
定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』では、四季のはっきりした安曇野での暮らしやおしゃれの工夫、毎日をごきげんに過ごす秘訣など、80歳を迎えた德田さんの心豊かな日々をご紹介しています。本書より、一部をお届けします。
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ものをひとつひとつ整理したことで、自分が一番好きなものが見えてきました
移住は、新しく始まるこれからの暮らしに必要なものを見直すいい機会になりました。東京にいるときは、ついあれもこれもと買い物をしていましたが、暮らしていたマンションは収納スペースが十分にあって、ものをため込んでしまいがちでした。そんな便利な都会からはるか離れた安曇野への移住。ものの整理に思い切れる絶好のチャンスになりました。
移住を決めてから実際に引っ越すまで2年ほど時間があったので、ものをひとつひとつ吟味しながら整理することができました。大きな家具から食器類、仕事柄増えてしまった衣類など、ありとあらゆるものです。
まずは「使うものだけを残す」ことを大前提に、ふるいにかけていきました。でも、「捨てる」ことって少し抵抗感がありますよね。もったいないとか、愛着のあるものだったりとか。なので、リサイクルショップに持ち込んだり、 友人にあげたり。ほとんど捨てずに整理をしました。
そうして手元に残ったものを眺めてみると、これからの暮らしに必要なもの、そして自分が好きなものは何かが、はっきりと見えてきました。例えば、食器。和洋中どんな料理にも便利に使い回せるものを基準に選別したのですが、残ったのはシンプルでベーシックなものばかり。使いやすくてどこか味のある器が残りました。
フィンランドのテーブルウェアブランド「イッタラ」のティーマシリーズのグリーンのボウルもそのひとつ。直径21センチのほどよい大きさで、カレーライス、メイン料理、サラダ、チャーハンと、どんな料理も盛り付けやすい絶妙な器です。同じくザ・コンランショップで見つけた、ブルーのハンドペイントの縁どりがポイントのイタリアの白い鉢も使い勝手がよく、洋食器ながら不思議と和の佇まいもあるもので、料理を選びません。少量盛り付けても料理が貧相に見えないので気に入っています。
こうして好きなものがわかると、食卓をセットするのもより楽しくなります。私はソーイングや編み物など、手作りが大好き。シンプルな器を手作りのランチョンマットやコースターなどと組み合わせて盛り上げます。
必要なものを見直すことで、 自分の本当に好きなもの、好きなスタイルがはっきり見えてきます。結果、最終的に残ったものは、私の場合、シンプルでベーシックなものたちばかりです。移住して16年たちますが、今も現役で毎日活躍しています。

80歳、私らしいシンプルライフ

定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』が8月6日に発売となりました。本書より、試し読み記事をお届けします。