
はじまる前は下痢したり吐いたりとナーバスになっていた、私の漫画原作のドラマだが、はじまってみれば危惧していたようなことは起こらず、これが掲載されるころ、残すところは最終回となっているはずだ。
正直寂しい気持ちでいっぱいであり、あまりにも出来が良すぎたので、この続きを自分で描く意義すら見失っているが、元々事故が起こりやすい漫画の実写化という分野でこれだけのものを作ってもらえたのは幸運としかいいようがない。
完全に人生のピークであり、漫画どころか残りの人生を生きる気すら湧かなくなってきたが、走馬灯に流す映像ができたのは良かったと思う。
ドラマ制作に関しては私はほとんど携わっていないのだが、これまで自分が全く知らなかった世界にもいろいろ触れることができた。
私は芸能界に極めて疎く、さすがに主演の方は知っていたが、他は家にテレビはあるがリモコンの使い方を知らなかったとしか思えないほど知らない。
ちなみに、今まで私の周りで主演の方のことを知らなかったのは私の「義母」のみだ。
しかも義母は電気の通ってない山奥で自給自足の生活をしているというわけではない。
むしろ義実家にいくといつもテレビはついていた、つまりテレビに映っている人や物を「事象」としかとらえていなかったということであり、下手にテレビを見てない人が知らないよりも怖い。
失礼ではあるが、今回のドラマ化を機にはじめて知る人も多かった、しかし中高時代消しゴムを拾ってもらっただけでクラスメートを好きになってしまうように、自分が原作のドラマに出てくれたというだけで、演者全員好きにならざるを得ないのである。
よって、設定資料集大好きなオタクとして、出演してくれた人たちのプロフィールなどを漁っていたのだが、そこで現役男性アイドルの方が多数出演してくれていることを知った。
アイドルと言えば、現在の推し活業界の一角を担う存在の一つだ。
だが何せ私は物心つく前から、もう一角である二次元の者だったので、今まで全く通ってこなかった道である。
もし「嵐で一番だれが好き?」という話になったら、全員の推しが出そろったところで、被ってない誰かの名前を挙げるポジションなのだが、残念ながら一度に嵐の人数以上の友達ができたことがないのでその機会もなかった。
世の中には、自分が思っていた以上にアイドルグループというものが存在し、全員ビジュが強く、すでに各々ファンを持っている、だがそれでもメジャーデビューしたりテレビなどに頻繁に出て、私のようなリモコンを口に入れているレベルの芸能北京原人にまで知られるのはごく一部ということだ。
よって三次元の推しを持つ人の「推しを応援したい」という気持ちは、我々二次元の者より切実なのかもしれない。
確かに二次元の推しも人気がないと打ち切りやサ終、作品内でも冷や飯を食わされるので応援は重要なのだが、3次元の推しは生きていて当然生活があるのだ。
人気がなくて解散や引退するのが嫌以前に推しに仕事がなくて餓死される方がキツイし、単純に推しが困っているところは見たくない。
しかし、まだスターじゃないからこそ、推しと近い距離で接することができるという醍醐味もあるのかもしれない。
二次元には次元という壁があるので近づくにも限度があるので、これは三次元ならではだろう。
また推しに売れて欲しいという気持ちがありつつも、本当に売れたら売れたで一抹の寂しさを感じそうな気もする、どう考えても二次元よりも三次元の推しを持つ方が情緒が忙しくなりそうだ。
しかし、ドラマが始まってから、演者さんたちのファンの人のドラマ感想などもよく目にするようになった。
そもそも原作読者より、演者ファンの方が圧倒的に多いドラマなので、そっちの方が目につくのは当然である。
私が見た限り俳優さんたちのファンはみな言葉が丁寧である、本人たちの人柄によりファンもそうなのかわからないが、少なくとも私が二次元の推しにとち狂っている時とは様子が違う。
やはり推す相手が実在する、そして「感情がある」というのは大きなことなのかもしれない。
推しの良さみが良すぎて語彙がなくなるのはオタクあるあるだが、消失に留まらず、ゴルゴ13のテクがすごすぎて「ちくしょう、悪魔! 人殺し!」となってしまった女のように、語彙の選択がおかしくなる時がある。
「かわいすぎるんだけど? 死ねよ」と思わずちんちん亭みたいになったとしても、それはそのぐらい推しが良すぎたということなのだが、やはり推しに向かって向ける言葉として相応しくないと言われれば確かにそうだ。
推しが実在し、心を持った人間だと思えば、推しを語る言葉も変わってくるのかもしれない。
私もおそらく3次元の推しができたら言葉遣いが変わると思う、むしろ何も言えなくなりその推しを推していることすら気づかれないかもしれない。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

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