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考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-

2025.07.01 公開 ポスト

「続・続・最後から2番目の恋」「対岸の家事」~生きることに前向きになれた2025年春ドラマ~ #6969b #ドラマ考察6969b~ろくろっ首~(ドラマ考察系 YouTuber)

ドラマと思い出が結びつくのってあるある?

子供の頃、「年齢を重ねると時間の流れを早く感じるようになる」と大人達に散々言われてきた。当時はそんな話を聞き流していたが、現在33歳の私。
今まさにその“早すぎる時間の流れ”を実感している。

つい最近新年度を迎えたかと思えば、気づけば夏がすぐそこに……。
この調子であっという間に年末を迎えているのだろうか。

“大人になるにつれ時の流れを早く感じるようになるメカニズム”は何かしらの原因はあるのだろうけど、そういう話がしたい訳ではない。

そんな日々に置いていかれないようこの瞬間を大切に生きようと心がけるだけで、原因は何でもいい。しかし、どんなに時間のとらえ方が変わったとしても、その中で何があったのかは覚えておきたい。

「ただ、過ぎただけ」の時間にはしたくない。

 

そんな早すぎる時間の中の思い出を呼び起こす役割のひとつに、私はテレビドラマがあると考えている。

「あのドラマがやっていた頃、こんなことあったな」というように、私の記憶の中でその時の思い出にドラマが紐づいていることが多い。
何もそれは歳を重ねてからに限ったことではなく、幼い頃からあの日観たドラマはその時の匂いや風景を思い出させてくれる。

この歳になった今はより一層、置いていかれそうな時間の中での風景を記録してくれる役割として、テレビドラマの存在は私の中で大きくなっている。
そもそもテレビドラマ自体が世相を反映した内容のものが多いため、その時の記憶とドラマが強く結びつくのかもしれない。

2025年4月期クールのドラマも気づけば最終回を迎えたものが多い。
最後まで、最近始まったばかりだよな。という感覚が拭えなかった……。
新年度も重なったこの時期、勿論ドラマを観る暇がない方もいたと思うが、一方で、忙しい新生活の中でドラマに励まされた方も多いのではないか。

今回は4月期クールのドラマの中でも特に印象深かった2作品の感想を述べていく。

幻冬舎plusの中で連載していた「キャスター」「恋は闇」の2作品についての感想は、そちらの記事をご覧いただきたい。

まずはこちら。
フジテレビ系列「続・続・最後から2番目の恋」(月曜 夜9時)

2012年に第1期の放送が始まった本シリーズも、前作から11年の時を経て第3期目。

私は過去の2作品(加えて単発ドラマ1本)を未視聴だったが、予備知識がなくても楽しめた。それどころか今期で個人的に一番好きな作品だ。

鎌倉を舞台にテレビ局プロデューサー(小泉今日子)と鎌倉市役所で働く公務員(中井貴一)の恋と、その周りの家族達の日常に寄り添った本作。

特別派手なことが起きるわけではないが、それが良い
仲間と飲み屋で悩みを語らったり、様々な家族の問題と向き合ったり、そんな私たちが生きている日常がそこにある。
苦悩しながらも前に進む彼らの姿が、私たちが生きる日常のささやかな幸せに気づかせてくれたように思えた。

最終話では赤いちゃんちゃんこを可憐に着こなした吉野千秋(小泉今日子)がお馴染みの面々に還暦をお祝いされていた。
このドラマの特徴は劇中の年齢設定が実際の俳優の年齢と同じというところ。
(※小泉氏はまだ還暦を迎えてはいないが、最後のシーンはその9ヶ月後を描いたため。)

あんなに明るくて元気な若々しい還暦の姿を見せられたら、月並みではあるが歳を重ねることも悪くないなと思わざるを得なかった。
還暦ってまだまだ通過点なんだなと感じさせる吉野千明もとい、小泉今日子。
このドラマの登場人物達のように心身ともに美しく歳を重ねていきたいし、“今”を楽しめる人でありたい。

