SNS総フォロワー100万人超のインフルエンサーであり作家のZ李さんの新刊『君が面会に来たあとで』が11月19日に発売されました。本書は、歌舞伎町を生きる人々の葛藤や、人情味あふれる人間模様などを恋愛、ホラー、SFなど様々なタッチで描いたショートショート集。発売を記念して、日本各地の炊き出しの現場を取材した『ルポ路上メシ』(双葉社)が発売されたばかりの、ルポライター國友公司さんとの対談が実現しました。たまたま本の発売日が一緒だったというお二人。前編では國友さんが昔、歌舞伎町に住んでいたというエピソードから話が進み……。
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エリアによって違う、歌舞伎町の持つ複数の顔
國友公司(以下國友):『君が面会に来たあとで』は小説ですけど、実際歌舞伎町に行くと、いろんなところで、いろんなことが同時に動いているような気がします。
Z李:西新宿の高級ホテル、ハイアットのあたりとかがまさにそうですよね。『ホムンクルス』とか『殺し屋イチ』の山本(英夫)さんは、新宿のことをよく見てるなと思います。今はちょっと、小池さん(都知事)に引っ越しさせられちゃったんですけど、山本さんが中央公園のホームレスゾーンとハイアットの対比を描いてて。俺もホームレスの人たちに向けて炊き出しとかをやっているもんだから、こっちとあっちで全然違うなっていうのは感じています。
國友:僕は『ルポ歌舞伎町』(彩図社)の執筆の時には歌舞伎町に住んでいて、そのあと街を離れて、一年くらい経つんですが、実はその時、ヤクザマンションに住んでいたんです。
Z李:ヤクザマンション、意外といいですよね。マンションの中で、大声出したりとかトラブったらいけないよって言われてる。たしか、マンションの近所にもう一個ヤクザ事務所があったのが、近くに小学校があるとかが理由でパクられちゃったでしょ。そういうのもあってか、ゴミ拾いしている人もいたり、意外と治安いいですよね。
國友:そうなんです。意外といいんですよね。
Z李:俺が國友さんに取材してほしいのは、歌舞伎町違法賭博従事の人。裏カジノ店とかインカジ(インターネットカジノ)とかの店員の人生って、結構いろんなドラマがあるんです。たとえば、インカジで金を盗んで、また別のインカジでも盗んで、偽名で裏スロで働いてる、みたいなやつとかが、バレてさらわれたりとかもありますし。
歌舞伎町って社会から脱落しちゃった人たちの実質的な受け皿。パクられちゃったようなやつが働いてたりするんですよね。若い店長からゲンコツ食らってる、50歳ぐらいの店員とかがいるんですよ。東北に娘がいて、1億円が必要だからとか、結構しんみりしたドラマもある。ホームレスと同じくらいドラマがあるんじゃないかな。
國友:まず普通の生き方をしてたら、あそこで働こうとは思わないですよね。
Z李:そう、だから絶対面白い。面白いって言ったら彼らに失礼だけど、何かがあった、イコール面白いってことは確定しているんですよね、物書きからすると。だって、裏スロの店長を捕まえて、どんな暮らしだったのって聞いてみると、絶対に何かあるわけですよ。借金があったりとか。あとはもう、その人が虚言癖で、生い立ちとかを聞いても全部嘘だったなんてこともある。

