
定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』では、四季のはっきりした安曇野での暮らしやおしゃれの工夫、毎日をごきげんに過ごす秘訣など、80歳を迎えた德田さんの心豊かな日々をご紹介しています。本書より、一部をお届けします。
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布一枚で部屋の印象は変わります。手作り小物で模様替えを楽しむとっておきの時間
ここの暮らしは時間がゆっくりと流れます。手作りしている時間は夢中になってあっという間に過ぎていきます。私は、特に布を使った手作りが得意で大好きですが、布の魅力って、布一枚で部屋の印象を一変できること。なので、よく模様替えに布小物を手作りして活用しています。
移住で見えてきた自分の好きなものやスタイルは、シンプルでベーシック。だからこそ、布小物ひとつだって、ベーシックなものには映えるので、気分や居心地を高めることが簡単にできるんです。
例えば、キッチンのシンク側の窓に、数字がランダムに踊った楽しい柄のブルーの布を、フックとピンチで吊り下げてブラインド代わりにかけてみました。ブルーのタイルと色を揃えたのもポイント。手前にぶら下げた調理器具のシルエットが映えて、楽しい雰囲気になりました。
こうした手作りの小物は、時間がたっぷりとれる冬ごもりの季節に作ることが多いです。ハート柄のクッションカバーもそのひとつ。最初は椅子と同じ茶系のクッションにするつもりでした。それはそれで統一感があって洗練された雰囲気になるけれど、途中でちょっと面白くないな、と感じて。そうだ、大きなハートをつけたら面白い! ってひらめいて作ったものです。
色は家のテーマカラーに決めたブルーをブレずに採用。ハートのフォルムが愛らしく、キュートなアクセントになってくれました。こうしてうまくアイデアがはまったときは、とても充実感があるものです。
簡単なものは手作りで。私にとってそれが心地よい暮らしのマイルール。今、ものはネットショッピングや100円均一のショップなどで手軽に手に入る時代ですが、私はあえて手間をかけて、手作りする時間がとても好きです。作業に没頭して、無心になれるから。また、ものを生み出すことってとても豊かな気分になれると思いませんか。簡単な小物作りであっても効果は絶大です。
うまくいかない日もあるし、気分が浮かない日もある。それは人間誰しも、あることですよね。私にとって、手作りしている時間はそうしたこともすべて忘れて、没頭できる大切な時間なのだと思います。なにしろ、生み出したものは、部屋の雰囲気まで一新してくれるから、手作りすると、ポジティブな時間を過ごした充実感と達成感が得られます。私はそうした手作りのパワーをとても信じています。


80歳、私らしいシンプルライフ

定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』が8月6日に発売となりました。本書より、試し読み記事をお届けします。