「世の中を嘆き、過去を美化するのはやめよう。正しく素敵な方向に向かっていることもたくさんあるはずだ」

最終回の終盤、吉野千明のナレーションで紡がれたこの言葉。
私はこの言葉を聞いた瞬間、涙が溢れた。

前向きになれるニュースが少ない昨今。様々な社会の問題に対して見て見ぬ振りはやめていきたいけども、すでに見えている素敵なものまで見ないでいたなとハッとさせられた。息苦しい今を生きる全ての人へのお守りみたいなこの言葉を胸に、これからも生きていきたい。

続いてはTBS系列「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(火曜 夜10時)

境遇の違う様々な主婦(主夫)たちが、主演の多部未華子演じる専業主婦との出会いを機に変わっていく、家事をテーマにした新しいお仕事ドラマ。

第1話から世間の主婦達の共感を呼び、江口のりこ演じる母親の子供に対する怒りの演技がかなりリアルだと話題になった。

共働き、シングルマザー、認知症、毒親など、それぞれの家庭の事情に詩穂(多部未華子)が向き合っていくのだが、詩穂のキャッチーさによりそこまで重くならず、でも心には響く……そんなドラマ全体の作りが素晴らしかった。

恋愛ドラマのヒット作を生み続けているTBSの“火10”ブランドだが、今作のように家族を描いた作品も増え、その側面での“火10色”も色濃く出てきたなと実感した。

その中でも最終回のディーン・フジオカ演じる育休中の主夫が、自身を虐待していた母親と対峙するシーンが私は特に印象的だった。
これまでの古い作品であれば、この2人は和解して親子として再スタートを切る……といった流れだっただろう。

しかしこのドラマで、中谷達也(ディーン・フジオカ)は、“母さんに会いたいと思える時が来たら僕から連絡する”という言葉で母親との距離を取った。

中谷自身も親になり、多少なりとも当時の母親の気持ちを理解した。
理解したからこそ、より許すことが出来ない上でのこの選択なのだろう。
これ以上嫌いにならないために。親子であり続けるために。
母親でいられる最後のチャンスを、中谷は与えたのかもしれない。

親子という切っても切れない縁は尊いものではあるが、置かれた境遇によってはそれ故に悩まされてしまうこともある。

決して御涙頂戴で解決させなかったこの中谷と母親との着地点は、同じような境遇の人々の心を少し軽くしたのではないだろうか。

日常にある小さな幸せ系ドラマがトレンド?

以上2作品が、私の中で今期特に満足した作品だった。

どちらの作品も、日常の中にある小さな幸せを改めて感じられる部分が大きかったように思える。
今回は紹介できなかったが「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ)や「しあわせは食べて寝て待て」(NHK)などもその節が強かったように思える。

冒頭も述べたように、(年齢のせいもあるだろうがそれに限らず)時間の流れの早さがより感じられる昨今。
そんな中でつい見落としてしまう小さな幸せの数々。
いや、それらを“小さな幸せ”と呼称するのも失礼なくらい、日常の幸せは大きかったのかもしれない。

そう思うくらいに、これらのドラマを見てからの日常は輝いてみえる。正確には“輝いていたのに見落としていた”のだ。

日々テレビのニュースではネカティブなニュースを流し続けているが、その帳尻を合わせるかのようにポジティブなドラマ作品を流し続ける放送各局。
世界はそう明るく平和にはならないけどそうやってテレビドラマで前を向こうとしてくれている姿勢……好き。

そんな多幸感に包まれて2025年春期ドラマは大満足に観終えた。

さあ夏期ドラマはどんな作品で私たちに多幸感を与えてくれるのか。
“嘘だろ?”と思えるくらい神作品に出会えることを願って。

著者:ケメ・ロジェ
ドラマイラスト:サク

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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!

今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?

物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。

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6969b~ろくろっ首~ ドラマ考察系 YouTuber

登録者10万人超えのドラマ考察系YouTuber。

大人気を博した考察ドラマ「あなたの番です」では公式本に考察集団"として掲載され、担当プロデューサーとコラボした経験もあり。

『僕らとエンタメを全力で楽しもう』をモットーに、落ち着くお茶の間のようなチャンネルを目指して活動中です!

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