
先日お酒を酌み交わした友人がこんなことを言っていた。
“人には人の地獄がある”
同じ大学で同じ時間を過ごした同級生たちも今や30半ば。
各々置かれている立場は千差万別で、家庭を持つ者もいれば、脱サラして起業した者もいる。私のような独身・YouTuberという世間一般から見れば特殊なルートを歩む者さえも。
皆違った境遇にいるため、安定しているお前が羨ましいだの……夢を追いかけているお前が羨ましいだの……酔っ払っていても隣の芝だけは真っ青に見えているその連中は思い思いのことを口にした。
しかし、その中の1人がこう言った。
「人には人の地獄があるんだよ」と。
決して悪魔の乳酸菌かなんかのキャッチコピーではない。それぞれがその環境の中で抱えている地獄がある。その地獄は他と比べるに値しない、個人個人の抱える唯一無二の地獄なのだと。
だから「誰の方がましだとか、辛くないだとか、そんなことはないんだ。」と、彼は言った。
各々の地獄と向き合わせてくれた彼は最後に「どこへ行っても地獄なら、自分が信じた方……。楽しい方へ進もうぜ」と焼肉屋のお会計時にもらえるガムのように爽快な一言を言い残して電車を降りて行った。
目の前に地獄が広がっていても、その地獄に浸かってはいけない。怒りに身を任せていてはさらなる地獄に堕ちるだけ。そんなことを私は彼の言葉から読み取った。
しかし私は彼女にそんな言葉を投げかけられるだろうか。
『放送局占拠』(日テレ)第3話でその面の中が明らかになったアマビエこと津久見沙雪(ともさかりえ)に対して。
“占拠シリーズ史上最悪”の人質が犯した罪
占拠シリーズの中にはお決まりがいくつかある。その中の一つが面を被った武装集団の復讐のやり方だ。
今回の武装集団は“妖”(あやかし)。
彼らは、各々が恨みを持つターゲットを人質に集め、その人質一人一人が隠し通してきた罪を、拷問器具を用いて白状させ生放送(配信)を通して白日の下に晒す……。というやり方をどのシリーズのどの武装集団もやってきた。
その中でも今回のアマビエが対峙したサッカースクールの代表:三河龍太郎(北代高士)は史上最悪の人質と言っても過言ではないだろう。
彼はアマビエこと津久見沙雪の息子に体罰をし、自死に追いやったのだ。
友人のスマホに送られた痛ましい遺書。
母親の沙雪に送った最後のメッセージ動画。
そのどれもが、ドラマとわかっていても観るに耐えないほど辛いものであった。
復讐は復讐を生み、憎しみの連鎖が終わらないことを頭ではわかっている。
しかし息子を三河に殺された沙雪の気持ちを思うと、その復讐を止めることは憚れる。
“人には人の地獄がある”と言ったが、大切な人を殺められたその事実は比喩表現でもなんでもない地獄そのものだろう。
その地獄の中にいるあの沙雪の眼差しを見て、怒りに身を任せることを否定できるだろうか。
結局私はこのように、沙雪の地獄と自身の地獄を無意識に比べているのかもしれない。そしてわかった気になって、彼女の気持ちに寄り添ったつもりでいた。何も出来ないのに。
しかし沙雪は自らその地獄から解放されるべく切り開いたのだ。どういう経緯かはまだわからないが、占拠の計画に参加し、決して三河を殺めることなくその真実を白日の下に晒し、その復讐を果たした。武蔵(櫻井翔)が解答出来なかったら話は別だったかもしれないが……。
死ぬほど引きたかったであろう引き金を決して引くことはせず、三河に制裁を与えた沙雪。
あの引き金を引いたが最後、本当に沙雪は地獄から抜け出せなくなっただろう。
私たちもその最後の引き金を引かないように、各々が抱える地獄と理性的に向き合って生きていくことが地獄との上手な付き合い方なのかもしれない。
武蔵、“はじめて”の命の危機
普段のふざけた内容とは一風変わった真面目なテイストの記事に困惑した読者も少なくないだろう。
安心して欲しい。
最後は『武蔵三郎の箱の中身はなんだろうな?』のコーナーで締めたいと思う。
あれ?なかなか箱に手を入れないな……。
罠だったからよかった(?)ものの、真っ当な問題だったらどうするつもりだったのか、武蔵よ。
残り数秒で手を入れ、実際には存在しないと噂の“ベニアカジョロウグモ”の毒に犯されてしまった武蔵。
おそらくあの“蜘蛛の毒”というのが、現都知事:大芝(真山章志)の闇に関わるキーアイテムなのだろう。
90分で死に至るという相変わらず時間に追われる状況はついて回る上に、今回は流石のマイティームサシでも力でどうにかなる問題ではない。占拠シリーズ始まって以来の命の危機である。
そう、初めての命の危機。今までは……ない。
しかし妖側も、武蔵のポテンシャルを評価しすぎである。あれが偽物の毒の可能性もあるが、解毒が間に合わなかったらどうするつもりなのか。
妖の目的のひとつに武蔵三郎に纏わる何かがあることは間違いなさそうだが、妖は武蔵を殺したいのかそうじゃないのか本当にわからない。
誤って殺めかねない状況をどれだけ作り出せば気が済むのか、妖よ。
一体、大きな目的は何なのか。
次は第4話、そろそろ折り返しに差し掛かるころなのでやっと“妖集団の結成秘話”回があることだろう。
これも占拠シリーズの見どころのひとつ。
普段ムスッとしている武装集団の人間味が垣間見える場面だ。
大病院占拠の鬼集団は、手作りカレーを囲み親睦を深めていた。
新空港占拠の獣集団は、組み手を取り合って親睦を深めていた。
いやあれは親睦を深めていたのだろうか……。
今回はどんな形で親睦を深め、この放送局占拠に臨んだのか。私は“唐傘小僧監修:クイズの早押し”と予想しておこう。
そんな見どころ満載の『放送局占拠』、6969bの考察動画とこの記事も併せてお楽しみ頂けたら幸いです。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『放送局占拠』( 毎週土曜夜10時~)
出演:櫻井翔、比嘉愛未、加藤清史郎、曽田陵介、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、齊藤なぎさ、ソニン、高橋克典、片岡礼子、福澤朗、戸次重幸、菊池風磨 他
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
脚本:福田哲平
演出:大谷太郎、茂山佳則(AX-ON)、西村了(AX-ON)
音楽: ゲイリー芦屋
主題歌:Snow Man「W」
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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