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わたしを幸せにする0円生活

2025.08.06 公開 ポスト

生活用水も飲み水も0円!流れっぱなしのわが家の湧き水田村ゆに

青森県南部町で自給自足生活を送る田村ファミリーの妻・田村ゆにさん。電気・ガス・水道は契約せず、廃材で建てた手づくりハウスに家族3人、ニワトリ12羽と暮らしています。お金の不安が尽きない都会の生活から抜け出し、田舎に移住して気づいた“本当の豊かさ”とは。初のエッセイ『わたしを幸せにする0円生活』より、一部をお届けします。

*   *   *

節水とは無縁なわが家の水

「ある日のこと。土を掘っていたら、掘るほどに水が湧いてくる不思議な場所を見つけました。目的を忘れて夢中で泥をかい出していたら、気づいたときには腰ほどの深さで、池ができたではありませんか。そこから流れをつくり、今では暮らしに必要な水が0円で使い放題です。めでたし、めでたし」

という昔ばなしにでも出てきそうなストーリーでわが家の水は発見されました。

洗濯や食器洗い、野菜への水やりまで蛇口をひねることなく、いつでも使える水が流れています。天気によって水の量が変わることもありますが、冬でも流れがあれば凍りません。日照りが続いてカラカラになっても、井戸があるためなんとかなっています。

暮らしに必要な水の大半は、飲めるほどキレイでなくてもいいものです。昔は雨や川の水など自然に流れている水を浄水せずに使っていました。水道料金が高いと感じる人に知って欲しいのは、水道は本来水がないところのシステムだということです。

江戸時代のこと。飲み水に恵まれなかった関東平野で、江戸の人々の生活を支えたのは井戸でした。井戸といっても地下から汲み上げたものではなく、石組みや木製の配管を通して川から水を引いてくる上水井戸と呼ばれたものです。本来なら水のある場所に人が集まって街ができますが、江戸の場合は、飲み水よりも先に人が集まって都市になった場所ともいえます。

遠くから水を運び、水売から飲み水を買うこともある江戸の暮らしを考えると、お金を払って水道やミネラルウォーターを買う現代の暮らしに違和感はないかもしれませんが、近くに川や湧き水があるのに、水道を利用して水を買うのは不自然なことだとも考えられます。

蛇口から出る水は無限ではなく、雨がなく日照りが続くことによる農作物への被害もありました。キャベツやレタスなど、野菜の値上がりで気候変動の影響を実感する人も多いのではないでしょうか。

わたしたちが干ばつを身近に感じたのは、ある年のお米づくりでのことです。春先の田植えのあとで一番水を必要とする時季に、水不足は起こりました。わたしたちが稲を植えた場所は、ほかの田んぼとの共同水路から水を引いている田んぼです。今まで何年も開けることのなかった貯水池を水不足のため開放したと聞いて気が気ではなく、水の管理のために夫も朝から晩までつきっきりでした。噂によるとその場所は、水不足による争いでとっちめられた人の名前がつけられているそうです。

昔から水のあるところに集落をつくってきた歴史があり、水と暮らしは結びついています。ただし、水があることはいいことばかりではなく、昔の人は同じ悲劇をくり返さないためにも歴史を地名に刻んでいます。龍や鶴は水害、蛇や蟹は土砂くずれ、梅は埋立地などを意味します。水のある場所に引っ越したいと考えたら、土地の名前を気にしてみてください。

住む場所を変えなくても、まずは靴を洗うときや洗車などの掃除で、自然界から手に入る雨水を使ってみるのはいかがでしょうか。屋根から滴り落ちる雨がバケツに溜まり、その水で靴を洗うと、なんとも言えない晴れやかな気持ちになります。慣れないと抵抗を感じるかもしれませんが、それは自分が常識を抜け出そうとしている証です。

掘りあてた水を活用したわが家の水道。
蛇口がなく流れっぱなしなので、
たらいに溜めて収穫した野菜を洗ったり、トイレにも活用。

ミネラル豊富な飲み水は何本でも0円

生活用水は家でまかなえるようになりましたが、飲み水は町内の名水を1ヶ月に1回車を走らせて100リットルほど汲みに行きます。月1で飲む水を宅配便で届けてもらうと代金に加えて送料もかかりますが、自分たちで汲みに行くとガソリン代はかかるけど、何本汲んでも0円です。このために居酒屋さんを経営する夫の友人に焼酎のペットボトルを分けてもらい、容器も0円で手に入れました。

今の湧き水スポットを見つけるまでは、宝探しをしているようでした。ネットで調べても大体の場所しかわからず写真もないことが多いため、実際には涸れていたり、チョロチョロとしか出ていなくて溜まるのに時間がかかったり、かがんで手を伸ばさないと汲めない場所もあります。それまで気にも留めなかったのに、コンコンと湧いている水があると「飲めるのかな!?」と思うようにもなりました。ペットボトルの本数が少なかったときは、出かける先々でご当地の名水を飲み比べていた時期もありますが、今はアクセスがよく水量の安定している場所に通っています。帰り道には南部地方のソウルフードである串もちを買って、月に1度のドライブが楽しみになりました。

水道水はキケンでおいしくないからと、浄水器をつけたり、飲み水を買うのがあたり前の時代になりました。安心、安全とはみなさん何を基準にしているでしょうか。ラベルに記載されている情報はたくさんありますが、自分の五感も大切です。人は食べないより、水を飲まないほうが生きられないと考えると、水は命の基準ともいえます。

水を求め歩いて地域のことを知り、その土地を流れる水を汲んで飲むことで、その土地との結びつきが生まれます。住む人が水の大切さを知っている場所では、環境も保たれ荒れにくいものです。

都会で湧き水生活はムリだと思うかもしれませんが、調べてみると東京23区内でもアクセス可能な湧き水スポットが30ヶ所以上はあるようです。ふだんは宅配のお水を利用していても、いざというときに水が汲める場所を知っておくと安心ではないでしょうか。知らないだけでお宝は近くにあるかもしれませんよ。

関連書籍

田村ゆに『わたしを幸せにする0円生活』

電気・ガス・水道は契約なし!テレビで話題の自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の単著。 都会から青森の田舎に移住し、0円生活で手に入れた“無限の幸せ”とは。

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わたしを幸せにする0円生活

電気・ガス・水道は契約なし!自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の著書『わたしを幸せにする0円生活』より、試し読み記事をお届けします。

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田村ゆに

1987年北海道札幌市生まれ。高校卒業後に歌手を目指して上京。アルバイトをしながらの歌手活動中に着物の魅力にハマり、価値観が激変。日本人の昔ながらの生活に触れ、「いつか自分で作った野菜を家族に食べてもらいたい」という新たな夢を見つける。29歳になる年にSNSで見つけた田村余一の「お嫁さん募集」へエントリー。その年の秋に青森へ移住し、2017年に入籍。オフグリッド生活や畑しごとをスタートする。2018年第一子を出産。現在は子育てや畑しごとの傍ら、テレビ出演のほか、SNSで暮らしの知恵や野菜に関する知識などをシェアして活動している。

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