
朝起きて二階の寝室から一階に降りると、ひんやりとした空気を感じた。
冷房を消し忘れたのかと焦ったが、思い違いだった。
もう9月も下旬だ。「気温よ、いい加減秋らしくいてくれ」という恐らく国民の総意であろう思いが届いたのか、やっとその気になってくれたようだ。
窓を開けて心地よい秋風を迎え入れると同時に「私の夏は終わったのだな……」と少しの切なさを感じた。
切なさを感じるくらいには、この夏を楽しめたということか。
だからと言って、思い返すと夏らしいことはこれといってしていない。お祭りも、花火も、海も、恋も……。何もなかった。
ではなぜここまで夏を楽しめたのか。
それは何を隠そうドラマ『放送局占拠』(日テレ)に熱中していたからだ。
武装集団:妖(あやかし)の正体を考察し、物語の展開を予想し、この夏は常に『放送局占拠』と共にあった。『放送局占拠』のことを考えすぎて、夢の中で妖になった私が意味もなく天井にマシンガンを連射したこともある。
夢の中でもあれはやっぱり爽快だった。
私の鬱屈とした夏に彩をくれたのは、世界中の誰よりも不運な武蔵三郎(櫻井翔)の他ない。共にこの夏を駆け抜けて来たそんな武蔵三郎の物語、『放送局占拠』も先日最終回が放送され秋の訪れと同時に終わりを迎えた。
武蔵三郎が般若こと伊吹(加藤清史郎)を確保したことによって、この物語は無事に幕を閉じたのだ。
ライトにこのドラマを観ている視聴者は忘れているかもしれない。
「この物語がたった1日の物語」であるということを。
そう。共に夏を過ごしたと言っても、私たちは武蔵三郎の夏のたった1日しか知らないのだ。武蔵は所謂『24時間テレビ』状態だったと言える。それも相まってか、伊吹確保の瞬間はチャリティーマラソンのゴールとニアイリーコールの感動があった。『占拠シリーズ』と『24時間テレビ』、共に毎年放送されていて、24時間という共通点もあるため、この感動を覚えるのはあながち正常な感覚なのかもしれない。
リアルタイムにSNSと連動する臨場感
物語の核の部分はというと、妖が探していた裏で情報を操る傀儡子の正体はテレビ局プロデューサーの奄美(戸次重幸)であったが、妖の本当の狙いは嘘の情報に踊らされた愚かな大衆だったというから驚きだ。
傀儡子の裁きについて、“法による処罰”か“妖による処罰”かを国民に問い、“妖による処罰”に投票する“「指先一つで人が死ぬ」ことを理解していない人”が多い場合は、事前に各家庭に配布された“爆弾内臓テレビ”が爆発し、愚かな国民が被害に遭う……。という展開。
一時は“妖による処罰”が優勢だったが、武蔵の呼びかけによりその票数は覆り無事に爆発は免れた。毎回世間に顔を晒している武蔵。劇中の世間的には「えっ? またこの刑事が占拠事件に関わってるの?」となっていないか、非常に気がかりだ。
現実世界のSNS、X(旧Twitter)の番組公式アカウントでもこの2択のアンケートが番組放送中に実施され、“法による処罰”への投票が多かったことにまだ世の中捨てたものではないと思わされた。
放送局占拠、終わっ……てない?
無事に占拠事件が収束し安心したのも束の間、大和がいない。
大和(菊池風磨)につけられた足枷が外され、大和を取り囲んだSAT隊員の身ぐるみを剥がされた状態で見切れたことからも、あの状況で大和は全員を制圧し脱走したのだ。
いやだから大和ガバガバすぎるって。
だいぶ自由な時間が長かったような……。そんな野暮なことを思っていたら更なる衝撃が。
なんとあの武蔵三郎の妻、裕子(比嘉愛未)が大和と共にいるではないか。
これは「嘘だろ」「あり得ない」「冗談でしょ」の3連コンボを言い放っても足りない衝撃だ。
一体何が起きたのか……。
そもそもあれは裕子なのか……。
結論から言うと、あれは裕子だと考えるのが妥当だ。
裕子と同じ両耳のピアスがその証拠とも言えるし、両者共に上着を着ていたために時系列は放送局占拠の数ヶ月後……それこそ私たちが過ごす今の気温と同じくらいの時期と考えられる。(屋上だとさらに寒いため)
裕子には裕奈という歳が3つ下の妹がいることは劇中の資料から確認できているが、両耳のピアスをお揃いにするというのは一般的にあまりないように思える。
さらに放送局占拠で裕子の首についた傷も、数ヶ月後の時系列であれば癒えていても不思議ではないため、裕子ではないという根拠にはならない。
なぜ裕子が……。三郎の周りはどうなっているんだ……。
疑問は沢山浮かぶが、現時点でその理由を考察することは不可能に等しい。
しかしこれだけは言える。
放送局占拠……いや占拠シリーズが終わっていないことは確かだ。例年の流れからすると早くも来年にはこの続きを観ることができるかもしれない。
その時はどんな季節でどんな風が吹いているかはわからない。世界はより混沌を極めているかもしれない。
でもどんな状況でも諦めない武蔵三郎は、私たちが過ごすその季節に“彩”と“嘘だろ”を添えて勇気付けてくれるだろう。
えっ?
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『放送局占拠』( 毎週土曜夜10時~)
出演:櫻井翔、比嘉愛未、加藤清史郎、曽田陵介、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、齊藤なぎさ、ソニン、高橋克典、片岡礼子、福澤朗、戸次重幸、菊池風磨 他
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
脚本:福田哲平
演出:大谷太郎、茂山佳則(AX-ON)、西村了(AX-ON)
音楽: ゲイリー芦屋
主題歌:Snow Man「W」
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
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