人さんとの対談が実現しました。前編では、「余白」という言葉の再定義と、「余白」をつくって人生に自分時間を取り戻すための心がけを教えてもらいました。
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余白とは「いつもと違う時間」のこと
永崎裕麻(以下、永崎) 「余白」って、捉えどころのない言葉だなと思っていて。近い言葉はなんだろうと考えてみたんですが、「その他」っていう言葉が浮かんだんです。
たとえば、紙に文章がばーっと書いてあったとして、何も書いていない部分を指して余白といいますよね。余白には、「その他」というニュアンスがあると思うんです。
「その他」って、単体では説明できない言葉ですよね。たとえば、「本間先生と僕と、その他の人々」のように、「その他」の前には必ず何かつきます。余白という言葉も、それに近いと思うんです。
余白って、「ボーっとする時間、何もしない時間こそが必要だ」みたいな文脈で、よく使われると思うんです。でも、ふだん何もしていない人からすると、仕事をしている時間のほうが「その他」ですよね。その人にとっては、仕事をすることが余白的な活動になる。
つまり、余白っていうのは「いつもと違う時間」のことなんじゃないか、と。
日本人のようにたくさん仕事をしている人にとっては、ボーっとする時間が余白的でしょう。でも、ふだん余白の多い人にとっては、過密的な時間のほうが余白的なんじゃないかと思うんです。
本間正人(以下、本間) 僕の同級生でもリタイアして、今は「毎日が日曜日」っていう人たちがいるわけ。そういう人たちは、駅伝に参加したり、ゴルフをしたりすることが日常になっているんだけど、たまに頼まれてプロジェクトを手伝うと、仕事モードになる。その仕事の時間が、彼らにとっての余白なのかもしれない。
永崎 そうですね。僕も、そんな感覚で捉えています。
よく「ボーっとする時間」とか「何もしない時間」が大切だと言われますが、実際にそれをやりますかというと、あまり日本人にはフィットしない気がします。
「何かしていたいです」「効率的でありたいです」「それってムダな気がします」といった気持ちが強くて、むしろ罪悪感が生まれてしまう。それなら、無理にボーっとしなくていいと思います。
「Do Nothing」が難しいのなら、「Do Something Different」。つまり、何かいつもと違うことをやるほうが、余白の価値が伝わるのではないかと思っています。
義務から解放されている時間をつくる
本間 結局、オンとオフの切り替え、メリハリが大事なんですよね。オン・オン・オン・オンと続くと擦り切れちゃうし、逆にオフ・オフ・オフ・オフになるのもだらけちゃう。
日本人だと、オンが9でオフが1くらいだから、「余暇を大切にしよう」みたいになる。フィジーに行くと、オンが3でオフが7くらいだから、「もうちょっと仕事しよう」ってなるのかもしれない。
裕麻さんが「ボーっとする」とおっしゃっていましたよね。脳科学的に言うと「デフォルト・モード・ネットワーク」という研究があって、ボーっとしているときが、実は脳がいちばん活性化しているんです。
このデフォルト・モード・ネットワークが脳の建設的な働きとしてすごく重要で、逆にデフォルト・モード・ネットワークをうまく活用できないと、脳疲労がたまっていい考えも浮かばなくなる。
だから、気持ちが感じているオン・オフと、脳が感じているオン・オフって、逆転している可能性があると思うんです。
永崎 これも本間先生に聞きたいなと思っていたんですが、「義務」というのもキーワードじゃないかと思っていて。
余白の定義は「いつもと違う時間」だと言いましたが、別の定義をするなら「義務から解放されている時間」と定義したいと思っているんです。
義務を感じている時間が、われわれは長いんじゃないかと思います。「やらなければ」「しないといけない」という感覚で動いている。
それこそ本間先生が、著書『100年学習時代』の中で書かれていたように、「教育」と「学習」の違いみたいなことですね。みずから主体的に学びたいという気持ちを大切にするのが学習で、外から与えられる「やらなければならないもの」が教育。
義務を感じずにいられるなら、それは余白的な状態なんじゃないかと思うんです。逆に、義務感を感じている状態が続くと、脳疲労がたまってしまう。どれだけスケジュールが埋まっていたとしても、「これは義務ではない」と思えてさえいれば、脳疲労は生まれないんじゃないかなと思いました。
本間 まったくそうだと思います。ストレスレベルって、自分で環境をコントロールできないと上がるんです。自分で選んで、自分で決めて、人生を自己決定できていると思うと、ストレスレベルは下がります。
義務というのは、自己決定力を外から奪われている状態なので、そこから解放される時間があるのは大切だと思いますね。
※本記事は、永崎裕麻 × 本間正人『余白をつくる練習』出版記念特別対談『人生100年時代の"余白"と"学び"』の内容を一部抜粋、再構成したものです
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余白をつくる練習

効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。
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