國友:そういえば僕、横浜の寿町も取材しているんですけど、ドヤに住んでいるおじさんが、昔、錦糸町の闇カジノの店長をやっていたって話を聞いたことがあって……パクられて寿町に出て来たらしいんですけど、その捕まったときの聞き取りの刑事の名前が「梶野」。
Z李:それはすべらないですね。
國友:めちゃくちゃすべらないですね。しかもその人、ずっとその話をしてくるんですよ。
あと僕、小説の中に出てくる“内見”風俗はめちゃめちゃ行きたいなと思いました。
Z李:あの、浩志がとぼけて言うシーン(「チャイエスの客が消えた」)ですね。面白いコンセプト店を想像して書いたんですけど、実際はまだないんじゃないかな……。
でも、そういうシチュエーションのAVは結構ありますよね。以前、裏アカ男子が超高級タワマンの内見に行って、そこでハメ撮りをするってコンテンツを販売していたら、場所が特定されたことがありました。部屋の価値が毀損したみたいな訴訟をされて、かなり請求されてたやつもいましたね。
覚醒剤中毒者のリアルを小説に
國友:そういえば、シャブ中(覚醒剤中毒者)が多いと言われているドヤ(日雇い労働者などの簡易宿泊所が集まる地域)がいくつかあるんですよ。それについてはどう見ていますか?
なんで1か所に集まるんだろう? 自然とシャブ中が増えていくってわけでもないだろうし……。
Z李:最初はラブホ、ラブホより安いのは個室ビデオ、個室ビデオより安いのはドヤってなっていくんだと思います。
あとは、なんとなく受け入れてくれるような雰囲気があるんじゃないかな。みんなやってるから、別に通報はしないだろう、みたいな安心感がある。
國友:なるほど。移動していくんですね。
Z李:そういえば、どうしてシャブ中はよく裸になるんだろうって、調べたことがあったんです。いろんな文献とかも読んだんですけど、「4つの要素」が重ならないと警察署に“裸凸”はしないんですよ。
まずは、体温調整機能がおかしくなって、38度とか39度とかに平気でなるんです。それで、暑いから服を脱ぎたい気持ちになる。
あとは「蟻走感(ぎそうかん)」っていう、体に蟻が走る感じが出てくる。そうすると、体がムズムズするから、余計に脱ぎたいってなるんです。
でも、普通に考えたら、人がいるところで脱いだらいけないじゃないですか。それが、シャブで寝ていないと、意識が朦朧とするので正常な判断ができない。覚醒剤の作用じゃなくて、覚醒剤による不眠作用で、脳がちゃんと働かなくなって理性が飛ぶんです。
暑いし、ムズムズするし、理性も働かない。まずはこの3つが揃うと裸になっちゃうんですよね。
最後の4つ目は、被害妄想。「FBIに追われている」というような妄想から、誰かに助けを求めなきゃとなる。そこで、突発的に助けを求めに行く先が交番なんですよ。交番か、110番です。そして、その時は裸なんです。
國友:なるほど。
Z李:あと、被害妄想で言うと、知り合いにパソコンを分解しちゃったヤツがいました。パソコンの上の方に赤く光るライトがあったらしくて。スリープモードの時にピッピッみたいに光るやつです。それを見て、監視されていると思ったみたいで。
國友:『君が面会にきたあとで』にも、マンホールから赤い光が見えるって話(「下水道の配達」)がありましたよね。シャブ中の話(「日曜日ダルク十六時」)も。
作品の描写って、結構実際に起きたことから着想を得てるんですか?
Z李:それはあるかもしれないですね。本当にいろんなものを見てきたから、変なことをいっぱい知っているんです。それが活かされて、面白い言い回しとかもできているのかもって思います。

この本の中には、俺が留置場にいた時に書いたものが結構あります。雑居にいた周りの人たちに読んでもらって、その時の反応で、どういうのが面白いかっていうのがよく分かりました。まあ、つまらないとは言えないと思いますけど、顔色を見れば、本当に面白がってるかって結構分かるじゃないですか。たぶん、本当に面白がってくれてたと思います。
そういえば昨日、1年懲役行った子が「出てきたら何もない。どうしよう」って言っていたんで、10万円振り込んであげたんですよ。俺が連載している受刑者向けの雑誌「Chance!!」の宣伝になるなと思ったんです。前科があっても再就職できますよってね。
そうしたらその子が、刑務所の中で俺の本は大人気でみんな持ってたってつぶやいてくれてました。ありがたい話ですよね。
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後編もお楽しみに。
Z李さんの新刊『君が面会に来たあとで』、國友公司さんの新刊『ルポ路上メシ』(双葉社)、どちらもぜひチェックしてみてください!
君が面会に来たあとで

Z李、初のショートショート連載。立ちんぼから裏スロ店員、ホームレスにキャバ嬢ホスト、公務員からヤクザ、客引きのナイジェリア人からゴミ置き場から飛び出したネズミまで……。繁華街で蠢く人々の日常を多彩なタッチで描く、東京拘置所差し入れ本ランキング上位確定の暇つぶし短編集、高設定イベント開催中。











