
座間9人殺害事件の犯人・白石隆浩の死刑が執行されました。この殺人犯は何を考え、どう行動していたのか? ノンフィクションライター・小野一光氏が白石と重ねた11回330分の獄中対話と、裁判の模様を完全収録した書籍『冷酷 座間9人殺害事件』より、一部を抜粋してお届けします。
同棲中に別の女性を殺害・解体
私は彼の部屋にやって来て殺されなかった2番目の女性・Yさんについて尋ねた。
「10日家に泊めた人(Yさん)は、関西からやって来た、22歳くらいのキャバ嬢でしたね」
「時期はいつ?」
「9月上旬から中旬くらいです。ツイッターで知り合って、わざわざこっちに来たんですよ。自殺志願者でした。なんか彼氏が逮捕されたみたいで、(精神的に)不安定になってて、ツイッターに『死にたい』と投稿してたのを僕が拾ったんです。どっちかがフォローして、繋がりましたね」

やり取りを重ねた末、座間市のアパートまでやって来たのだという。
「最初の日、僕のアパートに泊まったんですけど、相手は水商売だから、これはカネになると思って、必死に口説いたんです。で、なんとかなったんで……」
ただし、Yさんとは男女の関係にはならなかったと語る。
「僕もスカウト時代に相手の反応で、ヤレる、ヤレないはわかってたんで、カラダは求めなかったですね。継続的にカネを引っ張れると思ったから殺さなかったんです」
白石曰く、彼女は「普通に過ごして、普通に帰った」のだそうだ。私は質問する。
「カネを引っ張れるっていうのは、具体的にはどういうふうに?」
「食費とかですね。私にとっては派手な生活をしたんです。サイゼリアとかピザのデリバリー、カツ丼とか、全部出してくれましたから。それで、彼女は親に無断で出てきてたから、『お母さんが心配してるから帰る』って言って、帰ったんです」
Yさんがいた期間、すでに部屋には何人かの遺体があったはずだ。そのことに触れると、白石は予期せぬ言葉を口にした。
「すでに遺体が3つあって、信じられないかもしれないですけど、その女の子(Yさん)がいる最中に、4人目を殺してるんです。『友達呼ぶから、ちょっと出てて、ごめんねー』って。その子が出てる間にパッパと済ませて……」
白石が言うには、数時間で殺害も解体も済ませたのだと……。私は唖然としながらも、なんとか質問する。
「そんな短時間にできるもんなの?」
「いや、その子は7時間くらい出てましたから。だんだん慣れたというか、最後のほうになると、2時間くらいでできるようになってました」
「殺してバラしてる」口説いた女性に“正直に説明した”犯行
さらに白石は想像もしなかったことを口にする。
「その子はやっぱり部屋のケース(クーラーボックス ※被害者の遺体の一部の隠し場所)に興味を持ってました。だから正直に説明したんです。『自殺を手伝ってるんだよ』って。殺してバラしてることを言ったんです。向こうは『えっ!』って感じでしたね。
『大丈夫なの? 警察来ないの?』って聞かれましたけど、『大丈夫だよ』で終わり。ただ、内心は不安だったみたいですね。(逮捕後に)調書を見ると、一人目(Xさん)と二人目(Yさん)は部屋をあさってたみたいですから」
「クーラーボックスのなかを見たってこと?」
「そうみたいですね。それで不安になって、出ていったのかもしれないですね」

続けて白石は、3人目の女性・Zさんの話を始めた。
「3人目は9月中旬。2人目の子が実家に帰った直後です。彼女は女子高生でした。親が金持ちらしくて、たしかにそういう雰囲気があって、顔も人形のように整ってました」
そんなZさんとも、やはりツイッターで知り合ったという。
「夜にうちに来て、頑張って口説いたんですけどダメで、翌日帰っちゃいました」
「どうしてダメだったんだろう?」
「まあ、単純に僕の魅力が足りなかったんですよ」
「その子には、クーラーボックスのことは聞かれなかった?」
「聞かれましたね。だから彼女にも正直に話してます。ただ、口説けなかったでしょ。2番目の子は口説いたあとでその話をしたから、大丈夫だと思ったんですけど、そのときは正直焦って、彼女が帰ったあとでラインをして、『さっきのは全部嘘だから。忘れてね』ってメッセージを送りました」
「なんで口説き落とす前に、クーラーボックスの話をしちゃったの?」
「自分の口説きにある程度、自信を持ってたんですよ。だから、口説けば大丈夫だと思ってたんです。そのことは警察にも話してます」
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