
占拠フォーマットよ、永遠なれ。
予定調和と様式美。この違いは何なのか。
どちらも“決まりきった流れ、お約束”という意味合いが共通していそうだ。
予定調和という言葉はあまりポジティブな意味合いで使われている印象がないように感じる。そんなネガティブな予定調和に特徴的な美しさが加わることによって、その決まりきった流れは様式美として昇華されるのではないかと私は考えている。
国民的ドラマ『水戸黄門』では悪人を懲らしめる際に格さんが「この紋所が目に入らぬか!」と一喝し、印籠を突き出す。毎話ごとにあるお決まりのこの流れだが、「またこれかよ……。」と悪く言えばその予定調和な展開に、落胆する視聴者などいないだろう。
この流れこそまさに、繰り返すことで確立された様式美ではないだろうか。
“令和の水戸黄門”……。というとかなり大袈裟かもしれないが、今まさに確立された様式美で多くの視聴者を惹きつけているドラマが何を隠そう『放送局占拠』(日テレ)だ。
先日放送された第5話でもその様式美は遺憾なく発揮されていた。
そもそも、お面で顔を隠した武装集団が大型の建物を占拠し、武蔵が奮闘する……。
という流れそのものが占拠シリーズの様式美の一つだと言える。
『大病院占拠』『新空港占拠』とシリーズを重ねることで、この様式美は形成されていった。そしてこの最新作『放送局占拠』ではその様式美を踏襲しながらも、新しい試みで視聴者の心を離さない。
その新しい試みとは、武装集団:妖(あやかし)のリーダーである般若が、なんと連れ去られていたはずの加藤清史郎氏演じる伊吹刑事だったという衝撃の展開だ。
第1話から伊吹が青鬼:大和(菊池風磨)に誘拐され連れ回されていた時系列は、妖が放送局を占拠している今現在のタイムラインとは異なる“過去のタイムライン”だったのだ。
この時系列のトリックは歴代の占拠シリーズにはなかった新しい要素だ。
ドラマ考察YouTuberの私たちやその視聴者、このドラマを熱心に考察していた方の多くはそのトリックを見抜いていたが、何も知らなかった視聴者(これが普通である)はこの展開に度肝を抜かれたことだろう。
予測していた私でさえ、この展開には興奮したし、“般若の面を受け取る過去”と“般若の面を外す現在”の対比演出にはとても熱狂した。
そして『放送局占拠』も第5話と折り返しに差しかかり、残りの妖メンバーも面を外して素顔が明らかになった。化け猫は入山杏奈氏、河童は柏木悠(超特急)氏であった。この面を外す瞬間は、何度体感しても視聴者を興奮させてくれる“占拠様式美”の中でも最も美しいものに思える。
しかしまだ明かされていない妖が2人いる。
それは第5話まではその姿は登場していなかった輪入道と、まだ番組のホームページでしかその姿は確認できない座敷童だ。(両者とも劇中での妖党HPでは登場している。)
今回は第5話で初登場した輪入道の正体を解き明かしていこう。
輪入道の正体もまさに“占拠様式美”
では輪入道の正体は一体誰なのか? ずばり警視庁警備部長の屋代圭吾(高橋克典)であると私たち6969bは睨んでいる。
警察内部に敵側(武装集団)の人間がいるという、これもまた“占拠様式美”の一つだ。
今までの占拠シリーズでも絶対に警察の内部に裏切り者がいた。歴代100%の確立だ。
もはや刑事もののドラマで警察内に裏切り者がいない例の方が少ないが、占拠シリーズはその中でもトップクラスにうじゃうじゃいる。
元から裏切り者がいる分にはまだ良い方だ。
『大病院占拠』で登場した丹波管理官(平山浩行)は、次作『新空港占拠』で武装集団:獣(けもの)の一員として再登場した。大きな占拠事件を解決に導いた功労者の1人でさえも、悪者になってしまうのだ。占拠シリーズ、容赦ない……。制作陣は刑事に対するとてつもない恨みでもあるのだろうか。
話を戻すが、今回の『放送局占拠』でも警察内部に裏切り者として屋代がいそうだぞという考察を導いた。
その理由として一番大きいのは、考察でもなんでもないが見た目である。
どう見ても高橋克典さんなのだ。こればっかりは覆らなかった。
当初は第1話の冒頭でバスジャック犯として登場した原西氏(FUJIWARA)なのではないかとも思ったが、顔のフォルムが違う。
バス=車輪、爆発=炎、男性の生首=原西氏……。というように、“輪入道”そのもののフォルムとバスジャック犯に通ずる点があるのは気になるが、もう一度言おう、どう見ても高橋克典さんなのだ。
顔の作りでわかってしまう……。こればかりは仕方のないことだ。
バレないように面の中で少し目を細めているような気もするので、あまり顔バレしたことばかり言うのも申し訳ない。しっかりと考察するのであればその怪しい点は、警備部長という役職である。
思い出して欲しいのは青鬼:大和の脱走計画のことだ。
彼は“病院占拠事件”により拘置所に入っていたが、妖メンバーである天狗とがしゃどくろの助けを借りて拘置所を脱走した。
しかし本当に彼らだけで脱走が可能なのだろうか?
さらには押収された青鬼の面も大和の手元にある不思議。
以上のことから、警備部長である屋代の手助けがないと大和の脱走は不可能ではないかと考えられる。
屋代の指揮により、警備を手薄にすることなど容易いだろう。
さらには第4話で大和は自身を再び鬼にした“あの人”について話した。
その“あの人”は伊吹刑事とも関係のある人だと言っていた。あの人=輪入道と仮定すると、屋代であれば伊吹刑事との関係も上司と部下という関係で結びつき、屋代自身も大きな悲しみと怒りを背負っているのだろう。
輪入道の面には“鎌鼬(かまいたち)事件”※に関する新聞記事が貼ってあるため、屋代もまた鎌鼬事件の被害者に関係する人物だと考察できる。(※鎌鼬事件とは、伊吹の元恋人が犯人として誤認逮捕されたであろう殺傷事件のこと。)
見た目やその役職、登場人物たちの発言からも“輪入道=屋代”である可能性は非常に高いと言える。
期待する最後の様式美
早くも折り返してしまった『放送局占拠』。
私たちはYouTubeチャンネルの中でドラマを同時にリアルタイムで視聴する生配信を行っている。
その同時視聴数は5000人を超えることもあり、一つの大きな大きな茶の間で皆とテレビを観ている感覚を味わえてとても楽しい。
そして最終回では絶対に“続編匂わせ”をしてくれるのも占拠シリーズだ。
ぜひこれから最終回まで一緒に観ていき、その“続編匂わせ”の瞬間を共に味わおうではないか。
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『放送局占拠』( 毎週土曜夜10時~)
出演:櫻井翔、比嘉愛未、加藤清史郎、曽田陵介、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、齊藤なぎさ、ソニン、高橋克典、片岡礼子、福澤朗、戸次重幸、菊池風磨 他
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
脚本:福田哲平
演出:大谷太郎、茂山佳則(AX-ON)、西村了(AX-ON)
音楽: ゲイリー芦屋
主題歌:Snow Man「W」
考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-

3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?
物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。
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