1. Home
  2. 生き方
  3. 次元上昇日記
  4. 2025年7月30日 制服脳内トーク

次元上昇日記

2025.08.02 公開 ポスト

2025年7月30日 制服脳内トーク辛酸なめ子

先日、衝撃的な制服エピソードを伺いました。かつてある学校が共学化されるのを機に、喜んだ男子たちが女子の制服を氷づけにして、抱きついて体熱で溶かす「解凍式」を行なったという……。思春期の男子の発想力は引くくらいすごいですね。

 

ちょうど弥生美術館で「ニッポン制服クロニクル 昭和100年、着こなしの変遷と、これからの学生服」という興味深い展示が行なわれていたので行ってきました。イラストレーター・制服研究者の森伸之先生が監修。森先生の女子校の制服イラストは昔から憧れと共感を持って拝見してきましたが、私の母校は基本私服だったので、あまり制服ライフを享受できませんでした。一応セーラー服があるのですが特に着なくても良かったので……。親が中古で母校の制服を買ったら体臭が残留していて着られなかった思い出です。やはり制服はお下がりじゃなくて新しく買った方が良いですね。前の人が6年くらい着ていたと思うとエネルギーやカルマもかなり付着してしまっています。ただ東大とかに入った頭が良い人が着ていたら、あやかれるかもしれません。

今回は、制服の歴史をたどり、架空の学校の未来の制服まで展示されていて興味深かったです。最近は多様化が進み、女子校でもスカートとパンツを選べるようになっているところが多いようです。スカートでもパンツでもない気分のときのキュロットとかあるともっと良いかもしれません。

今回、まず目を引いたのは「短ランにボンタン」の不良学生風の制服と、スカートがやたら長くてバッグが薄いスケバン風の制服。80年代の〈ツッパリ&スケバン〉スタイルを再現していました。私の高校生活は90年代だったけれど、美術予備校に、スケバンの名残を感じさせるくるぶし丈制服の女子がいました。

変形学生服にはクリエイティビティを感じます。ツッパリ男子は、学ランの上着を極端に長くしたもの(長ラン) や極端に短くしたもの(短ラン)、極端に幅が広いズボン(ドカンなど)などをはいていたそうです。また、裏地やボタンをカスタマイズしていたのには相当おしゃれのこだわりを感じさせます。裏ボタンのデザインは、花札、タパコのパッケージ、麻雀牌など。スケバン女子は、スカートの裾をほどいて長くしたり、大きなサイズのスカートを買ったりしていたそうです。

「ツッパリ用語」の解説もあって勉強になりました。

ガンのくれあいとばしあい=悪意をもって相手の顔や目をじっと見つめること。不良仲間で言いがかりをつけるときなどに用いる。

タイマン=1対1による喧嘩のこと。

赤テープ 学生鞄の持ち手に赤いビニールテープを巻き付けておくと「喧嘩買います」の意味となる。白テープは「喧嘩売ります」の意。

(*諸説あります)だそうです。

わざわざ喧嘩したいアピールするなんてエネルギーがあり余っています。当時の高校生はスマホにエネルギーを吸い取られていなかったからでしょうか。

〈ツッパリ&スケバン〉スタイル。男子は、ドラマ「スクール★ウォーズ」で
不良学生を演じた松村雄基さんをイメージしたそうです。

あとは個人的に思い出深いのは90年代に登場したDCブランド制服。当時、宮沢りえが「いつも誰かに恋してるッ」というドラマで私立桜桃学院高校という架空の学校の女子高生を演じていてその制服がかなりかわいかったのが記憶に残っています。宮沢りえのかわいさも神がかっていました。制服は山本寛斎デザインで、ブレザーだけれど下の白いシャツの襟がセーラーカラーっぽい、ブレザーとセーラー服のいいところをミックスしたような感じで憧れました。

あと完全死語ですが、宮沢りえが毎回「ぶっとびー」と言うのが流行語になっていました。なかなか使わないセリフですが、数十年後、加護ちゃんがプライベートで高部あいに「また一緒にぶっとぼうね」と意味深なメッセージを送ったのが、時代を超えてトップアイドルに受け継がれたバトンのようで感慨があります。

右は品川女子学院の制服っぽいです。広末が着ていたことでブレイクしました。

ドラマの影響もあり、ブレザーにチェックのスカートという制服が大人気でした。この茶色系のブレザーも憧れました。ブレザーというとネイビーが大多数ですが、茶系のほうが顔色が明るく見える気がします。

制服がなかったので、似ている感じにしたくてベネトンのチェックのスカートにVネックセーターを合わせていました。でも本物の制服には叶いません。

制服の展示を見たり制服について綴っていると不思議な興奮が……。前述の、氷づけの女子校の制服に抱きついた男子たちとそんなに変わらないかもしれません。

関連書籍

辛酸なめ子『次元上昇日記 ベストセレクション50』

「次元上昇」とは? それは「アセンション」のこと。 では、「アセンション」とは何か――? 辛酸なめ子さんにとっては、日々、功徳を積んで善行マイレージを貯め、それがある閾値に達すると得られる高い次元のこと。 本書は、そんな次元上昇をめざす一人の女性が、イベント、パーティ、買い物、仕事……と毎日足を運び、霊的な何かが見えたり、癒されたり、反省したり、試行錯誤する抱腹絶倒の記録です。 この世界の次元は一つじゃない――。 よりすぐりのベスト50をお楽しみください。

辛酸なめ子『次元上昇日記』

毎日のようにセレブやスピリチュアルな現場を取材し続け、どうやったら「次元上昇=アセンション」できるのかを考え続け、「小難しい本を読むより、猫を5分間撫でている方が真理に近付ける」と認識、善行というマイレージを貯めることこそが、個人の次元上昇を達成する方法だと気づく。そのおそるべき試行錯誤、抱腹絶倒の日常記録です。

辛酸なめ子『辛酸なめ子の現代社会学』

辛酸なめ子のフィールドワークは、犯人の足取りを追う老獪な刑事のごとし。正体を突き止められまいと足掻く「現代社会」を、軽やかな妄想と味わい深い漫画を駆使して追い詰めていく。モテ、純愛至上主義、スローライフ、KY、萌え……「ブーム」の名で艶やかに仮装した現代の素顔とは? 前人未到の分析でニッポンを丸裸にした圧巻の孤軍奮闘。

{ この記事をシェアする }

次元上昇日記

「次元上昇」とは? それは「アセンション」のこと。では、「アセンション」とは何か……。いろいろな意味があるので、ネットを検索してみて下さい。しかし、辛酸なめ子さんにとって、それは日々、功徳を積んで善行マイレージを貯め、それがある閾値に達すると得られる高い次元のこと。この連載は、その善行マイレージを貯め次元上昇をめざす一人の女性の抱腹絶倒、試行錯誤の記録です。

この連載が電子書籍になりました!『次元上昇日記 ベストセレクション50

バックナンバー

辛酸なめ子

近著に「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断! 流行大全」(中公新書ラクレ)など。

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP