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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

2025.10.13 公開 ポスト

10月 実りを言祝ぐ

「陽」と「陰」が分け合って同居する「秋ならでは」の味わい方桃虚(神職/ライター)

「秋」を楽しめるようになると、大人になったなあ、という気がしますが、実際に根拠があるようです…!?

神職さんが教えてくれる『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。

*   *   *

秋というのは「陽と陰」を分け合って同居している季節です

日本人は、春は花見秋にはもみじ狩りに出かけては、その美しさを言祝(ことほ)ぎ、愛(め)で、鑑賞と言っては盃をくみかわしてきました。それは神様を言祝ぐ、神様と遊ぶということでもあったのです。

とはいえ、赤や黄色に染まった葉に秋をしみじみと感じる文化は、中国にもありました。

林間に酒をあたためて紅葉(こうよう)を焼(た)く 石上に詩を題して緑苔(りょくたい)を掃(はら)ふ

これは「和漢朗詠集」の巻上に収められた、中唐の詩人、白居易(はくきょい)の詩です。林の中で、紅葉を集めて燃やし、酒をあたためる。石の上の苔(こけ)を掃いおとして、詩を書きつける。

「いいよね」という世界をそのまま描写した、ただそれだけなのですが、秋の味わいがぎゅっとつまっていますよね。

お酒から立ち上る湯気と、もみじの色と、火のあたたかさ。それに対比するような苔の緑と石のひんやり感

これこそ「陽」と「陰」が分け合って同居する秋ならではの味わいではないでしょうか。

(イラスト:宮下 和)

そして秋が深まるにつれ、「陰」が強くなっていきます。

空気が澄んで、夜の月もよく見える。控えめな秋の虫たちの声。澄み切っていく心。研ぎ澄まされていく五感。そこにふとおとずれる、さみしさ。

秋の味わいは、大人になるほどしみじみとわかるものなのかもしれません。

見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ

これは藤原定家のあまりにも有名な歌で、たしか高校生のころに習ったと思うのですが、当時はちっともぴんときませんでした。

「見渡してみると、美しく咲く花も見事な紅葉も見たらないことだよ。浜辺の粗末な漁師の小屋だけが目に映る、なんともわびしい秋の夕暮れであることよ」という歌です。

「花」は桜で、「紅葉」はもみじ。それらを見渡しているかと思ったら、「なかりけり」。

大阪の人なら「ないんかい!」とつっこむポイントです。でも、「なかりけり」ですべてがなくなるわけではないのです。花ともみじが残像として、ふわっとある。そこに、漁師の粗末な小屋が見えているよ、という、絶妙なあんばいです。

花やもみじの「陽」がうっすらと残像のように遠くにあり、寒くて粗末な小屋にフォーカスされて「陰」が近くにあることを知る。そんな秋の夕暮れの、うらさびしさ。それも全然、悪くないですよね。むしろ良い。味わい深い。

(イラスト:宮下 和)

神様たちによって「もみぢる」植物を愛でる秋。世界は神々からの贈り物にあふれていることを知る収穫の秋。私の生まれた国、インドでは、この時期にヒンドゥー教の新年を迎え、収穫と新年をまとめて祝う「ディワリ」というお祭りをして盛り上がるので、なんとなく血がさわぐ季節でもあります。

「ディワリ」では、家をそうじし、清めて飾りつけするところが、日本の年神様迎えに似ています。「ディヤ」と呼ばれるオイルランプを灯し、家族や友人と集まってお菓子を食べる。豊かさの女神、ラクシュミーを祭り、ディワリセールが各地で開催され、消費が活発になる。そんな福々しいところも、日本のお正月に通じるものがあります。

それにしても、日本人は、夏に怨霊の神様をもてなしてお祭りをし、10月の実りを神様に感謝してお祭りをし、その2カ月後には新年の年神様を迎えてお祭りをするのですから、相当、お祭り好きな民族と言えるのではないでしょうか? 

それもこれも、日本の季節が豊かで、たくさんの神様がいるからですよね。

関連書籍

桃虚『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』

古(いにしえ)より、「生活の知恵」は、「運気アップの方法」そのものでした。季節の花を愛でる、旬を美味しくいただく、しきたりを大事にする…など、毎月を、楽しく&雅(みやび)に迎えれば、いつの間にか好運体質に! 四季を「見る」「聴く」「匂う」「触る」「味わう」……。 「五感」を磨けば、1年間幸運がめぐり、運だけでなく、体も、脳も、生活も、みるみる華やぎます! ポイントは、小さな変化を敏感に感じとり、そして”楽しむ”こと。 四季の豊かな日本には、古来から、その楽しみ方のノウハウがたくさん伝わってきています。

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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。

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桃虚 神職/ライター

1970年インド(ムンバイ)生まれ、東京育ち。 ライター業を経て、大阪府枚方市の片埜神社にて神職歴20年。 「神社新報」で連載など。筆名の「虚(とうきょ)」の、「桃」は無邪気の象徴、「虚」は素直な心を表す

最新刊に『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』。

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