
今年は10月6日がお月見です。「満ちた状態、完全体としての満月」にあやかって、美しくなりましょう!
神職さんが教えてくれる『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。
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月見だんごは、お月様へのお供え。完全体としての満月にあやかる、仲秋の名月
秋といえば「仲秋の名月」。月見だんごを連想する方も多いでしょう。
月見だんごは、かならず木の台にのせられていますね。これは、「三方(さんぼう)」と呼ばれるもので、神様へのお供えものをのせる台です。
ということは、月見だんごはお供え物なのです。

誰にお供えしているのかというと、「お月様」です。
神社では、神様にお供えした食べものを下げてきていただくことは、「ご神威(しんい)をいただく」ことを意味します。
平たく言うと、お供えした食べ物には、神様の威力がそなわっているので、それを体に取り込むという行為なのです。
お祭りのあとの直会(なおらい)で、お供え物を下げてきてみんなでいただくことには、そういう意味があります。
いやあ、ご神威と言われると、すこしハードルが高いなあ。と思われる方も、いったんこちらを想像してみてください。
三方にのせられ、名月の月光を浴びただんごと、そうでないだんご。
正直、だんごの成分が変わるわけではないけれど、名月の月光を浴びただんごのほうが、なんかいい気がしませんか?
私は、この「なんかいい気がする」という感覚がとても大事な気がしています。
同様に、空の澄んだ秋に満月を眺める、ということも、「なんかすごくいい」気がしますよね。根拠はないけれど、なんだか自分の心身にいい作用をおよぼして、運が拓かれる感じがします。ただ眺めるだけなのに。
この感じをあえて言語化してみると、近いところで日本語には「あやかる」という言葉がありますよね。漢字で書くと「肖る」、肖像画の肖です。
辞書で調べてみると、「めでたいもの、幸福な人に似て自分も幸福に恵まれる、またはそうなるように願うこと」とあります。
「あやかる」の語源は「あや(形、模様)を借る」だと考えられていますが、形や模様とは、視認するもの、つまり光ですよね。ある物体が反射している光が、目を通して、私たちの脳で形や模様として認識されているわけです。
私は美術館に行くのが好きなのですが、絵や作品を見るということも、つまりはその物体が反射する光を、目を通して体に入れている感覚です。
だから、美しいものを見ると、自分が美しくなる気がするのです。
そう考えると、「満月を見る」ということは、「円のかたちをした光」を見ている、摂取していることになりますよね。
円のかたちをした光。
いかにも、福徳のご利益がありそう。名月のように、静かであかるく、まるく美しくなれる気がします。

神社の拝殿に、丸い鏡があるのをごらんになられたことがあるでしょうか。鏡そのものは、ご神体ではありません。ご神体は、本殿の御扉(みとびら)の中に鎮座されています。あの丸い鏡はとてもいろいろなことを示しているのですが、そのひとつは「鏡に映し出されるものすべて(自然界のあらゆるもの)は神であるということ」だと言われています。
また、仏教では「円」は空、風、火、地を含んだ世界全体を表し、悟りや真理の象徴であり、見た人の心を映し出すものでもある、とされています。
満月を見上げ、円のかたちをした光を見るということは、これらのことを体感し、「満ちた状態、完全体としての満月にあやかる」ということのように思われます。
月見だんごは、満月に似せた丸い形をしていますよね。満月を眺め、月見だんごをお供えして、月光を浴びた月見だんごをいただくことによっても、月の力をいただく。そんな意味があるように思うのです。
(つづく)
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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。
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