
本連載が、『余白をつくる練習』として8月1日(金)電子書籍になって発売されました。
連載中に日本へ再移住をした永崎さん。10ヶ月ぶりにフィジーに戻ることに。
今回は電子書籍の発売を記念して、これまでの日本での生活と、フィジーに戻って感じる「余白」について、あらためて考えていただきました。
* * *
久々にフィジーに戻ってみると
10ヶ月ぶりに、フィジーに戻ってきました。
2007年にフィジーに移住して以来、これほど長くこの島を離れていたのは初めてです。空港を出た瞬間、フィジーの人たちの笑い声がわっと聞こえてきて、あぁ戻ってきたなぁと実感しました。
それだけで、張りつめていた肩の力が、じわじわと抜けていくのがわかりました。
僕にとっての「もうひとつのリズム」が流れている場所。
そうだ、これがフィジーだった。
17年間この島で暮らし、今は日本を拠点にしていますが、1年に一度はここに戻ってきたいと思っていました。ここにくると忘れかけていた大切な感覚を、取り戻せるような気がしていたんです。やっぱりその感覚は間違っていませんでした。
ここでは、「予定を立てなくちゃ」というプレッシャーがありません。
時間に追われることもなくて、日の出から日の入りまで、大切な人と「いま」を過ごせたら、それで十分です。
この島では「余白」が怠惰ではありません。
むしろ、人が人らしく生きていくために必要な「スキマ」として、ちゃんと機能しています。
それは余裕や逃げではなくて、あえていうなら呼吸みたいなものです。
なにもしていない日があっても、自分を責めないし、誰からも責められない。
ただ、波のリズムに身をまかせるだけです。
僕には、日本の速度が速すぎた⁉
そんなフィジーから日本に帰ってきたとき、僕は異世界に放り込まれたような感覚になりました。
時間通りに動く電車、テンポの速い会話、ぎっしり詰まったスケジュール。
まるで、社会全体が再生速度1.5倍で動いているみたいで、とても不安でした。
日本に再移住したばかりの僕は、玉手箱を持って竜宮城から帰ってきた浦島太郎のような気分でした。
フィジーという竜宮城から帰ってきた僕に、日本の社会はこう囁いてきたように感じたんです。
「自由に生きすぎたね。もう戻れないよ。これからは日本のペースで、ちゃんと働いて、ちゃんと焦って、ちゃんと疲れて、ちゃんと老いていこうね」。
でも、僕は玉手箱を開けることはしませんでした。日本のペースに巻き込まれることで、何かを失ってしまうんじゃないかと感じたからです。
代わりに、玉手箱を「心のお守り」として、そっとしまうことにしました。
日本という高速道路を走りながら、ふと玉手箱を想像すると、フィジーの風がゆっくりと記憶の中から立ちのぼってきます。
「なにもしない時間にも、意味がある」
「一緒にいるだけで、価値が生まれる」
「立ち止まることで、心がふっとゆるむ」
そんなメッセージが、自分自身をやさしく包み込んでくれます。
この感覚こそ、「余白をつくる練習」の連載中にずっと探してきたものでした。
時間のスキマを怖がらず、「効率」や「成果」では測れない価値を大事にすること。
フィジーに出会っていなければ、きっと気づけていなかった感覚です。
今回、1ヶ月のフィジー滞在を終えたら、また日本に帰る予定ですが、もう不安はありません。
竜宮城はどこか遠い場所にあるんじゃなくて、自分の中にあるんだと思えるようになったからです。
誰かの評価や社会の速度にのまれそうになったときは、「ちょっと待てよ」と立ち止まり、玉手箱を想像します。
それから、深呼吸して、自分のリズムを取り戻す。
フィジーは、それを思い出させてくれる場所でした。
そして、『余白をつくる練習』という本は、その記憶を文字として、そっと携えておける新しいお守りです。
もし、あなたが毎日に追われて、呼吸するのを忘れそうになったときは、この本をそっと開いてみてください。きっと、まだ名前のついていない「あなたのリズム」が、静かに待ってくれていると思います。
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出版を記念して、オンラインコミュニティ<【ちょっと立ち止まる夜を】『余白ラボ』 〜「頑張らない」をがんばろう。人生をオモシロがるために~>をはじめます。
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電子書籍『余白をつくる練習』は、連載では書けなかったこと、連載中に気づいたことなど、加筆してバージョンアップしています。ぜひそちらも合わせてご一読ください。
余白をつくる練習

効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。
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